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【戦後80年】薄れゆく原爆の悲劇を次世代へ 若手教師たちの命の授業「今日の聞き手は明日の語り手」 教科書を超える「生の声」を求めて被爆者・被爆2世13人から体験を聞き取り証言集を作成 #戦争の記憶

■消えゆく記憶との闘い

ヒバクシャの願いをつなぐプロジェクトが作成した冊子

中学校の教師だった今井さんの祖父は、爆心地のすぐ近くで生徒たちと勤労奉仕をしていて被害に合い、帰らぬ人となりました。祖父を捜して広島市内を歩き回った今井さんの母は、放射能の影響で一か月もたたないうちに原爆症を発症しました。

「髪の毛がごそっと抜けるんですよ。ばさっと。また、歯ぐきから血がどろんと出る」と今井さんは母の苦しみを語ります。

今井さんは、祖父の死を無駄にしてはいけないという思い、そして原爆症で苦しんだ母のために、自分の体験を語ることを決意。被爆者運動に参加し、被爆国であることを世界へ伝え、核廃絶を訴え続けてきました。しかし、戦後80年を迎え、今井さんはある不安を感じていました。

「あと10年もすればほとんどの人が語れない。そうすると、あったのかなかったのかわからなくなる。広島の悲劇、長崎の悲劇が。それを次の世代の人がちゃんと残そうという意思がとても嬉しい」

学校という「つなぐ場」の役割

被爆者の証言を聞く中学生

2025年6月、たくさんの人の思いが詰まった冊子が完成し、県内全ての小学校・中学校・高校・特別支援学校へと配られました。竹田さんは学校の役割の重要性を感じています。

「知ったことは一歩かもしれない。そこからどう動くか、何をするか、そのもう一歩ができる人たちを増やしていきたい。そこがもしかしたら学校の出番かもしれない。私たち教員だからできることかもしれないす」

冊子を手に取った今井さんは「広島長崎の私たちの記憶がだんだん薄れていき、なくなってしまう心配があったが、今こうやって記録として継承されて、とても安心です」と感謝の言葉を述べました。

授業を受けた中学生たちからは「できるかぎり、核をどんどん減らしていくことが、次の僕たちの世代の使命」「経験を知らない人にも、日本でこういうことがあったんだよって自分たちが伝えなきゃいけない」といった感想が寄せられました。

■若者たちが紡ぐ平和への願い

 

7月には「ヒバクシャの願いをつなぐプロジェクト」が、交流のある若者たちと合同イベント「信州の若者がつむぐ平和創造フォーラム」を開催。戦時中の写真をカラー化して記憶を伝えようとしている高校生や、沖縄の基地や貧困について考える大学生など、平和活動を行う若者たちが集まり、取り組みの報告や意見交換を行いました。

近藤教諭は「10年後の中学生高校生にとっても、あの日に起こったことを知ることはとても大事。記憶をきちんと次の世代に伝えて、その世代がどう考えるか。そのためにも記憶の継承は必要」と話します。

プロジェクトの思いは冊子の裏に込められています。

「今日の聞き手は明日の語り手」

戦後80年。被爆者の記憶を未来へつなぐ取り組みは、長野の地でこれからも続いていきます。

※本記事は、NBSフォーカス信州 2025年8月1日放送回
「戦後80年 記憶の灯火」をもとに構成しています。

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