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「誇りがある」国宝・松本城のてっぺんで漆の塗り替え作業 祖父が戦友との縁で「昭和の大修理」に関わり10年間、無償奉仕 親子3代が70年守り続ける「漆黒」の美 長野・松本市

■初代は10年間、無償奉仕

碇屋漆器店 初代・碇屋儀一さん 

大修理は1955年に終わりましたが、儀一さんはその後も毎年、漆を塗り替え続けました。

作業は1966年以降、松本市が費用を出していますが、それまでの10年は儀一さんが無償で手入れを続けました。

1992年、儀一さんは叙勲を受章。

碇屋漆器店 初代・碇屋儀一さん(1992年取材):
「長く、私はこの松本城を見守っていきたいと。国宝を任せられることに胸がいっぱいだったが、やってみてこれは大変なことだと。しかしこれは私に課せられた任務と誠心誠意やってきた」

■父から子へ『3つの教え』

作業のほとんどは危険な場所  

その父からバトンを受け継いだ公章さん。今、次の代に渡そうとしています。

碇屋漆器店 2代目・碇屋公章さん:
「親父から聞いてちゃんとやっているのは『材料を変えない、工法を変えない、道具を変えない』。この3つを守ってずっとやり続ければ、文化財である城は守っていける、3つを守りなさいと」


■地上30m、危険な場所で塗り替え作業

天守の最上階で作業 

作業のほとんどは危険な場所で行います。命綱とヘルメットが欠かせません。この日も天守の最上階で作業が行われました。瓦屋根の上を歩きながらの作業。天守の最も高い所は地上約30メートル。約10階建てのビルに相当します。

国産の漆と鉄を特別な配合で混ぜた黒漆。1年の間についた汚れや劣化した古い漆は水で洗い流し、新しい漆を塗っていきます。つややかな黒がよみがえります。

漆は、温度や湿度が大きく影響するため、雨や風が強い日は作業ができません。長雨に見舞われるこの秋。例年以上に気をもむ日が続いています。

碇屋漆器店 2代目・碇屋公章さん:
「思い通りにいかないのは天気だけ。天候を見ながらやる仕事なので、あんまり雨が降っちゃうとできないし、かといって雨がないと困るし。難しいところはむらがないようにすること、大きいハケと小さいハケで塗って。同じことを根気よく丁寧にできるか、それだけ」

■技術だけではない思いの継承

父親の公章さんと息子の公一さん

父から子につぐのは技術だけではありません。

碇屋漆器店 2代目・碇屋公章さん:
「朝起きて寝るまで、毎日1回は必ずお城はどうかなって考える。時々、顔を出していろいろと見る。(城は)生活の一部みたいな。一緒にやっているとだんだん(父の)そういう気持ちが分かってきて」

忘れられない出来事が―。

2024年の秋、台風の接近で強い雨が降り続いた翌朝のことでした。

碇屋漆器店 2代目・碇屋公章さん:
「(空が)明るくなった頃(城に)来たら、息子が来ていた。(自分の思いが)伝わったかなって感じは受けた」

公一さん。当時のことはよく覚えていないと、言葉少なですが―。

碇屋漆器店 3代目・碇屋公一さん:
「城に対する思いというか姿勢、父の仕事を見て覚えた感じ。松本城の良さは人それぞれ違うと思うが、いつ見ても同じ状態を保つよう心がけています」

光さえも飲み込むという日本特有の美「漆黒」。城への思いと誇りを胸に、その輝きを守り続けます。

塗り替え作業は約50日かけ、10月末に終わる予定です。

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