■店は順調も突然倒れ、64歳で急逝

伊丹由貴夫さん
ケーキや和菓子など、由貴夫さんが作る菓子は茅野市でもすぐに人気に。連日多くの客が訪れるようになりました。
伊丹由貴夫さん(2011年):
「天壇というクッキーを作っています。信州産のみそと、八ヶ岳産のそばの実を使っていまして」
信州の食材を使った菓子も次々と考案。
移転から14年、店は順調でしたが2025年2月、由貴夫さんが64歳で急逝。2025年2月、由貴夫さんが突然倒れ、1週間後に亡くなりました。
妻・香代さん:
「倒れる前日も『自分の作るお菓子で喜んでもらえることはすごく幸せだ』と笑顔で言っていたんですね。突然のことだったので受け入れざるを得ないというか」
多くの商品は由貴夫さんが作っていたため店は3月から休業を余儀なくされました。
■父の背中を見て育った長男

息子・利徳さん
6月4日―。
伊丹利徳さん:
「『戻って来て一緒にやろうね』と話していたんですけど、それがかなわなかったので」
休業中の信州大黒屋で菓子作りをしているのは、由貴夫さんの長男・利徳さん(28)。店を引き継ぎました。
由貴夫さんの背中を見て育った利徳さん。菓子職人を目指し、京都の専門学校へ進学。名古屋市の洋菓子店などで8年ほど修業を積みました。もともと、2025年4月から店に入り、由貴夫さんと一緒に働く予定でした。
息子・利徳さん:
「すごく悲しかったし、同時に、いなくなってこれからどうするんだろうという不安も同時にすごくあって、いろいろな感情が」
■夢で父親が「好きなようにやれ」

父・由貴夫さんと息子・利徳さん
多くの人から愛されてきた父親の菓子。一緒に働くことなく亡くなり、「同じ味が出せるのか」と一時は店を継ぐことを悩みました。そんな時、ある夢を見ました。
息子・利徳さん:
「父とここで働いている夢を見て、『お菓子を教えてくれ』と言ったら『違うんだ。お前の好きなようにやればいいんだ』と、好きなものを作ればいいんだよということを言われて起きたんですけど。それを見て、すごく楽になったというか、『自分の好きなことをしていいんだよ』と言われているような気がして、それで(店を継ぐことを)決断しましたね」