■記憶の継承 新たな方法

黒川開拓団の遺族会長・藤井宏之さん
過去の事実を語り継ぐ。
新たな方法を探る中で始まったのが、体験者の家族などと参加者の対話を重視した「土曜セッション」です。
黒川分村遺族会・藤井宏之会長:
「当事者の皆さん、生きて帰られた方の中には、一生独身で亡くなっていかれた方もあり、いろんな苦労をされて引き揚げて」
初回のゲストに招いたのは、岐阜県白川町に住む黒川開拓団の遺族会長・藤井宏之さん(73)。黒川開拓団は、旧黒川村(現 岐阜・白川町)が1942年に送り出した開拓団で、藤井さんの両親も参加していました。
■参加した高校生「次世代につなぐ」

乙女の碑(岐阜・白川町)
敗戦後、開拓団は住民の襲撃から守ってもらう見返りに旧ソ連軍に未婚の女性たちを差し出すという苦い経験を経て帰国しました。
性接待の事実はタブーとされ、命の恩人の女性たちが帰国後に差別されるなど理不尽な扱いも受けました。
しかし、2018年に経緯を記した碑が建てられるなど地元でも悲惨な歴史と向き合おうとしています。
黒川分村遺族会・藤井宏之会長:
「(女性たちは)黒川開拓団を守るために犠牲になったんだというところが強いと思った。われわれはもう2世3世の時代、普通の幸せな状況で暮らしているその陰に、そういうことがあったんだということだけは知っておかないといけないな」

元開拓団・安江菊美さん(91)
セッションは、参加者との質疑応答などおよそ2時間行われました。
参加した高校生(飯島町から):
「自分たちが直接(話を)聴くことができる最後の世代。次世代につないでいかないと歴史に消えていってしまうので、いろんな人にも伝えていきたい」
奈良県から参加:
「(取り組みが)続いていってほしいじゃなくて、私も続けていかないといけないなと。奈良でも何か小さなことでもいいのでしていかないといけない」
この日は元開拓団の女性も訪れました。
元開拓団・安江菊美さん(91):
「私の頭もだんだん忘れてきますよ。私たちができなくなったら、誰かが伝えてくれなきゃ消えてしまうと思いますけど、とにかく戦争には向かわせないでほしい」
■体験者の思いをどう受け継ぐか

「土曜セッション」(4月12日、満蒙開拓平和記念館)
体験者の思いをどう受け継いでいくか。
「土曜セッション」は毎月第2土曜日に開催します。
満蒙開拓平和記念館・三沢亜紀事務局長:
「確実に体験者は少なくなっていくわけですよね。戦争は遠くなった、もう終わったこと、そういうふうにはせずに今の社会に還元していく、生かしていくというか。そういう力に変えていくというのは、これからの私たちの役割というふうに思います」