■劇団が体現する「草レース」の精神

劇団ささがわの記念写真集
大会の魅力は、競技の質だけにあるのではない。ペンション「めぞん・ど・ささがわ」の主、笹川陽子さんが率いる「劇団ささがわ」というチームの存在が、草レースの本質を体現している。
陽子さんは家族や友人、宿泊客とチームを組んで大会に出場し続けている。2026年は4年前に亡くなった父・正通さんとの思い出も胸に、長男の拓也さんと共に出場した。さらにオーストラリアから長期滞在している宿泊客・松尾美穂さんも初エントリーした。
チーム名の由来について、陽子さんはこう語る。
「人生は舞台というのが根底にありまして、人はなりたいものになれるんだというところが肝で。なおかつこの白銀のステージで演じきるというところから始まりました」
大会終了後には「めぞん・ど・ささがわ」で独自の表彰式も開かれ、初出場の美穂さんが最優秀主演女優賞に選ばれた。「とっても気持ちよかったです。楽しかった」と語る美穂さんの笑顔と、「来年また来ます、八方最高です」という言葉が、草レースの醍醐味を示していた。
■第80回大会 553人が挑んだ斜面

出場した選手
2026年2月、第80回大会は2日間にわたって開催された。
大会前日は雨となり、大会を主管する八方尾根スキースクールのメンバーが悪天候の中でコース作りに取り組んだ。暖冬による雪不足のため、名木山ゲレンデが使えず、ゴール地点は上部に変更された。雪面を固くするために撒かれた硫安、通称スノーセメントによって、安定したバーンが維持された。
大会は年代別に男子7部、女子3部に分かれ、年齢・性別を問わないオープンクラスも用意されている。エントリーは延べ553人。初日の競技に出場したのは約350人で、それぞれが力を尽くして長大な斜面に立ち向かった。
男子7部(80歳以上)で84歳の手塚昌信さんが2分33秒44で完走を果たし、男子2部では2連覇の後に2025年優勝を逃していた鬼澤行正さんが1分13秒42のこの日最速タイムで王座を奪還した。
また白馬高校スキー部出身の23歳・柴田侑志さんがクラウチング姿勢鮮やかに1分16秒42で男子1部を制した。80回記念として、白馬村と姉妹提携するオーストリアのレッヒから4人の選手も招かれ、大会に花を添えた。

