
公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva」理事長の杉本彩さん
動物虐待で検挙された事件は、2023年、過去最多の181件に上り、虐待された動物の9割近くが犬や猫だった。「動物環境・福祉協会Eva」の理事長・杉本彩さんに、摘発件数が増加した背景や今後の課題などについて聞きました。
■猫に吹き矢を刺した疑いなど

犬虐待事件の家宅捜索(長野県松本市 2021年9月)
警察庁によりますと、2023年の1年間に動物愛護法違反で摘発されたのは181件、206人でいずれも過去最多でした。このうち、犬が65件、猫が97件で、あわせて9割近くを占めました。
具体的には、河川敷で猫に吹き矢を刺した疑いや、勤務する農場の牛を蹴るなどの暴行を加えた疑いで、男らが摘発されました。牛に暴行する動画がSNSに掲載されたのを見た人が通報したのがきっかけでした。

虐待事件があった施設で飼育されていた犬(長野県松本市 2021年)
こうした一般市民など第三者による通報によって発覚した事件は、118件で全体の半数以上でした。
警察庁は、動物保護に関する社会の関心の高まりが増加の背景にあると分析しています。
■杉本彩さん「密室で行われた虐待も」

犬虐待事件があった施設で飼育されていた犬(長野県松本市 2021年)
公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva」の理事長・杉本彩さんに、摘発件数が増加した背景や今後の課題などについて聞きました。
ーー過去最多の検挙数181件
検挙数が181件で過去最多ということですが、被疑者不明で検挙できなかった虐待、そもそも密室で人知れず行われた虐待があることを考えると、動物虐待の数はこれよりはるかに多いと想像できます。前年よりも増え過去最多になったのは、動物虐待の数そのものが増えてきたと考えるより、動物虐待に対する社会の目が厳しく光るようになり、管轄機関や警察への通報、また動物愛護団体への相談と通報が増えたことによるものと考えられます。
■しつけと称して暴力も

犬虐待事件の家宅捜索(長野県松本市 2021年9月)
ーー最近の傾向について
当協会Evaにも相変わらず相談が絶えません。最近の傾向としては、一般飼い主やペット事業者が虐待の行為者となるだけでなく、本来は動物を守るべき動物保護団体による虐待も多く見られます。しつけと称して暴力をふるう虐待もあれば、世話や医療的ケアなど、すべきことを怠るネグレクトもあります。
さらに、ペットとしての動物だけではなく、畜産における家畜への虐待なども検挙されるようになったことは大きな前進です。動物を使った伝統行事や畜産業、動物園やふれあいカフェの展示など、人間の管理下にあるすべての動物に対して、その扱いが問題視されるようになり、虐待を許さないという市民の意識がいっそう高まったように思います。