■「最終的に辿り着いたのが安曇野」

Charcuterie Ruz 長野県安曇野市
「将来独立するときは田舎がいいなと思って、たどり着いたのが安曇野ですね」と真子さんは話します。
修業地ブルターニュとの共通点であるリンゴ、そば、清らかな水、そして豊かな食材に恵まれた大地が決め手でした。
2017年に移住し、販売を担当する夫・鷹さんとともに店をオープン。
「2人で共有しあって納得して出しているので、いなくてはならない存在」と真子さんが語る二人三脚の体制が、この店の大きな強みになっています。
■2時間半の煮込みが生む旨み

信州吟醸豚のリエット 100g750円
店の象徴的な一品が「豚肉のリエット」。
フランスでこの料理に出会ったことが、真子さんのシャルキュトリーへの転身を決意した原点でもあります。
使用するのは北安曇郡池田町産のブランドポーク「信州吟醸豚」で、「融点が低くてくちどけがよい、加工肉に向いている」といいます。
ニンニク、オニオン、香草などをラードでじっくり香りを引き出した鍋に、焼いた肉を入れ、2時間30分ほど煮込みます。
ほろほろになった肉を取り出し、煮汁をこして再び煮込んだあと、夫・鷹さんが手で肉をほぐしながら小骨を丁寧に取り除きます。
「また別の人が見るといいので」という言葉には、二人で品質を守るこだわりがにじんでいます。
「香りはフランス料理としてはすごく重要。香りで楽しませる。そこでおいしさが始まっている」そう語る真子さんにとって、香りはすべての料理の出発点です。
■地域をつなぐ、おいしさの連鎖

Charcuterie Ruz シェフ 中村真子さん
真子さんのリエットに魅了されたパン店があります。
安曇野市の県産小麦にこだわった「あづみのるベーカリー」の店主・小池稔さんは、6年前からリエットを使ったサンドイッチを作り続けています。
「食べたときの豚肉の繊維がしっかり。口の中で溶けていくような滑らかな感じがすごくおいしい」と小池さんは絶賛します。
カンパーニュ生地にリエットをたっぷり挟み、自家製の酢漬けキャロットを加えた「リエットサンド」は「お客さんからは一つの料理みたいと言われる」という人気メニュー。
地域の作り手同士がつながりながら、おいしさが循環しています。
「極力、地元の食材を使う」という真子さんの姿勢は、季節のメニューにも色濃く反映されています。
キッシュの野菜も、2月は「松本一本ねぎ」、4月は「ふきのとう」、5月は「新玉ねぎ」と、安曇野の旬そのものが皿の上に刻まれていきます。
中村真子さん:
「丁寧に作ることが第一前提にあって、あとは楽しみながら作る。シェフが楽しんで作っているんだなということがお客さまには伝わるような料理を心がけています」
フランスの音楽を流しながら踊るように料理を続けるその姿が、すべてを物語っています。
※この記事は、 2026年6月26日にNBS長野放送でOAした「フォーカス信州 信州クラフトの味2~食卓を彩る匠たち~」をもとに構成した内容です(全3回の記事その2)

