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"日本最速”の野菜農家!? 陸上短距離で五輪めざすも引退 挫折の経験生かし…故郷で子どもたちを指導

元スプリンターの農家です。オリンピックも目指した陸上の短距離選手が引退し、地元・長野県川上村に戻って2年。農業に励むかたわら、挫折も味わった競技経験を生かし、子どもたちへの指導を始めています。

10月、川上村―。

川上真弥さん:
「夏は朝2時から仕事するので、夕方6時ぐらいまで仕事することがいろいろある」

白菜の収穫に精を出す川上真弥さん(29)。実は2020年に引退した元短距離選手。走れば、おそらく「日本最速」の野菜農家です。

川上真弥さん:
「競技やっている時は休養する時間もしっかり取っていたんですけど、これ(農業)はしっかり取れないので、そこは少し違います」

11月21日、川上村体育館。農業のかたわら、子どもたちに運動を教えるトレーナーとしての姿も。

川上真弥さん(指導):
「こういうふうにタイミングをうまく合わせると、びよーんって飛ぶことができます」

二足のわらじで奮闘中です。

小さい頃は野球少年だった川上さん。父が短距離、母が中・長距離の実業団選手だった影響で、高校では陸上部へ。走りには自信もありました。

川上真弥さん:
「『走る』ことで一番になってみたいなと思って、陸上をやろうって思いました」

「高校デビュー」でしたが、めきめきと実力をつけ県大会の400メートルで優勝、インターハイに出場しました。大学には陸上で推薦入学。活躍が期待されましたが…。

川上真弥さん:
「大学は高校のタイムも出せなくて、うまく走れなかった時期が多かったですね」

おごりやこだわりから生じたスランプ。結果が出せないまま時間が過ぎていきました。

川上真弥さん:
「『自分は勝てるだろう』という過信をしていました。自分の弱さだったり、足りない部分を認められなかったなって思っています」

大学4年になってから、思い切って種目を400メートルから100メートルに変更。結果を出せない自分を認め、再スタートするための決断でした。練習は、こだわってきた「量」重視から「質」重視へ。練習時間を半分にし、その分を体のケアや休息に充てました。すると…

川上真弥さん:
「すぐ自己ベストも出たり、そのままの勢いでインカレとかもリレーの候補選手になったり、国体の長野県代表で出場したりとかもしました」

実業団時代は、オリンピックに出場したケンブリッジ飛鳥選手とも競い合いました。ベストタイムは10秒46。自身も東京五輪出場を目標に定めましたが、アスリートとしての「限界」を感じ、引退を決意しました。

川上真弥さん:
「(2020年シーズン前に)同い年のケンブリッジ飛鳥選手と50日間一緒に合宿をした。五輪でメダルを取る選手の日常は、本当にすごかった。ずっと陸上、スポーツ、何があってもそれでした。その中で自分の弱さだったり、本気さだったりが欠けていたなって改めて気づいた。彼と距離を縮めることはできないと思って、僕はもう競技はやめようと思いました」

農業は2021年春から本格的に始めました。

川上真弥さん:
「ずっと小さい頃から仕事と言えば、このレタスや白菜の農家なので、それをしっかりとやってみようと思って。自分の思うように、やりたいようにできるところも魅力かなと思います」

父・真人さん:
「継いでもらって楽にはなったんですが、いっぺんにはなかなかね。1年や2年で覚えられるものじゃない」

「走りのエキスパートが村に戻ってきた」ということで…

川上真弥さん(指導):
「最初、失敗してもいいからね、次できるように」

川上さんは公民館や中学校に頼まれ、2021年から子どもたちを指導しています。この日は小学生の「スポーツトレーニング教室」。

川上真弥さん:
「自分の競技を振り返って、あの時これを知っていればとか、こういう運動をしていればと思う時がすごいあって、伝えることは伝えてみようと思って」

川上真弥さん(指導):
「(体を)まっすぐにするの忘れちゃったとかあるよね。それに気づけたら、次はできるよね。自分がミスっちゃったってことに気が付けるのが大事」

この日のテーマは跳ねる動作。川上さんの指導には、もがきながらも最後まで走り切った現役時代の経験が生かされています。

川上真弥さん:
「できないことが恥ずかしいことだったり、情けないことではなく、それができるようになったらまた新しい強い自分になれる。こういう繰り返しを小学校の頃から無意識に挑み続ける姿勢を大事にさせてあげたい。失敗してもそれを認めてあげる声かけを、すごく大事にしてます」

最後には川上さんと競走!

「きゃー、はやい!」

参加した児童:
「難しかったところもあるけど楽しかった」
「(どんなことを教わった?)ジャンプするときに足を全部つけて手をつける、体をまっすぐにする」
「(先生と競走してどうだった?)速すぎて、しんだ」

保護者:
「なかなか教えてもらう機会ないのでありがたい。いろんな競技につながるようになっていけばいいな」

元スプリンターの野菜農家。川上さんは子どもたちに、かつての自分を重ねながら熱心に指導しています。

川上真弥さん:
「(農業との両立は)大変と感じることもあったんですけど、それ以上に子どもたちがどんどん成長していく、伸びていくとか、僕自身の生きがいになったりもするので、それを多くの人たちに共有しながら一緒にやっていけたらいいなと思います」
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