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「このままでは諏訪湖は死んでしまう」から奇跡の復活!世界が注目する環境再生の成功例へ 35年の軌跡

 

1994年、全国初の試みとなる人工渚の工事が始まりました。コンクリートの護岸の内側に土を入れ、遠浅の岸辺を作り、そこにヨシやマコモを植えていく。治水機能を保ちながら自然を取り戻すという、画期的な取り組みでした。

 

工事が始まって1年後、植えられたヨシは見事に根付いて、新しいヨシ原が誕生。観光客の多い場所では、緩やかに玉砂利を敷き詰めた「ふれあいなぎさ」が作られ、人々が湖に近づきやすい環境も作られました。

奇跡の復活…市民の力が湖を変えた

 

下水道整備と水辺の再自然化。この二つの取り組みが功を奏し始めると、諏訪湖は驚くべき速さで回復していきました。アオコの発生は激減し、水質は著しく改善。一時は姿を消していた水鳥たちも見られるようになりました。2000年からは「水泳大会」も開催され、ついに「泳げる諏訪湖」が実現したのです。

「諦めなければ、必ず道は開ける」藤原さんはその成果を見ることなく、1996年に他界しました。しかし、彼の精神は確実に受け継がれています。2007年に設立された「諏訪湖クラブ」は、市民の手による環境保全活動を続けています。

市民に諏訪湖への関心を保ち続けてもらおうと、諏訪湖の成り立ちや水生植物の変遷、諏訪湖の漁業、流域下水道を解説など、9冊、49000部に上る冊子を作成し、地域の人たちに届けています。民間の立場から更なる浄化をめざす実験なども行いました。会長を務めるのは、信州大学を退官した沖野外輝夫名誉教授。「諏訪湖の問題は地域の問題。だからこそ、地域全体で取り組まなければならない」と語ります。

新たな挑戦…次世代へのバトン

 

しかし、諏訪湖の課題は終わっていません。水草「ヒシ」の大量繁茂は、船の航行を妨げ、景観の悪化も懸念されています。2016年に起きたワカサギの大量死は、湖水の貧酸素化という新たな問題を浮き彫りにしました。さらに2020年には、湖底からマイクロプラスチックが検出され、環境への影響が心配されています。

 

2024年に開設された「長野県諏訪湖環境研究センター」では、これらの課題に科学的にアプローチしています。最新の分析機器を駆使した水質調査を行う一方、これまではやや不十分だったと言われる湖の生態系の保全・回復にも力を入れています。

センター長の高村典子さんは、諏訪湖の価値をこう語ります。 「諏訪湖の浄化は、世界的に見ても貴重な成功例。科学的な見地からも、浄化に取り組んだ市民の活動の見地からも、諏訪湖の回復過程を記録にとどめ、世界に向けて発信していくべき」と語ります。

そして、諏訪湖に対して強い思いを持つ岡谷市の環境課職員、小口智徳さんは、その経験を次世代に伝えることに力を注いでいます。「岡谷こどもエコクラブ」の活動を通じて、子どもたちに環境保護の大切さを伝えています。観察会では、子どもたちが自分たちで水質を調べたり、生き物を観察したりします。

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