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「信州のヘーゼルナッツ」に熱視線 国産の95%が信州産 有名パティシエも「世界で戦える素材」と絶賛

信州のヘーゼルナッツです。8年前、長野市の男性が栽培を始めてから県内に広がり、今や有名パティシエも注目する食材に。第一人者の男性は「信州の特産品に」と意気込んでいます。

おいしそうな、やわらかアイス。長野市上駒沢の「しぼりたて生アイスの店ふるフル」の品です。

一番人気は…

客:
「ヘーゼルナッツ!」
「ヘーゼルナッツが人気と聞いたので。すごい、ヘーゼルナッツが濃厚」

アイスに使われているヘーゼルナッツ、実は「地元産」です。

客:
「地元でナッツが取れるなんて知らなかったので、すごい」

店の裏に畑が広がっています。

ふるフル・岡田浩史さん:
「これがヘーゼルナッツの木です。なかなか日本で見た方はいらっしゃらないと思うんですが、無事、8年前に植えて3年目からだんだんと実がなってきている」

ヘーゼルナッツはお盆過ぎから9月にかけて実をつけます。今、枝についているのは雄花。春になると雌花も咲き、また実をつけます。

ふるフル・岡田浩史さん:
「当初は何もわからない状態だったので、花がいつ咲いているかも分かってなくて」

店のオーナーでヘーゼルナッツの生産者、岡田浩史さん(62)。栽培を思いついたのは、仕事でイタリアを訪れた時のことです。岡田さんは長く食品加工機械の輸入商社に勤務。世界を飛び回る中、イタリア・トリノで見たことのない果樹園を目にしました。

ふるフル・岡田浩史さん:
「雪の中に育っている木が全く見たことのない木だったんですね。360度全部、その木が生えていて、通訳に『この木は何だい?』と尋ねたら、『これが世界で一番おいしいと言われるヘーゼルナッツの木です』と言われた時に全身鳥肌が立って、“じゃあ長野でも作れるじゃん”と思って」

トリノは長野と同じ、冬季オリンピックの開催地。調べてみると、やはり、気温や雨量が長野県と似ていました。確信を抱いた岡田さんは53歳で会社を辞め、ヘーゼルナッツの栽培に乗り出します。前例はなく農業経験も「ゼロ」でした。

ふるフル・岡田浩史さん:
「左も右も分からない、ゼロからのスタート。一番、ギャンブルでもあったんですけど、実際にやってみて、管理がとても楽なんですね。とにかく普段は草を刈るだけ。(3年目に)実を見てからは世界が明るくなりました」

長野でも栽培できる―。手応えを感じた岡田さんは遊休農地を借りて畑を広げ、アイスクリーム店にも力を入れています。

ふるフル・岡田浩史さん:
「栽培するだけでなくて、加工して販売するまでが農業という考え方が重要かなと」

店では焙煎した実を毎日、アイス用に加工しています。成分は油脂と食物繊維がほとんど。粉砕してから、こちらの機械に入れるとペースト状になります。

ふるフル・岡田浩史さん:
「こんな感じで少しずつ、少しずつ…。すごく根気がいる作業なんですよ」

アイスは長男の晃治さんが早朝から、その日、売る分だけを作ります。ペーストに牛乳などを混ぜ合わせたものを殺菌と冷却をする機械へ。すると、やわらかなアイスが出てきました。

ふるフル・岡田浩史さん:
「一度も冷凍しないというところが一番大切なところ。-9度くらいでマシンから出てくるので、すごくやわらかい。だから一番おいしい」

カチコチに冷凍しなくてもアイスが作れるこの機械、岡田さんが会社員時代、イタリアから輸入していた「優れもの」です。

ふるフル・岡田浩史さん:
「これはわが子のような…。(自分が使うとは?)まったく想定していなかったですね」

栽培と加工に成功した岡田さん。さらなる「夢」があります。

11月15日、長野を訪れたのは国内外で活躍するパティシエたち。会社員時代から付き合いがあり、視察や試食をしてもらいました。

ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ・土屋公二さん:
「イタリアですごくヘーゼルナッツのアイス食べたんですけど、それよりうまいです。これが長野でできる?最高ですね」

これまで輸入品に頼るしかなかったため、菓子職人たちも熱視線を送っています。

モンサンクレール・辻口博啓さん:
「焼き菓子やチョコレート、いろんなところに使われていく、新しい素材。長野から全国に発信する、世界に発信する、そういう素材なんじゃないか」

土屋公二さんは東京・渋谷の有名店「ミュゼ・ドゥ・ショコラ・テオブロマ」のショコラティエ。2021年、岡田さんのナッツを使ったチョコを、世界的なコンクールに出品。見事、銅賞に輝きました。

ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ・土屋公二さん:
「この距離で新鮮なものが、最高品質なものが手に入ることは、本当にラッキーなこと。世界で戦える材料だと思います」

岡田さんの次の夢は、ヘーゼルナッツの「特産品化」です。15日は生産者も集まり、信州産ヘーゼルナッツの研究会を発足させました。菓子業界と連携して生産の拡大を図っていきます。夢実現の「下地」は、できつつあります。

「遊休農地で栽培でき、手間もかからない」と岡田さんが広めたところ、県内の生産者は375人、木の本数にして6000本近くに増えました。国内生産量の95%を長野県が占めています。

諏訪市・藤森明浩さん:
「この木辺りが2020年の4月に植えたもので、もうだいぶ大きくなっています」

諏訪市の藤森明浩さんは、定年退職を機に自宅裏の畑で栽培を始め、3年目のこの秋、初めて雄花が付きました。

諏訪市・藤森明浩さん:
「このまま実が早くつかないかなという気持ちだけですね」

藤森さんは岡田さんの店で修業し、既に「生アイス」の店をオープンさせています。ここでもヘーゼルナッツのアイスは大人気。今は岡田さんから買い取っていますが、来年以降は自身が栽培した実を使いたいと話します。

「信州をヘーゼルナッツの一大産地に」。8年前、たった一人で始めた挑戦が今、多くの人が期待する取り組みへと成長しています。

ふるフル・岡田浩史さん:
「とにかく生産者をまず増やしていく。そして信州が中心となってヘーゼルナッツを生産し、これからは国産のヘーゼルナッツがどんどん皆さんに召し上がっていただけるように 活動をずっと続けていきたいというのが一番です」
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