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「自分には向いてない」と悩み…週刊新潮の表紙絵を描いて28年 成瀬政博さん(78)「描き続けることが次の作品を生み出す」 生涯現役が目標「今、一番幸せ」

■41歳で松川村へ移住

北アルプスの眺望(安曇野市)

そして、41歳の時。友人に紹介された信州・安曇野の北アルプスの眺望に魅了され、成瀬さんは家族と共に松川村への移住を決めました。

成瀬さん(1998年取材):
「豊科インターから降りたらアルプスが開けて見えますね。そうすると生まれ育った土地ではないが、大きい自然に包まれて戻ってきたという、そういう気分になる。不思議ですね」

■赤い服の人物のモデルは中原中也

「週刊新潮」担当者の目に留まった成瀬さんの絵

信州で活動してきた画家がなぜ週刊新潮の表紙を?

それは、成瀬さんが1992年に出版した画集、「BANANA MOON」がきっかけでした。

赤い服の人が椅子に座る1枚の絵が、週刊新潮の担当者の目に留まり、成瀬さんに表紙絵を依頼することにしたのです。

成瀬さん:
「椅子に座っている子が、そのまま椅子になってしまったという不思議さというか、ファンタジーというか、そういうことで描いたんやと思います」

画集の絵に登場する赤い服の人物は、週刊新潮の表紙絵にもよく描かれるモチーフです。

このモデルは、「サーカス」などの詩で知られる日本の近代詩人・中原中也だそうです。

成瀬さん:
「たまたま机の上にある中原中也の詩集の口絵写真で、マントを着て帽子をかぶる有名な写真ですけど、それを見てイラスト風に描いたのが始まりです」

■28年で1400点以上手掛ける

季節感と色の変化を意識

表紙絵は1997年4月から始め、2025年で丸28年。

成瀬さんは、表紙絵を描く上で意識していることがあります。

成瀬さん:
「こういうもん描くのは、秋やなという感じがするでしょ。季節感、それと色の変化。毎週、週刊誌が出るので、新しいのに変わったなという、そういうメリハリを求められますね」

■「自分には向いていない」

成瀬さん

これまで実に1400点以上を手掛けてきた成瀬さんですが、制作に悩むこともありました。

成瀬さん:
「(表紙絵を)始めて4、5年たつころは、自分には向いてないなという気がして、やめたいと思ったこともあります。編集部が僕に求めている絵と、僕が描いている絵がずれがあったんでしょうね。言葉では理解しても、絵になってこなかったという時期があったと思います。だから、描き続けていることが、次の作品を生み出しているというか、そんな気がします」


■「今、一番幸せ」生涯現役が目標

成瀬さんが描いた表紙絵の原画

画家の道に進み40年。成瀬さんは今、新たな心境にあるといいます。

成瀬さん:
「70代になってから、ほぼ毎日のように絵を描いているから、こんなこと今までなかった。自分の感情なり、絵画的感性の確認であり、それを探っているというところかな。今、一番幸せな時期だなと」

画家人生にも大きく影響を与えた表紙絵の仕事。

生涯現役で描き続けていくことが目標です。

成瀬政博さん(78):
「絵以上に集中、熱中できるものないよね。元気で頭がぼけなければ、最後まで描いていきたいなと思っています」

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