
上諏訪芸妓「美代遥」こと前橋亜季さん
かつては多くの芸妓衆が温泉街を盛り上げた長野県・上諏訪。伝統は一度途絶えましたが、2024年、地元出身の大学生が芸妓デビューを果たしました。憧れの芸妓と大学生の二刀流。諏訪を盛り上げようと全力を尽くす女性を取材しました。
■地域唯一の芸妓 1年前にデビュー

4月26日、「お座敷遊び」を体験できる食事会で踊る上諏訪芸妓・美代遥さん(左)
♪「奴さん」:
「あ~、こりゃこりゃ~」
明るい三味線の音色に、しなやかな踊り。4月、諏訪市の料理店で開かれた、「お座敷遊び」を体験できる食事会です。
華やかな姿で客を引きつけるのは、上諏訪芸妓の美代遥(みよはる)さん。地域唯一の芸妓として1年前にデビューしました。
踊りだけではなく、場を盛り上げるゲームも。
上諏訪芸妓 美代遥さん:
「私はどっちかというと二枚目より三枚目でいこうと思って。おもしろがって、たくさん笑って帰っていただけたらうれしいなと思いながら、いつもどれだけ笑わせるか」
客:
「若くてかわいらしいんですけど、すごく大人で、本当にいい経験ができました」
「こういう日本の文化を引き継いでいく人が出てきているのは素晴らしいと思います」
■芸妓と大学生の二刀流

前橋さんは、文学部哲学専攻4年の現役大学生
5月8日、東京・八王子市の中央大学。
美代遥こと前橋亜季さん(21)。実は文学部哲学専攻4年の現役大学生です。
上諏訪芸妓「美代遥」こと前橋亜季さん:
「大学に来て、こうやって好きなことをやりながら夢をかなえられてる。自分のやりたいことにノーって言いたくない」
芸妓も大学生も全力で。二刀流の道にたどり着くまでには、さまざまな挫折や決断を経験しました。
■精神的に行き詰った時期も

高校進学後も三味線や長唄の稽古を続ける前橋さん(提供画像)
諏訪市出身の前橋さんは、中学生の頃に日本舞踊を習い始めました。大奥が舞台のドラマで着物の華やかさに魅せられ、舞妓や芸妓を志すようになったのです。
前橋亜季さん:
「(若い時から)こんな厳しい世界に入ってかっこいいな、私もやりたい、というところからスタートだったんですけど」
両親を説得し、修業のため中学卒業前に京都の芸者置き屋に入りますが―。
前橋亜季さん:
「仕事は楽しいし、苦じゃなかったんですけど、ふとした時にほろって涙が出てきちゃう」
精神的に行き詰まり、修業を断念して実家に戻ることに。高校進学後も三味線や長唄の稽古を続け、卒業後には再び京都に戻るつもりでした。