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行動力の妻、支える夫…佐久の『夫婦食堂』 47歳で直売所、60歳で食堂オープン【長野】

特集は長野県佐久市の夫婦食堂です。妻は47歳の時に仲間と直売所を始め、その後、60歳で食堂をオープンさせました。その行動力も夫の理解と協力があってこそ。今は二人三脚で食堂を切り盛りしています。

サクサクのとんかつに、みそダレをかけて…

客:
「バッチグー」

ここは、佐久市布施の「味処 こまがた」。店主は、土屋しのぶさん74歳です。食器を下げ、洗い物をするのは夫の興亜さん81歳。

夫・興亜さん(81):
「(洗い物の)ご指導受けているんだけど、怒られてばっか」

店主・土屋しのぶさん(74):
「(夫は)しょうがない、一生懸命やっている。ありがとうって言わなきゃ、ケンカばっかりしてるから」

連れ添って半世紀近く。食堂は2人のように、和やかな雰囲気に包まれていました。

しのぶさんは23歳の時に県職員だった興亜さんと結婚。夫の両親の農業を手伝う傍ら、自分はキクやクジャクソウなど花の栽培に取り組みました。

3人の子どもを育てあげ一段落した47歳の時、しのぶさんは仲間と新たな行動に出ます。農家の女性グループで野菜や花の直売所を立ち上げようとしたのです。地元の農産物を発信するのが狙いでしたが、女性たちの憩いの場にしたいという思いもありました。

店主・土屋しのぶさん(74):
「みんなしゅうとめと一緒に暮らしてるでしょ、私らの年代は。ちょっと寂しいことがあったりとか、困ったなってとき、気が休まればいいなっていう思いで」

当時、安曇野市に単身赴任していた興亜さん。直売所の話はほとんど聞いておらず、当初は反対しました。

夫・興亜さん(81):
「(当時は)全く直売所はこの佐久地方にはありませんでしたから、そんなことやってどうかなという頭はちょっとありましたね」

店主・土屋しのぶさん(74):
「実際は『ダメ』って言ってたから、女性たちからも『いいよいいよ、そんなのやっちゃいな』とか言われて。(内緒で進めた?)そんなところありましたね。(反対されてもやっていた感じはする?)たぶんね(笑)」

夫・興亜さん(81):
「一緒にやりましょうということで仲間がいたもんですからね。それじゃやってみるかと、お手伝いくらいはできるかと」

直売所は1995年にオープン。土屋さんは代表を務めました。数字に強い興亜さんは県職員を退職後、会計係となって直売所を支えました。

店主・土屋しのぶさん(74):
「(直売所に)みんな来て、ゆっくりするから、いろいろお話しできたり、楽しかったですね」

新鮮で安いとあって観光客も足を運ぶようになると、今度は「交流の場にしよう」と食堂の開業を思い立ちます。当時60歳。花を売っていた建物を改装し、しのぶさんが中心となって食堂をオープンさせました。

店主・土屋しのぶさん(74):
「(直売所でも)ちょっとしたところでお茶は飲んでもらっていたんですけど、交流人口増やすには何かやらなきゃと。(大変じゃなかった?)料理は好きだから。ここへ来ると、人が来ちゃってお話ししちゃうから、(次の日の準備が)間に合わなくなっちゃう」

一方、興亜さんは畑仕事に精を出しました。採れた野菜は食堂でも使われています。

夫・興亜さん(81):
「こんなことやっているのが、元気の秘けつかもしれませんね」

直売所はメンバーの高齢化もあって2019年に閉じましたが、食堂はしのぶさんが受け継ぎ、今も…。

店の名物はこちらの「駒月みそかつ丼」(850円)。2010年、望月地区の飲食店がご当地丼として考案したものです。みそダレをかけるのが決まりで、しのぶさんは地元の黒豆「雁喰豆(がんくいまめ)」を使った「雁喰みそ」をベースにしたオリジナルのタレをかけています。この日の付け合わせには、興亜さんが育てた野沢菜も。

客:
「みその中に黒豆の香りがして、おいしかったです」
「おいしかったですね。タレも肉とご飯ともあってほどよい甘さで、また来たい」
「(野沢菜)ちょうどいい味ですよ、おいしいです」

話好きのしのぶさんは、客と気さくに会話を楽しみます。

店主・土屋しのぶさん(74):
「これから長野まで?善光寺さんご利益あるから、いっぱい(回向柱)触ってきて」
「運動会日和ですね。私も孫の運動会、見に行きたいわ」

明るさと行動力で直売所に続き食堂を立ち上げた妻とそれを支えてきた夫。歳を重ね、体への負担も大きくなっていますが、これからも支えあって食堂を営んでいきます。

夫・興亜さん(81):
「2人で元気、片方倒れれば、もうやりたくてもできないですね。そのためにも食堂頑張るかと、そこで使う野菜くらい作ってやるかと」

店主・土屋しのぶさん(74):
「ありがとうございます、そんなつもりでしたの(笑)。(夫は)バカ真面目、クソ真面目ですね。私がその分、ズボラやっているから、本当に感謝です。(食堂で)人との交流がすごいできるようになりました。こんな出会いができるなんて夢にも思わなかったです。できるだけやりたいとは思ってます」
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