■戦後80年 後遺症に今も苦しむ

中村梧郎さん
中村さんはこれまでに、講演会や写真展を通してベトナムやカンボジアでの戦争の爪痕を伝えてきました。
日本は今年、戦後80年。中村さんは、日本の戦後にも同じく「後遺症」の問題があると話します。
※1945年8月、アメリカ軍が広島と長崎に原子爆弾を投下。その年のうちに広島では約14万人、長崎では約7万人が亡くなる(広島市公式ウェブサイト、長崎市「ながさきの平和」より)
中村さん:
「広島や長崎に落とされたウランやプルトニウム爆弾の放射線障害は延々と続く。戦争そのものをまだ引きずっている。戦争が終わった後の姿ではなくて、今でも引きずっているという問題はいっぱいあると思う」
原爆で一命を取り留めても放射線による後遺症に今も苦しむ人がいます。
中村さん:
「広島や長崎で被爆した人も範囲も国が決めて内側だけは補償する、外側は一切補償しない」
■日米同盟の強化の動きに危機感

日米共同訓練(2023年、大分)
戦争の惨禍を経験したにもかかわらず進む、日本の防衛力や日米同盟の強化の動きに、危機感を感じています。
中村さん:
「(日本は)戦争を起こさないように精いっぱいの外交的努力をする。中国とアメリカが対立しているから日本も中国と対立するんだとばかな発想ではなくて、中国とアメリカが対立しているなら仲介役として日本が活躍すればいいわけで、軍備一辺倒でいこうというのは間違い。ますます危険な世界に入っちゃうな」
■「本物を報道すること」が大切

ベトナム戦争 (提供:米国立公文書館)
ライフワークの枯れ葉剤被害の発信を通して実感した「本物を報道すること」の大切さ。近年、それが伝わりにくくなっていると感じています。
中村さん:
「新聞もテレビも、死体は見せないようにしようとかね。戦争は、死体だらけですよ、どこもかしこ。兵隊も民衆もそれを見せないようにしようと。戦争はきれいなもの、美しいもの、憧れの的になっていきはしないかという危険を感じる」
■戦争の事実と向き合う機会を

報道写真家・中村梧郎さん
中村さんは、これからも戦争の悲惨さを伝え続けるとともに、若い世代の人たちには、戦争の事実と向き合う機会をつくってほしいと願っています。
報道写真家・中村梧郎さん:
「戦争についてどう考えるのか、あるいはどう対応するのか子どもたち同士で議論させる。子どもたちが自主的に考えること、意見が違ってもいいから自主的に考えることが大事。人間の体なんてヤワなんですよ。ちょっと1発、破片が当たるだけで死んじゃいますから。戦場に行く、兵隊になるということは、(危険に)身をさらすことなんだよということを若者に伝えなきゃいかんなと私は思っています」