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PTAはもう限界? “9割以上賛同”中学校が「解散」決断 理由は「加入率低下」「難航する役員選び」

特集はPTAの在り方。PTAは保護者と教職員による学校運営を支援する集まり。ボランティアで運動会やバザーなどの手伝いや通学路の見守りなどをする。学校にPTAがあるのは当然となってきたが、近年、解散するケースが増え、長野県内でも松本市の中学校で解散が決まった。なぜ解散するのか、今後も広がるのか…。PTAも変わる年度末、背景と課題を探った。

松本市の筑摩野中学校。今年度の生徒数はおよそ700人で市内一の規模だ。そのPTAが、昨年末ある決断をした。

(PTA会長):
「今年度を持ってPTAは解散します」

県PTA連合会によると「解散」は、長野市の大岡小学校・中学校のPTAに次いで県内2例目だ。

大岡小・中学校のケースは児童・生徒が減り保護者が連続して役員になるなど、負担が増したことが主な要因だった。昨年度で解散、地域住民を巻き込んだ新たな活動を模索中だ。

筑摩野中は、やや事情が異なる。今回、会長と校長にインタビュー取材を要望したが、「地域の動揺が収まっていない」として断られ、話だけ聞くことができた。

二人によると、解散の主な理由は二つ。

解散理由(1)『加入率低下』

2020年、保護者から次のような声が上がった。

(保護者)
「PTAへの加入は任意のはず。意思表示が必要だ」

これを受けて、PTAは昨年度、「加入は任意」とした上で、書面で意思確認をした。

すると、昨年度の加入率は9割以上だったが、今年度は8割ほどに低下。学年によって差があり2年生は7割程度、6割近い学級もあった。

解散理由(2)『難航する役員選び』

数年前からPTAの役員決めが難航。共働きなどを理由に断る保護者が相次いでいた。

PTAは「このまま続けるのは困難」として2022年10月、解散と新たな有志団体を設けることへのアンケートを実施。9割以上が賛同したことから2022年12月、臨時総会で解散を決めた。

(PTA会長)
「他に良案があれば存続させたかったが、このままでは組織として機能しないと思った。保護者にとっては前向きな決断をした。ただ伝統をつなぐことができず、申し訳なさも感じている」

新年度からは保護者や地域住民で有志の団体をつくり、引き続き中学校を支援することにしている。

地域ではさまざまな声が上がっている。

小・中学生の保護者:
「解散までする必要あったのかなというのが一番の印象。(PTAに)入ってる人と入ってない人の不平等さがあることから、やめちゃえやめちゃえという話になったというのがあったので」

小学生の保護者:
「面倒くさいからやらないのも良くないと思うので、みんなが負担がそこまでない形で何かできるようになっていけばいいな」
「(解散は)大いに賛成。PTAの内容自体が不明確すぎるというのが一番。何のためにしてるかと聞いても『例年していたので』が当たり前になっているので、意味がない」

60代(PTA役員経験あり):
「びっくりしました、正直。やって当たり前というか、自分のためにもなるし。学校のため、子どものためだけじゃなくて」

60代(PTA会長経験あり):
「行事をやるにしても、どうやって親たちを集めるのか、先生たちの負担も増えてくる。それで行事が減ってしまうのは、子どもたちにマイナスになっちゃうんじゃないか。『なり手がないからPTAやめます』はクエスチョン」

事情に詳しい専門家は次のように指摘する。

信州大学教職支援センター・荒井英治郎准教授:
「一つは感染症の拡大(の影響)が一番象徴してますけど、保護者の皆さんもお仕事をはじめ毎日の生活、これを維持するのに精いっぱいのご家庭ばかり。そのような余力がない中で学校の教育活動に関わっていくこと自体のハードルが、そもそも上がってきているのではないかという気はしてる」

荒井准教授は、コロナ禍になる前からPTA活動には疑問の声があったと言う。

信州大学教職支援センター・荒井英治郎准教授:
「任意加入であるにもかかわらず、強制的な部分があるのではないかというところと、役員という立場に関してもその決め方について理不尽な部分があるのではないか。さまざまな課題が運営面では指摘されています」

近年、全国でもPTA解散が続いている。

東京都立川市。全校児童およそ550人の市立柏小学校も…。

市立柏小学校PTA・吉沢康貴会長:
「PTAを解散する決断をしました。今の時代にPTAという組織は合っていないと思います。活動として土日も使いますし、共働き世代になると時間を取ることが難しい」

市立柏小学校PTA・吉沢康貴会長:
「『PTA室』というのを外して。一通りのものは片付けをして、来年度のPTA以外の活動で使うものだけが残ってる」

整理された元PTA室を案内してくれた柏小PTAの吉沢康貴会長(40)。5年、会長を務める中、活動が惰性になっていること、役員選びで協力が得られにくくなっていることを痛感した。

そこで去年夏、保護者にアンケートを実施。98.7パーセントが解散に賛同したことから今年度での解散を決定。小学校も受け入れた。

柏小学校・田中義典校長:
「かなり無理してやってるのであれば、保護者の負担は緩和できるんじゃないかと思う。教育活動や行事で保護者の力を借りたいなというときは、学校からボランティアの要請をして募るという形で進めていこうと思う」

4月からPTAによる通学路の見守りなどがなくなる。吉沢さんたちは「フィードバック委員会」を設けて、解散の効果や影響を検証していくことにしている。

市立柏小学校PTA・吉沢康貴会長:
「なくなって本当に必要なものって見えてくるかもしれない。これが妥当だったのか妥当じゃないのか、われわれが解散を決めた中で責任として(検証を)やっていこうと思う」

PTA解散は県内でも広がるのだろうか。松本市の臥雲市長は、筑摩野中PTAの決断を前向きに捉えている。

松本市・臥雲義尚市長:
「もともと任意のボランタリーな組織ということで、仕切り直しをしようというのが、私は今回の解散だと思っている。今の状態を惰性で続けていくよりは、いずれプラスになってくると受け止めている。

信州大学教職支援センター・荒井英治郎准教授:
「(解散の動きは)今後、拡大していく傾向はあるのではないかという気はしている。拡大していくものを私たちがどういうものとして捉えていくのか、受け止めが非常に大事。子どもの笑顔のために、時間はかかると思うが『関わりやすさ』と『関わりがい』、この二つを両立できるような活動を模索していくことが求められている気がする」
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