天才たちの優しいまなざし
NBSアナウンサーが
産経新聞紙上にリレーで寄稿している
コラム「VOICE」
今回は"小説"と"映画"を題材に寄稿しました。
ご一読ください!
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「推し、燃ゆ」と「すばらしき世界」。
前者は今の時代をたった4文字で表現した宇佐美りんさんの芥川賞受賞作。
面映くなるようなストレートなタイトルがつけられた後者は西川美和監督の最新映画です。
二人の天才はまるで違う境遇にある主人公を動かしてストーリーを展開しますが、
どちらも現代社会に横たわる陰を同じように見つめていると感じました。
ではそんな世界に絶望するかというと、
人間なかなかしぶといもので、
ままならない現実の中にささやかな生きる希望を見つけ、
それに絡め取られて身動きできなくなる不自由を感じ、
またそこから自由になろうとする。
人間という生き物の愛おしさを二つの作品は炙り出しています。
「押しが燃えた」ことをきっかけに自分の人生を生き直そうとする「推し、燃ゆ」。
長い牢獄生活を終え、空が広い娑婆に出てから、
この世の不条理と愛がないまぜになった世界を知る「すばらしき世界」。
紡がれた小さな希望に穏やかな心持になりました。