
染織作家・窪田孟恒さん(82)
特集は染織、染めもの・織もの世界。素朴な色合いの織物、アンズで染めた「あんず染め」の作品。手掛けているのは千曲市の82歳になる男性作家だ。アンズに救われたと話す半生と作品の魅力をお伝えする。
■一色一色、全部違う

あんず染めの着物
オレンジに近い暖かみのある色あいの着物に、ハンドバッグ。おしゃれなショールもある。いずれもアンズで染めた「あんず染め」の作品だ。
染織作家・窪田孟恒さん(82):
「一色一色、全部違うんだよ。染めるたびにちょっと違ってきちゃう」
手掛けたのは千曲市の染織作家・窪田孟恒さん82歳。現在、麻績村で作品展が開かれ、100点以上が展示・販売されている。

染織作家・窪田孟恒さん
機織りの音が響く窪田さんの工房。
機織り機は、明治31(1898)年製という年季の入ったものもある。いかにも「アンズの里」らしい窪田さんの「あんず染め」。糸を染めるところから窪田さんが1人で行っている。

アンズの木を煮て染液を作る
まず近くの農家から譲ってもらったアンズの廃材を細かく割ったものを釜で煮る。

きれいな琥珀色に
3時間ほど煮詰めると、きれいな琥珀色に。
濾(こ)してから生糸を漬けると、みるみる鮮やかなオレンジ色に染まる。

天日干し
この作業を数日、繰り返し、糸を補強するのり付けをして、天日干しすれば染色は終わり。
■35歳のときに、念願の工房を開く

三彩社 織田秀雄 著
染めた糸でさまざまな作品を織る窪田さん。これにたどり着くまでは苦労の連続だったという。
窪田さんは1941年、千曲市屋代で生まれた。幼いころから絵が好きで、高校卒業後、美術の専門学校でグラフィックデザインを学んで広告代理店に就職。デザイナーとなった。
仕事も板についてきた26歳のとき、人生を変える本と出会う。織物作家で研究家の織田秀雄さんが記した「絵絣(えがすり)」という本だ。
染織作家・窪田孟恒さん(82):
「『絵なんとか』っていうのが目に入った。それが『絵絣』という、下にあったのが絣(かすり)という字だったんだけど、それが読めなかったです、恥ずかしいけど。どんな絵なんだろうと見たら、今まで感じたことがない美しさで、こういうのを利用して自分の絵みたいなものができないかなと思っちゃったんです」