YouTube X Instagram

よみがえる作曲家・小山清茂さん「幻の組曲」 8年前、楽譜発見 市民楽団が初披露

特集は長野市出身の作曲家、小山清茂さんの幻の曲。8年前、楽譜が見つかった組曲「鄙唄(ひなうた)」が6月25日、市民オーケストラによって初めて披露された。ふるさとでよみがえった幻の組曲をお聴きください。

拍子木に続き、木琴が奏でるどこか懐かしい旋律。小山清茂作曲「木琴と管弦楽のための協奏組曲・鄙唄」。

25日、市民オーケストラ「ソノーレ長野」が初演を果たした。わらべ唄をもとにした5つの曲から成り立つ組曲。昔の田舎の情景が浮かぶようだ。

小山さんが生まれ育ったのは旧信里村。今の長野市篠ノ井山布施だ。

小山清茂さん(1988年取材/当時74歳):
「僕はこういうところに少年時代を過ごしたということが、ありがたかったと思っているね」

1914年に生まれ、小学校の教員を経て、世界的に評価される作曲家となった。好んで題材としてきたのが民謡や神楽、わらべ唄など日本のメロディー。

こちらは、小山さんが母校・長野高校の吹奏楽班を訪ねた場面。

小山清茂さん(1988年取材):
「たらったらったらっとやって、ぴーやーうってやるところがある。祭りの獅子舞っていうのがあるんだな」

小山清茂 作曲「吹奏楽のための太神楽」

小山清茂さん(1988年取材):
「洋楽器で日本の音をさせる。バイオリンだからベートーヴェンやシューマンしかない、これじゃ困る。ハーモニーが日本的であれば、洋楽器でも日本の音がするというわけなんだね」

「日本的なハーモニー」を吹奏楽やオーケストラの曲にまとめあげ、多くの人を魅了してきた。

2009年、95歳で死去―。

小山さんが亡くなってから6年後…。

打楽器奏者・飯野晶子さん:
「手書きで、鉛筆で書かれています。きれいに書かれていて、すごくきっちりした紳士だったんだろうなって」

未発表の組曲「鄙唄」の楽譜。

都内在住の打楽器奏者・飯野晶子さんが、ある音楽家の遺品を整理する中で発見した。

打楽器奏者・飯野晶子さん:
「あ、この曲知らないのがあると思って、落ち着いたところでゆっくり見たら、小山清茂さんの曲で。今までそんな曲があるのも、研究していたけど知らなかったのですごくびっくりして。そこからこれを何とかして世に出したいと思って」

県内の関係者に連絡を取り、発見から8年を経て初演を迎えた。

演奏前にあいさつした音楽家の長男・茂さん(76)。20歳の頃に見た光景を語った。

小山清茂さんの長男・小山茂さん:
「茶色いものをびりびり破っているおやじの姿を見ました。『ソロの部分長くしてほしいと頼まれたけど、長くするの嫌いだから、もうこの楽譜見たくない、それで燃やすんだ』ということで私は燃えるのを見て、残念だなと」

燃やされた楽譜は「鄙唄」の下書き。他に楽譜が残っているとは思いもしなかった。

小山清茂さんの長男・小山茂さん:
「50年も前の楽譜まだ残っていたのか、すごいことだなと思いました」

いよいよ演奏スタート。

第1曲「鳥追い」。ふるさと・信里でも行われていた豊作を願う小正月の行事を曲にした。

木琴の軽快なメロディーは「鳥追い」の中で、子どもたちがうたう唄がもとになっている。

もとの唄は…

「ソノーレ長野」ビオラ担当・宮下拓也さん:
「清茂だりゃねぼうで よろりのすまへ しゃっかんで へえのはしら しゃぼって おっかさ ちちゃ しゃぼって まだとりょ おわね、おわね」(清茂は寝坊で いろりの隅へ しゃがんで 灰の柱 しゃぶって お母さんの 乳 しゃぶって まだ鳥を 追わない 追わない)

「ソノーレ長野」ビオラ担当・宮下拓也さん:
「自分が必ずしも子どものころ聞いていたというんじゃないんですけど、長野の自然とか風景とか生活がわかる曲で、『自分たちの音楽だ』っていう感じがしますね」

組曲「鄙唄」の特徴となっているのが「楽器の多様な使い方」。

第3曲「手毬唄(てまりうた)」では、管楽器奏者が演奏するかと思いきや、マウスピースをたたく。

手毬(てまり)の音を表現したもので、「Flap the mouth piece」と、楽譜にも書き込まれていた。

第5曲「もぐら追い」の冒頭は、弦楽器の普通は弾かない部分をこすって不協和音を出し「もぐら追い」を表現する。

楽譜には「ブリッジを越えて」と指示―。

「鄙唄」の豊かな表現は、小山さんの楽曲に親しんできたオーケストラにとっても刺激的だった。

「ソノーレ長野」指揮者・加藤晃さん(長野市出身):
「一線越えるのが大変で、勇気がいるんですね。越えてしまうとワクワクする、やっていて楽しい」

木琴 ソリスト・福島優美さん(長野市出身):
「先生が思い描いたものを再現するには、どうしたらいいかなと大変でした。たくさんの方に聴いていただいて、うれしかったです」

観客:
「情景が思い浮かぶような音色を、工夫されているところがすてきだなと」

小学生:
「とても迫力があったり、静かなところは静かで、すてきでした」

旧信里村在住:
「地元の小山先生を誇りに思います」

小山清茂さんの長男・音楽家・小山茂さん:
「あ、おやじの曲だなって。こうやって郷土を大切にしてくださる皆さんがいらっしゃることは、応援していきたい」

信州の、日本の情景を曲にしてきた小山清茂さん。

オーケストラは、これからも小山さんの楽曲を演奏し続けたいとしている。
  • facebook
  • twitter
  • LINE
長野放送ニュース

あなたにおすすめ