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「伐木」日本一!信州の“チェーンソーマン” 担い手減少の林業界…期待の若手

特集は、チェーンソーの技術で日本一に輝いた24歳の若者です。担い手が減る中、自分の姿を見て林業を目指す仲間が増えればと、世界大会に向けて練習を重ねる「リアルチェーンソーマン」を紹介します。

1月20日、長野県売木村の山林に響くチェーンソーの音。チェーンソーを自在に操り、木を伐採したのは…

高山亮介さん:
「『チェーンソーマン』です」

飯田市に本社を置く矢守産業の高山亮介さん(24)。今、チェーンソーの「悪魔」が活躍する漫画がヒットしていますが、高山さんの活躍の場は山の中。チェーンソーを手に日々、木と向き合っています。

高山亮介さん:
「いろんな樹種、いろんな傾き方の木があるので、そういった木を自分の狙った方向に倒せるのがすごい面白みでもあるし、チェーンソーだったり、そういったものをいじれるのが楽しい」

高山さんは松本市出身。林業を目指すきっかけは、高校生時代に見た「動画」でした。

高山亮介さん:
「もともと機械系が好きで、あと自然の中で働きたいなと思ってて、テレビとかで『林業特集』、YouTubeでチェーンソーの大会の様子が見られたので、チェーンソーで木を切るというのが、すごくかっこいいなと思って…」

県林業大学校に進んで基礎を学び、森林整備や土木工事を手掛ける現在の会社に就職。現在、5年目です。チェーンソーの重さはおよそ7キロ。今でこそ扱いも慣れたものですが、最初は…。

高山亮介さん:
「重くてこんな感じには使えなかった。ずっと筋肉痛の状態が続いたりして…」

この日は売木村の民有林でヒノキの「間伐」をしました。木々の生え具合や成長に応じて、一部の木を間引き、林全体の成長を促す大事な作業です。

高山亮介さん:
「これ切ります」

木を切って倒す「伐倒」。まず倒したい方向に「受け口」と呼ばれる切り込みを入れます。反対側には水平に切り込みを入れ、「クサビ」を打ち込みます。こうすると木の重心がずれ、倒したい方向に木を倒すことができます。

高山亮介さん:
「面白いですね。狙ったところに倒れるとすごく気持ちいい」

高山さんは社内で一番の若手。期待を寄せられています。

10年先輩・松村祐さん:
「安全っていうことを意識してやってくれるので、いろんな仕事を任せやすい。こいつに頼めば安全にやってくれる、うちのエースですね」

高山亮介さん:
「やばい、プレッシャーが」

長野は森林面積全国3位のいわば「森林県」。しかし、林業就業者はこの10年間で4割近くも減り、現在、1400人余りです。(2010年2572人→2020年1449人、約4割減)

新規就業者も半減しました。高山さんは作業に危険が伴うことが一番の要因とみています。

高山亮介さん:
「伐倒木1つで人の命が失われてしまったりするので、危険な作業をいかに安全にこなせるかがキーになると思う」

「安全かつ正確な技術」を受け継ぎ伝えていくため、高山さんは「大会」に出場しています。

2022年5月、青森県で開かれた「日本伐木チャンピオンシップ」。安全作業の向上や人材育成を目的に2年おきに開催されています。高山さんは2回目の出場。「伐倒」や「枝払い」など5種目でチェーンソーの技術を競い合いました。

その結果、24歳未満のジュニアクラスでみごと優勝を果たしました。

高山亮介さん:
「念願の優勝はうれしかったけど、24歳以上のプロフェッショナルクラスがあるけど、そのクラスの中だと6位だったので、もっともっと練習して次の大会ではプロフェッショナルクラスで優勝できるように頑張りたい」

こちらは会社が用意した練習場。エストニアで開かれる4月の世界大会への出場が決まり、練習を重ねています。

「丸太合わせ輪切り」は、地面に対して7度傾いた2本の丸太を上下から垂直に輪切りにします。

1ミリでもずれて段差ができると減点になるため、正確さが求められます。高山さんの目標は190点。(最高は約200点)

高山亮介さん:
「下から入れてるチェーンソーの角度と、上から入れてる角度がちょっとずれててこれだけの段差(3ミリ)になり低い点になっちゃうので、それをしっかりと合わせるようにすれば(目標の)190点はいきそうなので、練習しないとマズいですね」

1回目は自己採点で184点。しかし、2回目は…

高山亮介さん:
「あんまり発表できない点数ですね。168点になってしまいました…」

「枝払い」は丸太に差し込まれた30本の枝を切り払う種目。5ミリ以上の切り残しや切りすぎは20点減点です。

結果はペナルティなしの444点!

高山亮介さん:
「(枝払いは)最後の5種目なので、この競技で逆転する選手もすごくいる。すごく満足してます」

高山亮介さん(電話):
「あけましておめでとうございます」

練習の合間に電話した相手は、青森県の森林組合連合会の役員・秋田貢さんです。

林業大学校時代、青森で技術を教わったことがあり、高山さんのいわば「師匠」。今も動画を送って助言してもらっていて1月末には直接指導を受けるため、青森に足を運ぶ予定です。

高山さんの「師匠」・秋田貢さん(電話):
「(高山さんは)まだまだ伸びる選手だと思う。メダル狙える技術とポジションにあると思う」

高山亮介さん:
「やる気が出てきちゃいましたね。メダル持って帰って結果を残すことが一つの恩返しだと思うので、何とか上位に食い込めるように練習します」

担い手不足が大きな課題の林業。安全・正確な技術をマスターし大会などで活躍する姿を見せることで、林業を志す人が増えればと高山さんは意気込んでいます。

高山亮介さん:
「(世界大会で)メダルをまだ日本人取れてないので、何とか日本人初のメダルを取って帰ってきたい。僕の姿を見て大会に出たいとか、林業をやりたい人たちが増えてきてくれたらうれしい」

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