
長野県安曇野市の男性が、脳性まひの娘との日常を一冊の本にしました。葛藤を乗り越え、娘の成長を見守ってきた父親による4コマ漫画とエッセー。学びや気づきが詰まっています。
2月、発売された「ゆかりんは四つ葉のクローバー」。
主人公のゆかりんは、脳性まひのため体が思うように動かせません。
(4コマ漫画『発達って何だろう』より)
ゆかりん6歳の誕生日。
母:
「ローソクの火を消してね」
しかし、「吹く」ということが難しい。でもがんばるゆかりん。
ただ、つばが飛ぶだけ……。
それでもがんばるゆかりん。なんとかなるもんだ。
ゆかりん:
「フンッ!」
鼻息で見事に消した!
3月9日、安曇野市―。
著者の原孝雄さん(65)。
元教師で、現在はNPOの副理事長です。
「ゆかりん」こと次女・由香里さんは現在36歳。自力では歩けず、意思は身振り手振りで伝えます。
父・孝雄さん(65):
「よっしゃ、もうじきだ」
母・千賀子さん(65)と一緒に由香里さんを支える暮らし。孝雄さんはそれを漫画で描き一冊の本にしました。
父・孝雄さん:
「いつも彼女から元気をもらっているから、もうひと踏んばりしないといけないなと」
1986年6月に生まれた由香里さん。生まれて間もなく脳性まひと診断されました。
父・孝雄さん:
「(脳性まひとわかったときは)何も…(頭の中が)真っ白でしたね。どういうふうに育っていくんだろう、そういう不安がすごくあって」
母・千賀子さん(65):
「そこで泣いている由香里がいても抱けない。メンタルがまずいことになっているって感じでしたけど」
なぜ、うちの子が…。
2人は現実を受け入れられずにいました。
それを変えたのは、由香里さんをかわいがった祖父の故・正邦さんです。
母・千賀子さん:
「もう孫ぞっこんで。自分の体におぶって、どこにでも。銀行、花屋さん、近所の店でも、どこでも連れていってくださる姿を見て、私は一体、何やっているんだと、少しずつ気持ちが動いていって」
「障害があっても大勢の人と関わらせたい」と、孝雄さんは行政に掛け合い由香里さんを通常の幼稚園に入園させました。
運動会、由香里さんには鉄棒につかまるという特別種目が用意されました。
父・孝雄さん:
「うちの子だけやっぱ違うんだな、できないんだなとか。なんか恥ずかしいなって思いもあったんですよ。だけど本人は一生懸命(鉄棒に)つかまるじゃないですか。それ見てると、違うなこれはと。自分の子なんだって、そういう思いがグッと強くなりましたね」
教師として働く一方、孝雄さんは由香里さんのような子どもたちのためにと2008年、NPO法人「夢の実」を立ち上げ預かりサービスなどを始めました。
3年後には通所の作業所もスタート。養護学校の高等部を卒業した由香里さんも「夢の実」の作業所に通うようになりました。
安曇野市穂高「夢の実プラコ」―。
父・孝雄さん:
「人と触れ合うことも好きなので、そういったことができればいいかなと。帰ってきてね、袋から給料袋出して『給料もらったんだね』って言うと、すごくうれしそう」
若い頃はプロの漫画家を目指していたという孝雄さん。
父・孝雄さん:
「由香里と接していると、いろんな発見があるんですよ。それは本当に面白いことだったり、こんなことができるんだとか」
3年ほど前からこれまでの経験や由香里さんの日常を得意の漫画にし、SNSで発表してきました。
(4コマ漫画『ゆかりんお菓子を食べる』より)
事業所でバレンタインのチョコを作って持ってきた。
ゆかりん:
「あい!」
とうちゃんにプレゼントした。
父:
「ありがとう」
ゆかりん:
「ジーー」
父:
「えっ!」
父:
「やっぱり食べるんかい!」
結局チョコは全部ゆかりんのお腹の中へ…。
(4コマ漫画『相手を思いやる会話』より)
両手を上げるポーズは「みんなと何かをやった」というサインだが…。
ゆかりん:
「あ~い!」
この「何か」が曲者だ…。
父:
「みんなと遊んできたんだね…」
ゆかりん:
「あい……あい……」
急に声が小さくなるが…
ゆかりん:
「あい!あい!あい!あい!」
アピールは続くのだ。
父:
「えっ?なに?」
「何か」がちがうのか。
「何か」とはなんだ?
父:
「そうだ!散歩したんだ!」
ゆかりん:
「あーい!」
ゆかりんのサインを適当にあしらってはならないのだ。彼女にとっては、大切な会話なのだから。
自費出版した「ゆかりんは四つ葉のクローバー」は、書きためた漫画にエッセーを加えてまとめたものです。
父・孝雄さん:
「(タイトルの意味は?)四つ葉のクローバーって幸福のシンボルなんだけど、元々は三つ葉のクローバーから変異したものじゃないですか。由香里も障害を持って生まれて人とは違うかもしれないけど、われわれに幸せを与えてくれるっていうことで、四つ葉のクローバーに」
「ゆかりん」と過ごした36年。本に託した原さん夫婦の思いは…。
母・千賀子さん:
「私も障害を受け入れて元気になるまでに相当時間がかかったので(介助する人が)孤立しないように、一人にならないように。やっぱり家族一丸となってって感じで、頑張りすぎないでやってもらいたいなと」
父・孝雄さん:
「娘を通して前向きに明るく生きていってほしい。本を通してそういうものを感じてほしいですし、(障害のある人との)関わり方というか、そういうものも読み取っていただければありがたい」
【スタジオ】
「ゆかりんは四つ葉のクローバー」は安曇野市や松本市の書店で扱っていて通販サイトでも購入できます。税込1100円・東洋出版
2月、発売された「ゆかりんは四つ葉のクローバー」。
主人公のゆかりんは、脳性まひのため体が思うように動かせません。
(4コマ漫画『発達って何だろう』より)
ゆかりん6歳の誕生日。
母:
「ローソクの火を消してね」
しかし、「吹く」ということが難しい。でもがんばるゆかりん。
ただ、つばが飛ぶだけ……。
それでもがんばるゆかりん。なんとかなるもんだ。
ゆかりん:
「フンッ!」
鼻息で見事に消した!
