■2度の挫折…再び建設に挑戦

峠の国盗り綱引き合戦
しかしー。
国土交通省飯田国道事務所・浅井直実副所長:
「中央構造線という大きな断層の近くを掘るということで、崩れやすいし、山がちょっとずつ動いている。隆起しながら西の方に押されているような感じ」
地盤がもろく列島を走る大断層・中央構造線の影響もあり工事は断念されました。
一方、県境の住民は兵越峠を抜ける市道などをう回路として利用してきました。
「峠の国盗り綱引き合戦」が行われる、あの峠です。

2度の挫折…再びトンネル建設に挑戦
国は、その兵越峠に着目。
1994年、「高規格」の三遠南信自動車道として、まず静岡側で草木トンネルを開通させました。
当時のカメラマンリポート(2009年):
「静岡県側は道路ができていますが、長野県側はまだ一切できていません」

巨大な重機が壁を掘削(提供:国土交通省飯田国道事務所)
続く兵越峠付近にもトンネルを掘る計画でしたが、中央構造線の影響で地盤がもろいことがわかり整備を断念しました。
2度の挫折がありましたが、国は技術力向上を受けて再び青崩峠のトンネル建設に挑みます。
本坑工事は2019年にスタート。トンネルの土かぶりは最大610メートルで通常の3倍以上のコンクリートを吹き付け、強度を高めました。
国土交通省飯田国道事務所・浅井直実副所長:
「鋼製の支保工(アーチ状の支え)も強度をあげて1.8倍にしたり、ロックボルトも1.6倍本数を増やしたり、そういう工夫をしながら工事を進めていきました」
■「長野ー静岡が近くなる」

青崩峠トンネル 長野側
着工から4年、計画浮上からは40年―。
5月、ついに貫通を迎えました。
トンネルが開通すれば30分以上かかっていた南信濃と浜松市水窪町の往来は6分ほどに短縮。物流や観光、救急搬送などに時短メリットが生まれます。
国土交通省飯田国道事務所・浅井直実副所長:
「浜松市の新鮮な魚介類が、飯田の山の方や市内に短い時間で運送できるし、長野県の南の方の果物とかも浜松へお届けできるようになります。人の行き来が生まれれば経済効果もあると思います」