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ソムリエから転身 東京から移住の44歳男性が2年目のワイン造り「楽しそうな姿を子どもたちに見せたい」空き家増える中山間地 台風災害であふれた土で土壌改良も 長野

ワインブドウ

宋裕光さん:
「1粒2粒(傷みが)あるものだけここに落としていただいて..」

輝きのあるきれいな粒だけを残してカゴに入れていきます。粒の表面には「天然の酵母」があり、それを落とさないよう丁寧に扱います。

宋裕光さん:
「味見もなさってください」

住民:
「想像以上に甘いわ」

ワインブドウの収穫時期は9月~11月。宋さんは収穫をギリギリまで遅くし糖度を上げました。

2024年はぶどうの不作年。この畑も病害で収穫が激減したこともあり、今年は、一房一房に袋をかけて守りました。

宋裕光さん:
「今年のブドウは本当によくて病気も入らず、糖度もしっかり上がって。軽やかなカジュアルなワインというより、芳醇でふくよか、余韻のあるワインに。収穫手伝ってくれた皆さんの顔を思い浮かべながらしっかり仕上げたい」

赤ワイン用の実

収穫から1週間後、醸造所では家族がそろって作業です。この日は、赤ワイン用の実を漬け込む前に茎から外しました。

宋裕光さん:
「普通は機械でやるんですけど、まだ機械持ってないんで手作業で。なかなか大変な作業です」

実ったワインブドウ

ワインができるまで、順調なことばかりではありません。2019年には植えた木が土にうまく根付かず、2万本を全て抜く事態も起こりました。当時、土壌改良に使ったのはその年、台風災害であふれた土です。行き場がなくなった土を畑に受け入れ、木を植え戻しました。

宋裕光さん:
「一番きつかった時は朝、畑に行くのが嫌で。(自分が)未熟な上に畑も広くて、さらに難しいことをやろうとしていたので。朝から晩まで作業しても追いつかない。(夜は)車のライト点灯して作業したり」

紆余曲折を経た畑では今年、災害土に根がはり、質のいいブドウがたくさん実りました。

家族で作業

この数年間は自宅に戻るのも遅くなっていましたが、ようやく家族で食卓を囲めるようになったそうです。9歳と6歳の子どもたちも畑や醸造所で手伝いに動きます。

妻・千絵さん:
「きのうもね、今のうち(子どもたちを)抱っこしとかないとねって夫婦で話した」

宋裕光さん:
「やっと仕事が落ち着いたと思った頃には」

妻・千絵さん:
「抱っこさせてもらえなくなっちゃう」

家族の時間を増やすため、作業をもっと効率化し、早く生産を軌道に乗せたいと奮闘します。

さらに―。

宋裕光さん:
「(地域で)農業の衰退がすさまじいんですよ。若い農家ほとんどいないし、おいしいリンゴが実るのに、次の世代は継がず毎年リンゴの木が切られて..」

思い描くのは地域の未来。ここを、子どもたちが誇りに思える場所にしたいと思っています。

宋裕光さん:
「(親が)楽しそうにしている後ろ姿を(子どもに)見せたいんですよね。『もしかしたらいい仕事なのかな』って、興味を持ってもらえる後ろ姿を見せたい。自分の子どもにもそうだし、地域の子どもたちにも」

住民が協力して収穫した後に記念撮影

2年目を迎えたワイン造り。今年は白や赤、ロゼなど3000本の生産を予定しています。

浅川葡萄農園・宋裕光さん:
「僕の醸造は、ブドウに付いている“野生の酵母”しか使わない。味に複雑味が出るんです。雑菌だったり色んな酵母が戦いながら入れ替わりながらワインになっていく中で、(味が)複雑になって僕は好き」。

浅川葡萄農園・宋裕光さん:
「浅川からおいしいワインを世に流通させて、若い人たちが移住してくるくらい活気づけたいと思っています」。

地域に支えられ、地域を元気に。ブドウの木が、浅川の土にしっかり根付き始めました。

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