
秋山郷、唯一の給油所(1月8日、長野県栄村)
特集は豪雪地のガソリンスタンドです。「秘境」とも呼ばれる長野県栄村の秋山郷。村の中心部から離れていて、この時期は深い雪に覆われます。ガソリン価格が高騰する中、「秘境」の暮らしを支える給油所に密着しました。
■地域唯一 住民「なくなったら困る」

秘境・秋山郷
雪道の先にガソリンスタンドが見えてきました。ここは新潟県境の栄村・秋山郷。新潟・津南町へ出ないと辿り着けず、「秘境」と呼ばれてきました。「秋山SS」は地域唯一の給油所です。

給油するスタッフの砂川界さん(左)と住民の男性
この日は大雪。雪かきをするスタッフの砂川界さん(32)。山梨県出身で、3年前、地域おこし協力隊として秋山に移り住みました。
秋山SS スタッフ・砂川界さん:
「天気予報見て降りそうだったらちょっと早めに起きて(雪かきを)やるんですけど、きょうは積もりましたね」
午前9時、1台、入ってきました。
住民の男性:
「(燃料が)3分の1くらいしかないから役場まで行けない」
男性は住民を歯科診療所まで送迎する業務を村から委託されています。
住民の男性:
「これから役場のところまで、歯医者があるんですけど、予約のお客さんを送っていくんです。(給油所は)なくなったら困ります、農作業にも影響する、除雪ができない」
■厳しい経営 隣の新潟・津南町で給油する人も多く

福原和人社長
住民の暮らしを支える「秋山SS」。できたのは1980年代です。
秋山SS・福原和人社長:
「以前は冬になれば、まさしく交通も遮断されるような僻地だったんで。ドラム缶から直接燃料をポンプアップして入れてた時代だから、それに比べたらここに来れば立派な計量機から入れてもらうってことは、すごく画期的なことだった」
待望の給油所でしたが、経営は徐々に厳しさを増していきました。

津南町のスタンドより8円高い「秋山SS」(1月8日時点)
秋山の住民は現在、158人。30年前の4割程度です。人口減少だけでなく、近年はガソリン価格の高騰で安い隣の津南町で給油する人も多く利用者が減っていきました。
1月8日時点でも「秋山SS」がレギュラーガソリン1リットル186円だったのに対し、津南の給油所は178円と、8円の差があります。
経営難から3年前、前の業者が撤退を決定。地元で旅館や山小屋を営んでいる福原社長が引き継ぎました。
福原和人社長:
「町場から30km奥に入ったところで、いざ燃料補給、特に灯油なんかは利用者の所に届けられなくなるというのは、ここに住んでいて一番困るんだよね。なんとか地域のために存続してくれという声もある中で、かなり悩んだ。最終的に地域のために頑張ろうかということで」