
「六代御前」役(左)と「道柴」役
そして迎えた公演当日。納得いくまで練習を重ねることができたようです。
「道柴」役:
「これだけ練習すれば、大丈夫だろうっていう自信を持って頑張りたい」
「景清」役:
「練習通りにやればうまくいくと思うので、いつも通りを出せたら。(演出の)雪を敷く必要がないくらいのおひねりを期待したい」
着付けと化粧を終えいよいよ本番へ。
「景清」役:
「間違えても気にしない!頑張ります!」
ついに幕が開きました。
「六千両後日文章 重忠館之段」は、村内だけに伝わる特別な演目。重要文化財に指定されたゆえんでもあります。
大鹿歌舞伎愛好会 指導者・北村尚幸さん:
「江戸時代から脈々と地域の中で伝え残されてきた一つの証し。『六千両…』の芝居がその象徴」
源氏の武将・重忠と平家から嫁いだ「道柴」は、平清盛のひ孫「六代御前」の助命を願います。
複雑な立場の道柴―。
「道柴」役:
「それでこそ天晴 平家の御公達 世のことわざに浮き沈み七度と申すが 必ず忘れたもうなよ」(それでこそ立派な平家のご子息です。世のことわざに「浮き沈みは七度」と申しますが、この言葉、決してお忘れになってはなりません)
「道柴」役(終演後):
「自分じゃなくて道柴で、一番きょうがいられたなって思いました」

「重忠」役と「景清」役(手前)
続いて修験者に扮した平家の落ち武者・「景清」が登場。正体を隠して泊めてもらった重忠の屋敷で、酒を出されますが―。
「景清」役:
「貴方には異風をお好みと承りましたが コリャ何様のどくろでござりまするな」(どなたのどくろでございましょう)
「重忠」役:
「それこそは清盛がどくろ」
「景清」役:
「なななんと!」

「重忠」役と「景高」役(手前)
今度は「笑わせ役」の景高が屋敷へ。重忠に六代御前の首を切らせようという策略がばれてしまい―。
「景高」役:
「おのれを切るわい」
コテンパンにやられ笑いをとりますが、ここからが本当の見せ場。
着替えて再び登場する「景清」の支度が整うまで、一人で場をつなぎます。
刀をさやに戻せず、ジタバタ。観客からは声援と笑いが―。
「景高」役(終演後):
「うれしいですね。人が笑ってるのを見るの大好きなので、この役、適任でした」