
「千歳」役・千葉ミハルさん
伝統芸能の継承です。長野県佐久市の神社で五穀豊穣などを願い、約260年続いてきた「式三番叟(しきさんばそう)」が2025年も開催されました。担い手不足の状況が続く中、性別や地域の枠を超え、伝統が受け継がれています。
佐久市春日にある宮ノ入地区。4月29日は、年に1度の大切な日。神社に人が集まってきました。
根神社の「式三番叟」。約260年前、江戸時代から続く神事で、五穀豊穣などを願い奉納されます。
笛や太鼓にあわせて舞うのは、白や黒の面をつけた役者たちです。役者は3人。そのうち2人は女性です。
全国各地で継承される無形文化財「式三番」。長い歴史で女性が舞台に立つことはありませんでしたが、深刻な担い手不足に直面しています。未来につなぐため、根神社の保存会は性別の壁を超えました。

根神社の「式三番叟」
「千歳」役の千葉さん(36)は、2025年で3回目の舞台です。安曇野市に住むプロの殺陣師。保存会がSNSで発信したSOSを見て名乗り出ました。
「千歳」役・千葉ミハルさん(36):
「子育てで俳優業を休んでいたけど、(SNSの)投稿を見て自分なら力になれるかもと思って、(保存会の)熱意に心打たれて参加しました」
神社式三番叟保存会・羽田聖一副会長(60):
「行き会うと女性で、とても驚いた。でも、とてもありがたかった。(三番叟は)“限界伝統芸能”。1人でも欠けたらできなくなってしまう」

「翁」役・佐藤利恵子さん
メインともいえる「翁」役は、地元で生まれ育った佐藤さん(57)。当初は裏方のつもりでしたが。
「翁」役・佐藤利恵子さん(57):
「『(翁役)どう?』って言われたとき『私でいいんですか!?』って言いました。不思議なことに戸惑いは一切なかったです」
この日、舞台にあがったのはお囃子を含め10人。うち5人が女性でした。
地元住民:
「一緒に踊りたくなった」
「女性も出ていて、かっこいいですね」
260年つないだ思いが、より幅広い人に届くことを願っています。
「翁」役・佐藤利恵子さん(57):
「たくさんの人に知ってもらい、やってみたいって思ってもらえるような神楽を奉納していきたい」