3月9日、安曇野市―。
著者の原孝雄さん(65)。
元教師で、現在はNPOの副理事長です。
「ゆかりん」こと次女・由香里さんは現在36歳。自力では歩けず、意思は身振り手振りで伝えます。
父・孝雄さん(65):
「よっしゃ、もうじきだ」
母・千賀子さん(65)と一緒に由香里さんを支える暮らし。孝雄さんはそれを漫画で描き一冊の本にしました。
父・孝雄さん:
「いつも彼女から元気をもらっているから、もうひと踏んばりしないといけないなと」
1986年6月に生まれた由香里さん。生まれて間もなく脳性まひと診断されました。
父・孝雄さん:
「(脳性まひとわかったときは)何も…(頭の中が)真っ白でしたね。どういうふうに育っていくんだろう、そういう不安がすごくあって」
母・千賀子さん(65):
「そこで泣いている由香里がいても抱けない。メンタルがまずいことになっているって感じでしたけど」
なぜ、うちの子が…。
2人は現実を受け入れられずにいました。
それを変えたのは、由香里さんをかわいがった祖父の故・正邦さんです。
母・千賀子さん:
「もう孫ぞっこんで。自分の体におぶって、どこにでも。銀行、花屋さん、近所の店でも、どこでも連れていってくださる姿を見て、私は一体、何やっているんだと、少しずつ気持ちが動いていって」
「障害があっても大勢の人と関わらせたい」と、孝雄さんは行政に掛け合い由香里さんを通常の幼稚園に入園させました。
運動会、由香里さんには鉄棒につかまるという特別種目が用意されました。
父・孝雄さん:
「うちの子だけやっぱ違うんだな、できないんだなとか。なんか恥ずかしいなって思いもあったんですよ。だけど本人は一生懸命(鉄棒に)つかまるじゃないですか。それ見てると、違うなこれはと。自分の子なんだって、そういう思いがグッと強くなりましたね」
教師として働く一方、孝雄さんは由香里さんのような子どもたちのためにと2008年、NPO法人「夢の実」を立ち上げ預かりサービスなどを始めました。
3年後には通所の作業所もスタート。養護学校の高等部を卒業した由香里さんも「夢の実」の作業所に通うようになりました。
安曇野市穂高「夢の実プラコ」―。
父・孝雄さん:
「人と触れ合うことも好きなので、そういったことができればいいかなと。帰ってきてね、袋から給料袋出して『給料もらったんだね』って言うと、すごくうれしそう」
若い頃はプロの漫画家を目指していたという孝雄さん。
父・孝雄さん:
「由香里と接していると、いろんな発見があるんですよ。それは本当に面白いことだったり、こんなことができるんだとか」
3年ほど前からこれまでの経験や由香里さんの日常を得意の漫画にし、SNSで発表してきました。
(4コマ漫画『ゆかりんお菓子を食べる』より)
事業所でバレンタインのチョコを作って持ってきた。
ゆかりん:
「あい!」
とうちゃんにプレゼントした。
父:
「ありがとう」
ゆかりん:
「ジーー」
父:
「えっ!」
父:
「やっぱり食べるんかい!」
結局チョコは全部ゆかりんのお腹の中へ…。
(4コマ漫画『相手を思いやる会話』より)
両手を上げるポーズは「みんなと何かをやった」というサインだが…。
ゆかりん:
「あ~い!」
この「何か」が曲者だ…。
父:
「みんなと遊んできたんだね…」
ゆかりん:
「あい……あい……」
急に声が小さくなるが…
ゆかりん:
「あい!あい!あい!あい!」
アピールは続くのだ。
父:
「えっ?なに?」
「何か」がちがうのか。
「何か」とはなんだ?
父:
「そうだ!散歩したんだ!」
ゆかりん:
「あーい!」
ゆかりんのサインを適当にあしらってはならないのだ。彼女にとっては、大切な会話なのだから。
自費出版した「ゆかりんは四つ葉のクローバー」は、書きためた漫画にエッセーを加えてまとめたものです。
父・孝雄さん:
「(タイトルの意味は?)四つ葉のクローバーって幸福のシンボルなんだけど、元々は三つ葉のクローバーから変異したものじゃないですか。由香里も障害を持って生まれて人とは違うかもしれないけど、われわれに幸せを与えてくれるっていうことで、四つ葉のクローバーに」
「ゆかりん」と過ごした36年。本に託した原さん夫婦の思いは…。
母・千賀子さん:
「私も障害を受け入れて元気になるまでに相当時間がかかったので(介助する人が)孤立しないように、一人にならないように。やっぱり家族一丸となってって感じで、頑張りすぎないでやってもらいたいなと」
父・孝雄さん:
「娘を通して前向きに明るく生きていってほしい。本を通してそういうものを感じてほしいですし、(障害のある人との)関わり方というか、そういうものも読み取っていただければありがたい」
【スタジオ】
「ゆかりんは四つ葉のクローバー」は安曇野市や松本市の書店で扱っていて通販サイトでも購入できます。税込1100円・東洋出版