利之、京都へ行く。第八話
火曜よる9時放送中のドラマ「鴨、京都へ行く。」
コラボレーション企画「利之、京都へ行く。」
僕の京都での移動手段はもっぱら原動機付き自転車。
雨の日も風の日も、
うだるような暑い夏もしびれるような寒い冬も、
学校に行くのもアルバイトに行くのもいつも一緒だった。
乗っていたのは世界のホンダが作った「Dio」。
時はF1ブーム。
鈴鹿サーキットで行われる日本グランプリのチケットを
友人が手に入れた。
観戦席はヘアピンカーブの入り口。
直線をトップスピードでやってきたマシンが
ヘアピンの手前で一気に減速。
カーブを曲がり切るとそこから3度のギアチェンジ。
再びトップスピードに乗ったマシンが走り去る姿を
見ることが出来た。
レースの主人公は、
マクラーレンホンダの"アイルトン セナ"
世界一の男の凄みを感じたのは音。
ギアチェンジをする時には甲高い音がサーキットに響いた。
並みのドライバーは「パーン」
セナの音は「パン」
「-」の時間は一秒にも満たないが、
そこで生まれる差は神と人間ほどの違いをもたらした。
"音速の貴公子"は偽りのないものだった。
生きていた世界は違えども、
セナが愛したエンジンは、
僕の学生時代を支えてくれてもいたのである。