
「松代駅舎」
大正時代に建てられた長野電鉄旧屋代線の「松代駅舎」が老朽化などを理由に解体されることになりました。長く地域で親しまれてきた駅舎で、一部住民は「残してほしい」と話しています。

「松代駅舎」
趣のある「洋風建築」の建物。長野市松代町にある長野電鉄旧屋代線「松代駅舎」です。屋代線が廃線となった2012年以降も地域のシンボルとして親しまれてきましたが、まもなくなくなってしまうかもしれません。
長野市民:
「個人的には、許されるものなら今の形で残しておいていただければと思う」
地元タクシー運転手:
「できれば残しておいてもらいたい、古いけど」
松代駅は長野電鉄の前身、河東鉄道の開業に合わせて1922年・大正11年に建設。長年、生活や産業を大きく支えてきました。
2012年3月31日、屋代線の最終日には多くの住民やファンが松代駅を訪れ別れを惜しみました。
廃線後、駅舎は市が譲り受けバスの待合所として利用。さらに、情報発信の拠点としても使われてきました。
2022年には築100周年を祝うイベントもー。
レトロな雰囲気を残す駅舎は地域住民が集う場所として愛されてきました。
しかし、耐震対策がされておらず老朽化も進行。地元関係者や市でつくる検討委員会は安全性や周辺整備の観点などから2021年に「駅舎撤去に異存なし」と結論を出しました。
そして、市は2025年度中に解体することを決めました。
長野市・荻原市長:
「これまで地元の皆さまと丁寧に対話を続けてきた結果として今、その方向で準備を進めたいと考えている」
市は解体した跡地に道路を設ける計画で、松代城跡周辺の利便性向上などにつなげたいとしていますが、現段階で事業化のめどは立っていません。
一部の住民は「解体」と「道路建設計画」に納得していません。

TOMOYA ARTSさんが松代の将来を描いたイメージ図
TOMOYA ARTSさん:
「町の一番大事な心臓部分をなくしてしまうような印象があって、それがすごく悲しい」
松代町在住の画家、TOMOYA ARTSさん(48)です。松代駅が好きだったTOMOYAさん。開業100周年に合わせて絵本・「駅舎は星を見る」を制作しました。
これまで駅舎の保全活動にも取り組んできたほか、有志らとともに周辺の清掃活動も行っています。街の活性化に生かしたいという思いがあるからです。
松代町在住・画家 TOMOYA ARTSさん:
「大事なものだから、まっさらにしちゃうんじゃなくて、今なりの残し方をみんなで探せないかな」
TOMOYAさんは松代の将来のイメージ図を描きました。一つは駅舎をリノベーションしてカフェにつくり替えた場合、そしてもう一つは解体されて道路になった場合です。
TOMOYA ARTSさん:
「(解体されて道路になったら)描いててすごく味気ない街になるなって感じた」
TOMOYAさんは市が「住民の意見を聞いて解体を決めた」としていることにも納得していません。今後、2つのイメージ図をもとに改めて、住民が考える機会をつくり市にも働きかけたいとしています。
TOMOYA ARTSさん:
「本当に道が必要なのかとか感情だけじゃなくて、実際にどうなのかというのを町の人にも発信したいし、みんなで見て考える機会をつくりたい」
こうした意見に荻原長野市長は―
荻原市長:
「地元の皆さまと十分な話し合い、合意形成はできたと考えている。思いは受け止めつつも、地元の皆さまとどんな形でこの事業を進めていくのか対話を重ねていきたい」
地域のシンボルの解体。惜しむ声はもちろん反対の声もあり、改めて丁寧な説明が求められます。