特集は女性猟師の挑戦。有害鳥獣対策をしてきた長野市の「地域おこし協力隊員」の女性が猟師となった。さらに、このほどジビエ料理専門店も開き地域に貢献しようとしている。
肉たっぷりの濃厚ソースを生パスタに絡めたボロネーゼ。こちらは大きな「レアチャーシュー」が乗った中華そば。
客:
「初めていただいたんですけど、おいしい」
いずれも評判の料理だが、メニュー表を見るとどれにも「鹿肉」の文字が。
2023年3月にオープンした長野市若穂保科のジビエ食堂「イノシカ」。主に地元で捕れた鹿肉を使った料理を提供している。
鹿肉のチャーシューを切る小野寺可菜子さん(35)。店のオーナーだ。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「牛と比べると煮込み方が倍くらい違うので、基本的に火を通すのは圧力鍋か低温調理で柔らかさを重視して」
店は口コミで評判となり、週末の昼時はほぼ満席だ。
鹿肉を程よく煮込んだカレーは―。
カレーを食べた客:
「とてもスパイシーで、シカのお肉も口に入れたとたんホロホロってやわらかくて、とてもおいしかった」
料理に腕を振るう小野寺さん。実は―。
客:
「ご主人が(シカを)処理したりするんですか?」
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「私がやります」
客:
「ええ!」
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「撃つ方は私で、旦那はわなかける方で。あまり撃ってないですけどね、まだ初心者なんで」
小野寺さん自身も狩猟免許を持つ猟師。自分で仕留めた獲物の肉を提供することもある。
こちちは「くくりわな」。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「ここが落ち、これが浮いてシュッと」
小野寺さんは岩手県出身。結婚後は埼玉県などに住んでいたが、コロナ禍での都会生活に息苦しさを感じ、2年前の1月、夫婦で若穂地区に移住。地域おこし協力隊員として有害鳥獣対策を担当してきた。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「長野を好きな理由として、豊かな自然があるというところが一番、私の中で大きい部分だったので、(有害鳥獣が)その自然が壊れてしまう原因になっているというところで、自分でもし何とかできることがあればという思いから、最初は有害鳥獣駆除をやろうと思い始めた」
シカやイノシシによる農林業の被害。2021年度の被害額は、県全体でおよそ7億3千万円に上った。
若穂地区も深刻で、小野寺さんも免許を取得して猟へ。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「(最初は)本当に銃を撃つことができるのか不安だったんですけど、私も『そうだよな、生きるためにこのシカを捕るんだよな』と一瞬の中で思うことがあって、自分の中でふに落ちたときにすっと行動に移せた部分もあるので、命をいただく行為をしてるんだなって実感は強くありました」
次第に強くなっていったのは「いただいた命を無駄にしてはいけない」という使命感。
小野寺さんは任期途中で協力隊員を辞め、空き家を改装して食堂をオープンさせた。
小野寺さんには心強い仲間がいる。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「お世話さまです。よろしくお願いします」
先輩猟師・越前屋圭司さん:
「これがシンタマ(脚の部位)で、こっちが外モモね」
「先輩猟師」の一人で、7年前、東京から地域おこし協力隊員として若穂に移住した越前屋圭司さん(49)だ。
越前屋さんは地元の加工施設「自美恵(じびえ)」の責任者。野生鳥獣の処理・加工を一手に引き受けている。
先輩猟師・越前屋圭司さん:
「ピンクのマーキングをしてあるのが、小野寺さんが捕った個体なんです」
食堂で提供する肉は全て越前屋さんの加工施設から仕入れたもの。
臭みやくせがないと評判だ。
中華そばを食べた客:
「(鹿肉と)言われなければ分からないと思う」
ボロネーゼを食べた客:
「(鹿肉が)ミートボールのようにやわらかくて、チーズとすごく合っていておいしい。もうちょっとクセがあるかなと思ったんですけど、全然クセもなくて」
鹿肉をダイレクトに味わう「ローストプレート」も人気―。
(記者リポート)
「やわらかい!臭みも一切なくて、かむたびに肉のうま味があふれ出します」
越前屋さんは自身に続き、若穂でチャンレンジする小野寺さんに期待を寄せている。
先輩猟師・越前屋圭司さん:
「(技術は)まだまだ未熟というか、それでもすごく研究熱心だし、捕ってそれをお肉にして最終的には料理にするというストーリー性があるのが、素晴らしいと思う。お客さんにも響くと思うので、今後がますます楽しみですね」
店先に並ぶ眼鏡ケースやコインケース。
小野寺さんは料理を提供するだけでなく、得意の裁縫で、手作りの革製品も販売している。
材料は駆除されたシカの皮。飯田市の業者から仕入れていて、特有の柔らかさと吸湿性があるそう。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「余すことなく、全部、お肉もそうですけど、革としても使っていきたいと思う」
おいしく食べ、身に着けて、命をつないでいく―。
女性猟師・小野寺さんの挑戦は始まったばかりだ。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「地域の特産として一端を担っているんだなというのを感じながら、自信を持って『若穂の名物です』と提供をしていきたい。地域のためにというと大げさになっちゃうが、地域の一員として盛り上げていければ」
