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命を守る役割「聴導犬」育成に支援を コロナ影響で収入減、物価高で費用増 キャッシュレス化で募金半減も

耳の不自由な人を助ける「聴導犬」です。宮田村にある長野県内唯一の育成施設が、コロナの影響による収入減や物価高に悩まされています。運営団体は「訓練を続けさせてほしい」と支援を呼びかけています。

東京都八王子市に住む金斗鐵(きむ どうちょる)さん(55)と横田千代美さん(57)の夫婦。2人とも子どもの頃の病気がもとで、音がほとんど聞こえません。

一緒に散歩しているのはシーズーのメス、「てい」(6)です。2人にとって「てい」は愛犬以上の存在です。

玄関のチャイムに反応する「てい」。体を触りチャイムが鳴ったことを教えました。「てい」は耳の不自由な人を助ける聴導犬。暮らしに欠かせないパートナーです。

(金斗鐵さん:手話)
「(ていが来る)前は郵便局の人やお客さんが来ても全く分からなかったけど、聴導犬がいると生活が全く変わってうれしい。ていちゃんは娘と同じようなもの。すごく落ち着く」

こちらは「てい」を育成した宮田村にある「日本聴導犬協会」。保健所の後押しを受けて1996年に設立され、保護された犬や譲渡対象の犬を引き取り、聴導犬や介助犬に育成。これまでに聴導犬28匹、介助犬10匹を送り出しています。

日本聴導犬協会・有馬もと会長:
「耳の不自由な方の命を守るのがこの子たちの役割。音を知らせるだけでなく何かあったときに教える。人生にかかわる伴侶だと思ってます」

11月4日、A・コープ宮田店―。

訓練士:
「ひさー、これ買うからね。グッドー」

こちらはスーパーでの訓練。買い物中、聴導犬は常に人の横に付き添うようにします。

会計中は座って待つ…。

訓練士:
「お店の中でも他のものにつられたり、きちんと座って物を取る間、(ひさは)まだ訓練中ですので動いてしまう。他のものに気をとられるので、できるだけないように。あと周りの方から守ってあげるなどの訓練をしています」

日常生活を想定し環境に慣らす訓練は、地域の理解を得てスーパーやバスなどの公共交通機関で行われています。

バス車内では、ほえずに足元で…。

この犬はまだできませんが、いずれ訓練を重ねればブザーの音などに反応し、飼い主に知らせてくれるようになるそうです。

日本聴導犬協会・有馬もと会長:
「『ピンポン』という音を教えてくれたり、いつも同じ駅で降りる方は駅に来ると起こしてくれる。習慣的なものだと思うが、寝入ってしまったときに犬が起こしてくれるという例がある」

聴導犬が日常生活でどのような働きをするのか、デモンストレーションを見せてもらいました。

銀行や郵便局での順番待ち。飼い主が事前に渡した呼び鈴を、窓口の担当者役が慣らすと…足を触り順番を教えます。

家では、目覚まし時計が鳴ると体の上に乗って起こしてくれたり…他の家族を呼んできてくれたりします。

訓練士:
「グッドー!」

厚生労働省の調査によりますと、全国で活躍する聴導犬は58匹。これに対し盲導犬は848匹。盲導犬に比べ歴史が浅く、認定できる団体も少ないため、普及や認知度に差があります。

そこで協会は、講演会などを通じて聴導犬の役割や必要性を広めています。

日本聴導犬協会・有馬もと会長:
「26年たっても58匹しかいないのはとても残念。どうやっていこうか試行錯誤している」

育成や普及に力を入れたいところですが、協会は今、厳しい運営を強いられています。これまで、運営費の9割以上は講演会の謝礼と全国からの寄付金で賄われてきました。しかし、新型コロナの感染拡大で以前200件ほどあった講演会は、2021年は40件ほど。大幅に収入が減りました。

また、キャッシュレス化の影響もあってか、スーパーの店頭などに設置した募金箱への募金が減っています。県内外およそ1000カ所に設置してあり、以前は年間500万円ほどが集まりましたが、2021年は240万円と半減しました。

さらに…

日本聴導犬協会・有馬もと会長:
「ワンちゃんたちのフードは小麦粉が主なので、ウクライナから小麦粉がないとか、食費とかがすべてが高騰している。生きている子たちなので、365日運営をしないといけないですし、この子たちの世話とか訓練も続けないといけないので、本当に困っている状態」

物価高でドッグフード代などの費用が2割ほど増え、運営を圧迫…。

そこで協会は、クラウドファンディングを利用して協力を求めています。目標金額は750万円です。

日本聴導犬協会・有馬もと会長:
「本当に(コロナ禍の)3年目は厳しい状態になっている。皆さまからの支援をいただけたら本当に助かるし、障がいを持たれている方の伴侶を育てられますのでぜひ皆さま、お力添えをよろしくお願いいたします」

金さん・横田さん夫婦のもとに「てい」が来て5年。音を知らせてくれるだけでなく、娘のような存在となっていて、夫婦の暮らしをより豊かにしています。

(横田千代美さん:手話)
「前は寂しいし2人で話すこともあまりなかったけど、(ていが)来てからはよく話すし、行動も広がった。家の周りに耳が聞こえる友達がいっぱいいます。聴導犬がいることでコミュニケーションがとれて、交流できて楽しい。ていちゃんのおかげです」
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