利之、京都へ行く。最終話。
「鴨、京都へ行く」連動企画「利之、京都へ行く。」
隠し切れない嬉しさを
それでも何とか押し殺そうとする表情で上羽鴨は言った。
「採用。」
衣川周平、
まさかの"上羽や"再就職で幕を閉じることになった
「鴨、京都へ行く。」
鴨は女将としてこれからも京都に残ることになったのだが、
僕は1995年3月をもって京都を去ることになった。
京都での学生最後の年は
エポックメイキングな一年であった。
この年のビッグイベントが、
ミスタージャイアンツ長嶋茂雄が国民的行事と名付けた
"10・8決戦"である。
勝ち負け引き分けのいずれもが
同じ数字で並んだ巨人と中日。
勝った方がペナントを制する世紀の大一番。
朝からソワソワして落ち着かない気持ちを静めようと
鴨川べりで時間をつぶしたり、
テレビの様々な情報に接したりしながら
試合開始の時を待った。
結果はみなさんのご存知の通り。
そしてもう一つ。
あの決戦から数日後、
僕は京都を離れ長野で働くことが決まった。
試験課題の一つフリートークで、
10・8決戦に絡めた話をカメラに向かって熱っぽく話したことが
昨日のことのように思い出される。
あの試合が僕の人生を決めたのかもしれないとも思う。
光陰矢のごとし。
月日は流れあれから20年が経とうとしている。
完