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リンゴにキノコ 注目度UPの信州発「ビーガンレザー」 動物性の材料使わず環境にも配慮 

信州産の「ビーガンレザー」です。「ビーガン」とは肉、魚、乳製品など動物由来の食べ物を口にしない人を指す言葉で、「ビーガンレザー」は動物性の材料を使わない革・レザーのことです。近年、環境への配慮から、海外のファッションブランドや自動車メーカーも取り入れているビーガンレザー。実は長野県内でも開発が進んでいます。材料はリンゴとキノコです。

ハンドバッグに、シンプルなデザインのカードケース。一見、普通の革製品に見えますが、素材には信州らしい農産物が使われています。

「りんごレザー」を発案・伊藤優里さん:
「裏は綿でできていて、表のコーティングの部分に『リンゴ』が混ざっている」

リンゴを使った合成皮革、その名も「りんごレザー」。発案者は長野市で雑貨やバッグの企画・販売をしているSORENAの伊藤優里さん(38)です。

「りんごレザー」を発案・伊藤優里さん:
「環境とかいろんな問題がクローズアップされてきた中で、(展示会で)パイナップルレザーやバナナクロスだったり、食品由来のマテリアルを目の当たりにした。長野で『りんごレザー』は絶対できると思って」

近年、動物の皮ではなく、より環境への負荷が少ない植物由来の材料を使う「ビーガンレザー」が注目されています。

こちらは飯綱町の農産物加工施設。ここに「りんごレザー」の「もと」があります。

スタッフ:
「これはシードルの“搾りかす”です」

飯綱町で収穫されるリンゴは年間8000トン。その2割ほどが町内の事業所などでジュースやシードルに加工されます。その際に出る搾りかす・残さは、最盛期で1日に1トン以上に上ると言われています。

「りんごレザー」を発案・伊藤優里さん(飯綱町YouTubeより):
「『りんごレザー』を通じて家族や友達、ご近所さん、地域みんなを救えるかもしれない」

2022年2月に開かれた飯綱町のビジネスコンテスト「いいづな事業チャレンジ2022」。伊藤さんは海外の植物由来の革製品をヒントに、大量の残さを「りんごレザー」にするアイデアを発表。準グランプリに輝き、町と連携して事業を進めることになりました。

飯綱町産業観光課・渋沢陽一さん:
「(残さは)これまでは家畜の飼料として活用したり、たい肥とか、あとはごみとして処理。新しい製品の原料として使えるのであれば、付加価値がつく」

まず、町が集めた残さを丸2日乾燥させます。それを、専用の機械で粉末にします。仕上がった粉末は、浜松市の合成皮革のメーカーへ。

通常の合成皮革は、布にポリウレタンや塩化ビニルなど、石油由来の樹脂を塗り重ねて作りますが、「りんごレザー」は樹脂にリンゴの粉末を混ぜて作ります。

(記者リポート)
「こちら『りんごレザー』なんですが、非常に柔らかくて、触った感じはとても滑らかですね。一見すると、どこにリンゴが使われているのか分からないです。気になるにおいですが…リンゴのにおいはしません」

柔らかく耐久性もあるという「りんごレザー」。これを伊藤さんの会社がバッグやカードケースにし、12月中にもテスト販売を始める予定です。

「りんごレザー」を発案・伊藤優里さん:
「本革に比べれば、ぜんぜん軽い。汚れてもさっとふけばきれいになる」

目標は特産品化です。

「りんごレザー」を発案 SORENA代表・伊藤優里さん:
「地域のごみじゃなくて、財産としてリンゴの残さを形として記念品として残すことができる。『今治タオル』とか『栃木レザー』みたいな立ち位置を目指していければ」

飯綱町産業観光課・渋沢陽一さん:
「リンゴの町・飯綱町を『りんごレザー』を通して全国の皆さんに知っていただけたらうれしい」

続いて紹介するのも信州らしいレザーです。白く艶のある革のような生地。帽子やサンダルに加工できます。生地の材料は、キノコから生える菌糸。それを集めて革のように加工したものを「マッシュルームレザー」と呼びます。

マイセルジャパン・乾馨太社長:
「触り心地はすごく滑らかで、既存の革製品とは違う質感で、また新しい肌触りというか、そういうのを楽しんでもらえるんじゃないかな」

開発を進めているは、キノコ栽培機器の輸出などを手掛ける会社の経営者・乾馨太さん(40)です。

マイセルジャパン・乾馨太社長:
「キノコって今まで“食”という分野にしか注目されてないんですけど、これからは“衣”と“住”に、ビジネスの可能性も広がる、おもしろい素材なんですよ。しかも広がっていくほど、SDGsに沿った理想的な社会に」

まず大量の菌糸を培養して集め、特殊な加工を施し耐久性のある革のような生地にします。動物の飼育に比べ環境への負荷は少なく、石油由来の樹脂は使いません。

2022年7月、乾さんは製造の特許を持つシンガポールの企業などと共同で、マッシュルームレザーの開発・販売を行う会社「マイセルジャパン」を設立。今は開発段階ですが、2023年夏ごろまでに小諸市に工場を造り生産を始めたい考えです。

マイセルジャパン・乾馨太社長:
「使ってもらう人には人間が自然と共存して生活してるんだよというのを身近に感じてもらいながら、そういう商品であってほしいな」

リンゴやキノコから作るレザー。信州らしさとSDGsを発信する注目の新素材です。
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