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性別超えて…マイホーム、親にカミングアウト “決意と感謝” パートナーの2人が新たなスタート

「パートナーシップ」の宣誓をしたカップルのその後です。宣誓制度は性別の枠を超え、さまざまなカップルを公的に認めるもので現在、長野県内では3つの市が導入。婚姻に相当する関係としてさまざまな行政サービス、民間サービスが受けられます。2021年、宣誓した松本市のカップルは周囲の理解も得て、この程、マイホームを建て、新たな一歩を踏み出しました。

松本市内の神社に初詣に訪れた川村奈緒さん(34)と伊藤由香里さん(37)。2人は2021年10月、パートナーシップを宣誓。公的に認めれたカップルです。

「中吉!一緒だ!」

川村奈緒さん:
「家庭はお互いに我を張らないで、仲睦まじくせよ。運上がるって書いてあります」

川村さんは看護師として働く傍ら、音楽活動もしていて、NBSの番組にも出演したことがあります。それが縁で、「LGBTQ」への理解が広がればと取材に応じてくれました。

川村奈緒さん:
「昔から男の子が好みそうなおもちゃや色が好きでした。男性といたらかわいい格好をしないといけない、かわいらしくしないといけないって考えてしまって、でもそれって自分じゃないような気がして『クエスチョニング』が一番近いのかな。男らしく、女らしくというよりは、自分は自分らしくいたい人なので」
(※クエスチョニング=性の自認や指向が定まらない、あるいは定めない人)

性別にとらわれず、「自分らしく生きたい」―。そうした川村さんを理解し支えているのが伊藤さんです。恋愛対象は異性でしたが、川村さんの魅力に引かれ、「パートナー」となる決意をしました。

伊藤由香里さん:
「人として奈緒さんに引かれたというか、好きになった、ただそれだけ。結婚して子どもが生まれて、おじいちゃん、おばあちゃんになってという生活は送れないけど、幸せの一つの形として私たちみたいな夫婦じゃないけどパートナーもいるということを皆に知ってもらって、受け入れてもらって楽しく生活ができたら」

正式にパートナーとなった2人。市営住宅の入居申し込みや、市立病院では親族と同様の面会・みとりができるようになりました。

宣誓から1年がたった2022年10月。

川村奈緒さん:
「今、家を建てていて、まだ途中だけど。『2人で住む家がほしい』と話をして。楽しみにしています、2人で」

マイホームの建築。2人で生きていく決意を「カタチ」にしようとしていました。

川村奈緒さん:
「ここがリビングで、奥がキッチンになる予定です。部屋数は少なくていいかなと2人で相談して。なのでリビングを広くとって、ゆっくり過ごせるようにしようかなと」

年末、新居が完成。引き渡しの日を迎えました。

積水ハウス松本支店・岡崎淳さん:
「これが2人の鍵になります。大事に管理してもらえれば」

川村さん、伊藤さん:
「ありがとうございます」

川村奈緒さん:
「徐々に実感が湧いてきました。あんまり実感湧かなかったけど」

2人の家づくりをサポートしてきたハウスメーカーの岡崎淳さん。

積水ハウス松本支店・岡崎淳さん:
「初めてお会いしたのは展示場で、お互いに緊張した中で打合せをした。私も2人の仲の良さを見ていくうちに、これは設計はこの人で、コーディネーターはこの人と。すごくすてきな家が絶対にできるなと、まだ決めてもらっていないのにそう思ったことが、私の記録に残っていました」

2人の関係を知った岡崎さんはー

積水ハウス松本支店・岡崎淳さん:
「制度を使えるのではないかと思って、事業者に問い合わせをして、とても大きな補助金をもらうことができて非常に良かったなと」

夫婦や子育て世帯を対象にした国の補助を受けられるように手配してくれました。(※現在は受付終了)

川村奈緒さん:
「最初に打ち合わせにいったとき、自分たちがどういうふうに思われるかなと少し怖かった。事情や制度のこともしっかり受け止めてくれて、普通の他の夫婦と同じように権利が受けられるように配慮してもらって、とてもうれしくありがたかった。人に恵まれて家づくりができた。岡崎さんと出会えたことも良かった。つくってもらった家を大切にしていきたい。ありがとうございます」

年明け、新居を訪ねるとー

アナウンサー:
「素敵な家ですね。すごくぴかぴか。きれい!」

引っ越しも終わり、新生活が始まっていました。

伊藤由香里さん:
「まだ慣れなくて、ずっとくるくる回っています」

マイホームの建築とともに2022年、川村さんはもう一つ大きな決断をしました。それは、両親へのカミングアウト。両親を気遣い、ずっと話せずにいましたが、自分の性や伊藤さんとの生活を思い切って打ち明けたのです。

川村奈緒さん:
「(両親は)びっくりしていて、同性の人と一緒にいることはよく思っていなかったのではないかと思う。でも家を建てると言ったとき、お父さんも来てくれて、一緒に話をして、初めてしっかり話をしたと思う。自分は孫も見せてあげられない、そこを一番気にしていたのですが、実際、話をしたらそのことはひとことも言わずに『幸せでいてくれたら、それが一番いい』とにかく、それしか言わなかった。自分がただ気にしすぎていたのかな。自分が幸せに楽しく毎日過ごすことが、一番親孝行になるのかなと思えたので良かった」

伊藤由香里さん:
「『幸せに2人でなっていってね』と言ってくれたので、うれしかったです」

2人で築くこれからの生活。「決意と感謝」の新年です。

川村奈緒さん:
「皆さんに感謝しながら、自分たちが楽しく幸せにここで暮らすことが一番感謝を伝えることにもなると思うので」

伊藤由香里さん:
「パートナーシップを取ってから大きな変化はそこまでなかったかもしれないが、家を建てるとか何か動こうとした時に制度は助けになったので、いろいろな地域に広まって、この制度を使える方々が増えてくると、もっと幸せが増えてくると思うので、もっと増やしてほしい」
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