肉たっぷりの濃厚ソースを生パスタに絡めたボロネーゼ。こちらは大きな「レアチャーシュー」が乗った中華そば。
客:
「初めていただいたんですけど、おいしい」
いずれも評判の料理だが、メニュー表を見るとどれにも「鹿肉」の文字が。
2023年3月にオープンした長野市若穂保科のジビエ食堂「イノシカ」。主に地元で捕れた鹿肉を使った料理を提供している。
鹿肉のチャーシューを切る小野寺可菜子さん(35)。店のオーナーだ。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「牛と比べると煮込み方が倍くらい違うので、基本的に火を通すのは圧力鍋か低温調理で柔らかさを重視して」
店は口コミで評判となり、週末の昼時はほぼ満席だ。
鹿肉を程よく煮込んだカレーは―。
カレーを食べた客:
「とてもスパイシーで、シカのお肉も口に入れたとたんホロホロってやわらかくて、とてもおいしかった」
料理に腕を振るう小野寺さん。実は―。
客:
「ご主人が(シカを)処理したりするんですか?」
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「私がやります」
客:
「ええ!」
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「撃つ方は私で、旦那はわなかける方で。あまり撃ってないですけどね、まだ初心者なんで」
小野寺さん自身も狩猟免許を持つ猟師。自分で仕留めた獲物の肉を提供することもある。
こちちは「くくりわな」。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「ここが落ち、これが浮いてシュッと」
小野寺さんは岩手県出身。結婚後は埼玉県などに住んでいたが、コロナ禍での都会生活に息苦しさを感じ、2年前の1月、夫婦で若穂地区に移住。地域おこし協力隊員として有害鳥獣対策を担当してきた。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「長野を好きな理由として、豊かな自然があるというところが一番、私の中で大きい部分だったので、(有害鳥獣が)その自然が壊れてしまう原因になっているというところで、自分でもし何とかできることがあればという思いから、最初は有害鳥獣駆除をやろうと思い始めた」
シカやイノシシによる農林業の被害。2021年度の被害額は、県全体でおよそ7億3千万円に上った。
若穂地区も深刻で、小野寺さんも免許を取得して猟へ。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「(最初は)本当に銃を撃つことができるのか不安だったんですけど、私も『そうだよな、生きるためにこのシカを捕るんだよな』と一瞬の中で思うことがあって、自分の中でふに落ちたときにすっと行動に移せた部分もあるので、命をいただく行為をしてるんだなって実感は強くありました」
次第に強くなっていったのは「いただいた命を無駄にしてはいけない」という使命感。
小野寺さんは任期途中で協力隊員を辞め、空き家を改装して食堂をオープンさせた。
小野寺さんには心強い仲間がいる。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「お世話さまです。よろしくお願いします」
先輩猟師・越前屋圭司さん:
「これがシンタマ(脚の部位)で、こっちが外モモね」
「先輩猟師」の一人で、7年前、東京から地域おこし協力隊員として若穂に移住した越前屋圭司さん(49)だ。
越前屋さんは地元の加工施設「自美恵(じびえ)」の責任者。野生鳥獣の処理・加工を一手に引き受けている。
先輩猟師・越前屋圭司さん:
「ピンクのマーキングをしてあるのが、小野寺さんが捕った個体なんです」
食堂で提供する肉は全て越前屋さんの加工施設から仕入れたもの。
臭みやくせがないと評判だ。
中華そばを食べた客:
「(鹿肉と)言われなければ分からないと思う」
ボロネーゼを食べた客:
「(鹿肉が)ミートボールのようにやわらかくて、チーズとすごく合っていておいしい。もうちょっとクセがあるかなと思ったんですけど、全然クセもなくて」
鹿肉をダイレクトに味わう「ローストプレート」も人気―。
(記者リポート)
「やわらかい!臭みも一切なくて、かむたびに肉のうま味があふれ出します」
越前屋さんは自身に続き、若穂でチャンレンジする小野寺さんに期待を寄せている。
先輩猟師・越前屋圭司さん:
「(技術は)まだまだ未熟というか、それでもすごく研究熱心だし、捕ってそれをお肉にして最終的には料理にするというストーリー性があるのが、素晴らしいと思う。お客さんにも響くと思うので、今後がますます楽しみですね」
店先に並ぶ眼鏡ケースやコインケース。
小野寺さんは料理を提供するだけでなく、得意の裁縫で、手作りの革製品も販売している。
材料は駆除されたシカの皮。飯田市の業者から仕入れていて、特有の柔らかさと吸湿性があるそう。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「余すことなく、全部、お肉もそうですけど、革としても使っていきたいと思う」
おいしく食べ、身に着けて、命をつないでいく―。
女性猟師・小野寺さんの挑戦は始まったばかりだ。
ジビエ食堂「イノシカ」・小野寺可菜子さん:
「地域の特産として一端を担っているんだなというのを感じながら、自信を持って『若穂の名物です』と提供をしていきたい。地域のためにというと大げさになっちゃうが、地域の一員として盛り上げていければ」