
警察署に移送 青木政憲被告(2023年5月)
2023年5月、長野県中野市で住民の女性2人と警察官2人を殺害した罪に問われている青木政憲被告(34)の裁判員裁判で、9月24日、検察は被告に死刑を求刑しました。判決は10月14日に言い渡される予定です。

長野地方裁判所(2025年9月24日)
長野地方裁判所で開かれている公判では、9月22日までの8日間で、被告の両親や検察側、弁護側の依頼で精神鑑定を行った精神科医など8人の証人が出廷しました。
被告人質問も3日間に渡って行われましたが、青木被告は「すべての質問に黙秘します」などと述べ、黙秘を続けています。
このため、被告の捜査段階の供述調書が証拠として請求され、これを裁判所が認めて、法廷でその内容が読み上げられました。
女性2人を殺害した時の状況はー。
被告の供述調書より:
「2人の(被害)女性は、事件の1、2年前から、散歩中に毎回、私に対し『ぼっち』と悪口を言いました。自分たちでまいた種で、殺害されても仕方がないと思い、殺意をもって攻撃しました。怒りの積み重ねが我慢の限界になり、逮捕されても仕方がないと思いました」
警察官2人の殺害についてはー。
被告の供述調書より:
「警察から射殺されるのは嫌なので、射殺される前に撃とうと思い、引き金を引きました。この時、(警察官2人が)死ぬかもしれないと思いましたが、それでも構わないと思いました」
青木被告の両親も証人として出廷。2013年に大学生だった被告が1人で暮らすアパートを訪れたとき、「学校で『ぼっち』や『きもい』と言われるいじめにあっている」「アパートに隠しカメラや盗聴器があるので気をつけて」などと訴えていたと証言しました。
事件を起こした直後、被告と家で一緒だったという母親は被告の様子について「興奮状態で、手に銃を持ち、銃撃戦に備えている様子だった」と明かし、「『自首するように』とすすめたが『警察に捕まっても長い裁判の末に絞首刑になる。長く辛く苦しいのでそんな死に方は嫌だ』と言っていた」などと証言しました。
また、父親は事件の約9カ月前、家族が経営していた市内のジェラート店で被告がアルバイトの男性に突然殴りかかったトラブルがあったと明かし、その時の被告の様子について「『ぼっちぼっちとバカにしただろ』『ぶっ殺すぞ』と、初めて聞く大声を出していた」などと証言しました。
裁判の争点は被告の「責任能力」と「量刑」。被告の過去の言動などを踏まえ、被告は被害女性2人から「ぼっち」などという悪口を言われたという妄想を抱いていたことは、検察側、弁護側とも共通しています。
検察側、弁護側の精神科医は「妄想が犯行に与えた影響」について、それぞれ異なる見解を示しました。
検察側の依頼で精神鑑定を行った医師は「被告は重度の『妄想症』があった」と証言。女性2人に対する「動機の形成には妄想が影響したが、殺害の実行には影響していない」「警察官2人に対しては逮捕などを逃れる行為で、動機の形成にすら妄想は影響していない」と説明しました。
一方、弁護側の依頼で精神鑑定を行った医師は犯行時の被告は「未治療のまま経過した統合失調症が再燃した状態で、正気と異常な状態を本人が認識できない状況だった」とし、4人の殺害に及んだ行動は「妄想に支配された行動だった」と説明しました。