
特集は是枝裕和監督の新作「怪物」です。カンヌ国際映画祭でも高い評価を受け、メインのロケ地・長野県諏訪地域でも喜びの声が上がっています。実は監督にとって、信州は「特別な場所」。単独インタビューで思いを聞きました。
カンヌのレッドカーペットを歩く是枝裕和監督。主演の安藤サクラさんや永山瑛太さん、子どもたちと歓声に笑顔で応えました。
監督は2018年、「万引き家族」で最高賞のパルムドールを受賞。「新作」を世界が注目していました。
(予告ナレ―ション)
「湖のある静かな町で起きた、ささいな事件。それはよくある子ども同士のけんかに見えた」
映画「怪物」は撮影の9割以上が諏訪地域で行われました。
音楽は坂本龍一さん。これが最後の作品となりました。
息子を愛するシングルマザー、生徒思いの教師、無邪気な子どもたちの思いが、次第に食い違っていき、大きな事件へと発展するヒューマンドラマです。
カンヌでは、上映後9分半ものスタンディングオベーション。
主演・安藤サクラさん:
「地響きのような拍手で、本当に圧倒されました」
そして、授賞式。
脚本の坂元裕二さんが「脚本賞」に選ばれました。
「怪物」是枝裕和監督:
「『(坂元さんは)たった一人の孤独な人のために書きました。それが評価されて感無量です』と。とてもいいバランスで脚本と演出のタッグが組めたんじゃないかな」
作品は、性的マイノリティなどを扱った映画に贈られる「クィア・パルム賞」も受賞しています。
4月、完成報告で諏訪を訪れた監督は…。
是枝裕和監督(あいさつ):
「この地域のロケーションの美しさ、豊かさが、きちんと作品に生かされたものになったと思います」
諏訪地域を選んだ理由や、信州への思いを聞きました。
是枝裕和監督:
「もともと坂元さんが書かれていた最初のプロットは、舞台は西東京だったんですね。町を南北に分ける形で大きな川が流れているというト書きがあって」
当初、ロケ地探しに難航。
そうした中、諏訪地域を訪れると…
是枝裕和監督:
「諏訪はすごく協力体制が整っていて、一度みんなで下見に行こうかと来たのがきっかけで、その時に城北小学校と出会いまして『あ、ここだ…』という感じです」
2021年に閉校した諏訪市の旧城北小学校。ここが「決め手」となりました。
案内した「諏訪圏フィルムコミッション」の宮坂洋介さん。
諏訪圏フィルムコミッション・宮坂洋介さん:
「昇降口で、『吹き抜けているのが面白い』と、おっしゃっていましたね」
監督は、昇降口の吹き抜けや、街と湖が見渡せる教室からの景色が「気に入った」と話し、映画の舞台に決定。
脚本の坂元さんには「大きな川」を「湖」に変えてほしいと依頼したそうです。
是枝裕和監督:
「城北は廃校になったばかりだったので、まだいろんなものが生きているんですよ。備品も残ってましたし、それをそのまま活用できたのは大きかったですね。何より昇降口の吹き抜けが最初に印象に残って」
劇中、架空の小学校を設定することが多いのですがー。
諏訪圏フィルムコミッション・宮坂洋介さん:
「ロゴマークもそのまま映画に登場して、城北小学校という設定で出てきますよね。いずれは建物も壊されちゃうことを考えると、映画の中でずっと残ると思うので、地域の人にとっても宝物になるのかな」
廊下に残されていた御柱祭の綱もー。
諏訪圏フィルムコミッション・宮坂洋介さん:
「御柱にも興味を持たれて、(綱は)崩れていたんですけど、地元の人にきれいに巻いてもらって、映画の中にもチラッと見えました」
実は是枝監督と信州の縁は深く、2012年にはドラマを富士見町や伊那市で撮影しています。
信州での最初の仕事は、もっと前の1980年代。番組制作会社のディレクターだった20代の頃、3年間、伊那市の小学校のクラスに密着して、ドキュメンタリー番組を制作しました。
児童は教科書を使わない学習に取り組み、牛を飼って命の尊さを学んでいました。監督はここで多くのことを学び、当時の児童とは今でも付き合いがあるそうです。
是枝裕和監督:
「嘘でもなんでもなく、キャリアのスタート。小学校行って撮影して、夕方、新宿行きの高速バスに乗って帰ると、子どもたちがバス停から、ぼくが乗った高速バスを追いかけて手を振ってくれて。癒やされていました。そこで“取材する”とか、“子どもの表情をどう撮るか”とか、その後の『誰も知らない』とか、子どもたちたくさん撮らせてもらっていますけど、子どもを撮るときに何が大切なのか、そういうことは全部、伊那小で学んだなって感じがする。特別な場所です」
子どもたちの自然な表情を引き出すことに定評のある是枝監督。
今回、撮影を見守った宮坂さんは、エキストラの子どもたちに丁寧に語りかける監督の姿が印象に残っています。
諏訪圏フィルムコミッション・宮坂洋介さん:
「すごく細かい端っこ、後ろの方の子まで、監督と助監督さんが『帰る時どうする?』『普段、こういう人がいたらどうする?』とかから始まって。そういうこだわりをずっと間近で見られて、うれしかったですね」
是枝作品の原点は「信州にあり」と言ってよさそうです。
そして新作では、諏訪地域の景色が世界中に届けられます。
諏訪圏フィルムコミッション・宮坂洋介さん:
「世界の人に諏訪地域のロケーションとか、場所を見てもらえるのも、運んでもらった是枝監督、スタッフの方たちに感謝しかないです」
映画「怪物」は6月2日公開。
是枝裕和監督:
「映画『怪物』、諏訪を中心とした長野県の皆さんの協力があってようやく実現した映画です。とてもおもしろい人間ドラマになっているので、ぜひ劇場でご覧ください」
カンヌのレッドカーペットを歩く是枝裕和監督。主演の安藤サクラさんや永山瑛太さん、子どもたちと歓声に笑顔で応えました。
監督は2018年、「万引き家族」で最高賞のパルムドールを受賞。「新作」を世界が注目していました。
(予告ナレ―ション)
「湖のある静かな町で起きた、ささいな事件。それはよくある子ども同士のけんかに見えた」
映画「怪物」は撮影の9割以上が諏訪地域で行われました。
音楽は坂本龍一さん。これが最後の作品となりました。
息子を愛するシングルマザー、生徒思いの教師、無邪気な子どもたちの思いが、次第に食い違っていき、大きな事件へと発展するヒューマンドラマです。
カンヌでは、上映後9分半ものスタンディングオベーション。
主演・安藤サクラさん:
「地響きのような拍手で、本当に圧倒されました」
そして、授賞式。
脚本の坂元裕二さんが「脚本賞」に選ばれました。
「怪物」是枝裕和監督:
「『(坂元さんは)たった一人の孤独な人のために書きました。それが評価されて感無量です』と。とてもいいバランスで脚本と演出のタッグが組めたんじゃないかな」
作品は、性的マイノリティなどを扱った映画に贈られる「クィア・パルム賞」も受賞しています。
4月、完成報告で諏訪を訪れた監督は…。
是枝裕和監督(あいさつ):
「この地域のロケーションの美しさ、豊かさが、きちんと作品に生かされたものになったと思います」
諏訪地域を選んだ理由や、信州への思いを聞きました。
是枝裕和監督:
「もともと坂元さんが書かれていた最初のプロットは、舞台は西東京だったんですね。町を南北に分ける形で大きな川が流れているというト書きがあって」
当初、ロケ地探しに難航。
そうした中、諏訪地域を訪れると…
是枝裕和監督:
「諏訪はすごく協力体制が整っていて、一度みんなで下見に行こうかと来たのがきっかけで、その時に城北小学校と出会いまして『あ、ここだ…』という感じです」
2021年に閉校した諏訪市の旧城北小学校。ここが「決め手」となりました。
案内した「諏訪圏フィルムコミッション」の宮坂洋介さん。
諏訪圏フィルムコミッション・宮坂洋介さん:
「昇降口で、『吹き抜けているのが面白い』と、おっしゃっていましたね」
監督は、昇降口の吹き抜けや、街と湖が見渡せる教室からの景色が「気に入った」と話し、映画の舞台に決定。
脚本の坂元さんには「大きな川」を「湖」に変えてほしいと依頼したそうです。
是枝裕和監督:
「城北は廃校になったばかりだったので、まだいろんなものが生きているんですよ。備品も残ってましたし、それをそのまま活用できたのは大きかったですね。何より昇降口の吹き抜けが最初に印象に残って」
劇中、架空の小学校を設定することが多いのですがー。
諏訪圏フィルムコミッション・宮坂洋介さん:
「ロゴマークもそのまま映画に登場して、城北小学校という設定で出てきますよね。いずれは建物も壊されちゃうことを考えると、映画の中でずっと残ると思うので、地域の人にとっても宝物になるのかな」
廊下に残されていた御柱祭の綱もー。
諏訪圏フィルムコミッション・宮坂洋介さん:
「御柱にも興味を持たれて、(綱は)崩れていたんですけど、地元の人にきれいに巻いてもらって、映画の中にもチラッと見えました」
実は是枝監督と信州の縁は深く、2012年にはドラマを富士見町や伊那市で撮影しています。
信州での最初の仕事は、もっと前の1980年代。番組制作会社のディレクターだった20代の頃、3年間、伊那市の小学校のクラスに密着して、ドキュメンタリー番組を制作しました。
児童は教科書を使わない学習に取り組み、牛を飼って命の尊さを学んでいました。監督はここで多くのことを学び、当時の児童とは今でも付き合いがあるそうです。
是枝裕和監督:
「嘘でもなんでもなく、キャリアのスタート。小学校行って撮影して、夕方、新宿行きの高速バスに乗って帰ると、子どもたちがバス停から、ぼくが乗った高速バスを追いかけて手を振ってくれて。癒やされていました。そこで“取材する”とか、“子どもの表情をどう撮るか”とか、その後の『誰も知らない』とか、子どもたちたくさん撮らせてもらっていますけど、子どもを撮るときに何が大切なのか、そういうことは全部、伊那小で学んだなって感じがする。特別な場所です」
子どもたちの自然な表情を引き出すことに定評のある是枝監督。
今回、撮影を見守った宮坂さんは、エキストラの子どもたちに丁寧に語りかける監督の姿が印象に残っています。
諏訪圏フィルムコミッション・宮坂洋介さん:
「すごく細かい端っこ、後ろの方の子まで、監督と助監督さんが『帰る時どうする?』『普段、こういう人がいたらどうする?』とかから始まって。そういうこだわりをずっと間近で見られて、うれしかったですね」
是枝作品の原点は「信州にあり」と言ってよさそうです。
そして新作では、諏訪地域の景色が世界中に届けられます。
諏訪圏フィルムコミッション・宮坂洋介さん:
「世界の人に諏訪地域のロケーションとか、場所を見てもらえるのも、運んでもらった是枝監督、スタッフの方たちに感謝しかないです」
映画「怪物」は6月2日公開。
是枝裕和監督:
「映画『怪物』、諏訪を中心とした長野県の皆さんの協力があってようやく実現した映画です。とてもおもしろい人間ドラマになっているので、ぜひ劇場でご覧ください」