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「客の笑顔もう一度」 熊本地震で店失った夫婦が再出発 夢の続きは信州で…白馬村にドーナツ店

特集は夫婦の再出発です。2016年の熊本地震で被災した夫婦が信州に移住し、5月、長野県白馬村にドーナツ店をオープンさせました。素材にこだわったドーナツは早くも人気。客の笑顔が二人の励みになっています。

揚げたてのドーナツの香りが広がります。こちらは今年5月にオープンした「OTTO donuts hakuba(オット ドーナツ ハクバ)」です。作っているのは棒状の生地を輪にして揚げた、いわゆるオールドファッション。その専門店です。

ドーナツ作りの担当は楢橋広和さん(51)。妻の和希さん(50)は主に接客を担当しています。

OTTO donuts hakuba・楢橋広和さん:
「お客さまから『おいしいです』と言っていただけるのが一番うれしいです」

開業して3カ月ほどですが、SNSや口コミで人気が広がっています。

初来店:
「一回は食べてみたいなと。きょうのおやつ、楽しみにしている」

リピーター:
「そんなに甘くなくて食べやすい感じ。白馬でもこういうのができて、(これまでは)遠くに行かないとなかなか買えなかったので」

空き家を改装した小さな店。夫婦の「再出発」の場所でもあります。

2人は共にイタリアンのシェフでした。修業先の東京・日本橋の店で出会い、2000年に結婚。2011年には広和さんのふるさと・熊本市に移りイタリアンの店を開きました。念願だった夫婦の店。末広がりで縁起がいいと店名には数字の8のイタリア語「OTTO」を使いました。

しかし、5年後…

2016年4月、最大震度7の熊本地震が発生。276人が犠牲となり4万3000棟が全半壊するなど甚大な被害が出ました。店があった地域も震度6 強の揺れに襲われ、入っていた建物が半壊。修繕は難しく、閉店を余儀なくされました。

OTTO donuts hakuba・楢橋広和さん:
「最初は悔しかったですね。夢が絶たれるというのはあったので、ほんとに悔しくて…」

OTTO donuts hakuba・楢橋和希さん:
「(開業)5年のお祝いをして、これからっていう気持ちが強い時期だっただけに、最初は何も考えられない…」

以前、勤めていた東京の店の紹介で軽井沢のホテルで住み込みで働き、2019年からは白馬の宿泊施設へ。厨房に入ったり、ベッドメイキングをしたりと、下積み時代に戻ったような生活が続く中、再び店を持ちたいという思いが強くなっていきました。

OTTO donuts hakuba・楢橋和希さん:
「人生には何があるか分からないなとつくづく思い、それを糧にというか…」

OTTO donuts hakuba・楢橋広和さん:
「ホテルで働いていましたけど『自分で商売したいな』とずっとあったので」

コロナ禍に入り、レストランの経営は困難が予想されました。そこでテイクアウト需要を見込んで、熊本時代から作っていた「ドーナツ」の店を開くことにし、店名には「OTTO」を再び使うことにしました。

OTTO donuts hakuba・楢橋広和さん:
「やっとスタートの地点に戻ったなというのが一番。これから少しずつ、いろんな方にドーナツを食べていただいて、少しでも幸せな気持ちになっていただければ、それが一番の私の喜びなので」

こだわりは素材から。有機農法で栽培された上田産の小麦を、石臼で皮ごとひいて「全粒粉」にします。

OTTO donuts hakuba・楢橋広和さん:
「これを入れることで味に深みが出ますね、全然違う」

これに薄力粉や強力粉をブレンドし、バターや卵、きび砂糖で優しい甘さに仕上げます。

油を極力吸わせないよう、3分半ほどでカラっと揚げます。

一番人気!プレーン260円

記者が試食―

(記者リポート)
「一番人気のプレーンいただきます。油のしつこさもなく、口当たりも軽いです。優しい甘さの中から、小麦のいい香りも広がってきます」

「白馬ならではの味を」と地元の野菜やフルーツを使ったドーナツも。こちらは、生地を白馬産のブルーベリージャムでコーティング。

ブルーベリー250円

OTTO donuts hakuba・楢橋広和さん:
「白馬は温度差があるんですよ、昼間と朝晩。フルーツも野菜も味が濃くなるんですよね、糖分を出すので。ドーナツにはもってこい」

このほか、季節に合わせトウモロコシやルバーブなど、旬の食材を使ったドーナツも提供しています。

茨城から:
「え、かわいい。めっちゃおいしい」

店の横にあるベンチですぐに食べられる―。

茨城から:
「油っこくないからさ、(何個も)いけちゃうね。どれもおいしい。素材の味がして、甘すぎなくておいしい」

夢を諦めず、店を「末広がり」にしようと、再び奮闘する楢橋さん夫婦。物語の続きが信州で始まりました。

OTTO donuts hakuba・楢橋広和さん:
「ドーナツを食べる、くつろいでくれるお客さんが多く来てくれれば、それが私たちの喜び」

OTTO donuts hakuba・楢橋和希さん:
「2人で一生懸命やってきたから、今、少し神様からご褒美をもらっているのかな。食べて、笑顔になってもらいたい」
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長野放送ニュース

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