消えるはかなさも、またよし
NBSアナウンサーが、
毎週木曜日に産経新聞紙上にリレーで執筆しているコラム
「VOICE」
今回は懐かしい記憶を掘り起こしてみました。
ぜひご一読ください!
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「男の趣味はいろいろあるが、
形に残るものより消えるものに大金を投じる方が上質である」
最近読んだ本で出会った言葉です。
消えるもの...
録画機やインターネットの登場でテレビ番組は形に残るものになりましたが、
昔は放送した端から消えていくものでした。
小学校低学年の頃、
授業で育てたもち米で餅を搗き、
搗きたてを味わう行事がありました。
あるテレビ局が取材に来ていて、その様子が夕方のニュースで放映されました。
見ていた家族が沸き立った瞬間がありました。
編集された映像に、
口いっぱいに餅を頬張る私の顔がアップで映し出されたのです。
ずいぶん長く感じられたのは身びいきというもので、
おそらく5秒程度のことだったでしょう。
それでも両親はこんなことなら祖父母にも知らせておくのだったと
悔やむほどでした。
わずか数秒のことですが、
40年近く前の出来事をありありと思い出せるのなら、
消えゆくものの儚さも悪くないと思う秋の夜長です。