
バス停にリンゴ、マンホールのふたにもリンゴ。長野県北部の飯綱町を歩けば、どこもかしこもリンゴだらけです。県内第4位のリンゴ産出額を誇るこの町は、なんと50品種以上ものリンゴが栽培されています。切ってみると桃のような果肉をした珍しい品種から、スイーツ店やシードル醸造所まで。多彩な品種が生み出す飯綱町で「推しリンゴ」の世界をのぞいてみました。
■「桃みたい!」珍しいリンゴが続々登場

リンゴ農園を営む中村淳子さん
「ムーンルージュという品種で中が赤い果肉になっています」
家族でリンゴ農園を営む中村淳子さんが手にしたリンゴを切ってみると、まるで桃のような鮮やかなピンク色の果肉が現れました。
「普通だと縦に割るところを輪切りにすると『スターカット』といって見栄えが良くなるんです」
中村さんの農園では20品種を栽培しています。最近は、暑さで作りづらい品種も出てきたため、それに代わる品種を増やしていったこと。また、お客さんにいろいろと食べ比べをして、リンゴを好きになってもらいたいことから種類が増えていきました。そんな中村さんのイチ押しは、青りんごの「グラニースミス」。スイーツで人気の品種で、18トンと県内でもかなり多く栽培しています。
■英国王立園芸協会からの贈り物が始まり

飯綱町で品種が爆発的に増えたきっかけは、意外にも海外との縁でした。1990年、英国王立園芸協会から海外原産16品種の苗木が寄贈され、加工用りんごの生産に力を入れ始めました。加えて、新しい品種や珍しい品種に挑戦しようという意欲的な農家が多いことも、多品種栽培が根付いた理由として考えられています。
現在では約60~70品種が栽培されていると言われ、まさに「リンゴの博物館」のような町になりました。
「色んな品種といろんな味を作っているとどれかひとつ自分の推しリンゴが見つかると思う。それが一番いっぱい作っていてよかったと思うところです」と中村さんが語るように、生産者も消費者も、それぞれの「推しリンゴ」を見つける楽しみが広がっています。

