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甘くまろやか…愛され100年「松田牛乳」 こだわりの“低温” 長く支持される理由は【長野発】

世代を超えて愛される牛乳です。今年、創業100年を迎えた長野県大町市の松田乳業。牛乳は給食の他、人気のスイーツにも使われ、遠く離れた広島県のスーパーの定番商品にもなっています。100年企業の強みを探りました。

児童たち:
「いただきます!」

給食の牛乳をごくごくと飲む児童。

3年生:
「一番好き、甘い」
「あと2本は飲める」

大町市の児童に人気の「瓶牛乳」。製造しているのは、地元・大町市の「松田乳業」です。キャッチフレーズは「富より健康」。瓶に描かれた幼い子どものキャラクターが「トレードマーク」です。「絵のモデル」とされているのが、3代目の松田邦正社長(75)。

松田乳業・松田邦正社長:
「これは私だという話ですけど、当時こんなに太ってなかったので、健康をイメージしてキャラクターを作ったんでしょうね」

社長はこう話しますが、写真と比べると、どこか似ているような気もします。

一日3500トンの牛乳を出荷する松田乳業。今年、創業100年の節目を迎えました。

松田乳業・松田邦正社長:
「実感はあまりないですね。ただ長く続けてきたなという気持ちはあるが、弊社で売るものは常においしくなければいけないという信念がお客さまに支持されてきたのではないかなと」

初代社長は佐久で教員をしていた祖父の正人さん。始まりは大正11年(1922)にさかのぼります。

松田乳業・松田邦正社長:
「(祖父が)教師を辞めて戻ってくるときに、牛を2頭連れて戻ってきた。犀川を渡るのに船に牛を載せたりとか、苦労して幾日もかけてこっちに来たらしい。そこからなんとなく牛を飼って搾った牛乳を街の人に分けたというか売ったというか、あの頃は病気がちの人しか飲めなかったみたい」

数頭の牛で細々と始まった商売でしたが、父・正一さんの代になると牛乳が一般にも定着。会社は徐々に大きくなり戦後、転換点を迎えます。学校給食の脱脂粉乳が牛乳に切り替わり、松田乳業は旧大町市の給食の牛乳を一手に引き受けたのです。従って多くの市民が子どもの頃から「松田牛乳」に親しんでいます。

50代:
「学校給食は松田牛乳。牛乳と言ったら松田牛乳になってしまうのかもしれない」

70代:
「松田牛乳以外、牛乳じゃない。給食に松田牛乳の瓶の牛乳が出てきたときのうれしさは…感動でしたよ、子ども心に」

牛乳は今も大北地域の全小中学校24校で飲まれています。

3年生:
「全然、飽きない。牛からとれたてみたいな味がして、おいしい」
「大町にいてよかった」

教頭(地元出身):
「おいしいですね、甘みが違います」

世代を超えて愛される理由は、工場に答えがありました。

松田乳業・松田邦正社長
「うちの会社はこのタンクで殺菌しています」

松田乳業がこだわっているのは殺菌方法。現代は120℃から130℃の高温で2秒ほど殺菌する「超高温殺菌」が主流ですが、松田乳業は65℃で30分、または85℃で15分の低温殺菌です。時間は倍以上かかりますが甘みが損なわれず、まろやかな口当たりに。これが長く支持される最大の理由と言えます。

松田乳業・松田邦正社長
「超高温殺菌の牛乳と弊社の低温殺菌の牛乳では、基本的に味が全然違う。われわれは、われわれの生きる道として、大手メーカーにはできないことをやっていけば生き残れるのではないかと、そうやってやってきた」

牛乳は「材料」としても重宝されています。安曇野市の洋菓子店「あづみの菓子工房彩香」では、ケーキなどの多くの商品に松田牛乳を使用しています。人気の「ジェラート」にも松田牛乳が入っていて、夏の看板商品を影で支えています。

駒ヶ根市の菓子メーカー「北川製菓」。工場には松田牛乳の紙パックが積まれています。松田牛乳を入れて作られているのは、マドレーヌやドーナツ。北川製菓では5年ほど前から松田牛乳を使用。焼き菓子との相性も良いようです。

北川製菓・守谷光司副社長:
「自然の甘さがあるので、とても商品とマッチしている。(客から)とてもしっとりしていて、甘さもちょうどよくておいしいと」

さらに販路は県外にも。厚い支持があるのが、信州から遠く離れた広島県です。広島、岡山、香川に店を展開するスーパーの「エブリイ」。「松田牛乳」を7年前から扱っています。

エブリイ商品開発事業部・貞森康子チーフマネージャー:
「全国各地、探しに探してスタッフがたどり着いたのが、松田乳業だった。地域に根差して地域の食を支えている、毎日、学校給食でも飲まれているくらい安心安全ピュアなものづくりをされている松田乳業さんの思いと、私たちの地域の皆さまにおいしいものをお届けしたいという思いがマッチした」

地道な産地開拓の中で松田牛乳と出合い、今や定番商品として45店舗で販売しています。

エブリイ商品開発事業部・貞森康子チーフマネージャー:
「売り切れるくらいの反響があって『次いつ入荷するの?』とか、リピーターの方がかなり多い商品」

松田乳業・松田邦正社長:
「遠く離れた広島でたくさん売られているって感じると、何とも言えない気持ち」

松田乳業もこの2年はコロナ禍により休校で給食がなくなったり、業務用の需要が落ち込んだりと、影響を受けました。牛2頭からスタートし、長く給食を支え、100年という節目を迎えた松田乳業。社長は厳しい状況が続いても、守るべきものは一つと話します。

松田乳業・松田邦正社長:
「おいしくていいものをとにかくお客さまにお届けすると、それが弊社の使命だと思っているので、それは今後どういうふうになろうと忘れずに。(会社は)願わくばエンドレスですよ、私の次の代、その次の代と続けていってもらえれば」


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