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「親戚の家」のように…“長期滞在”旅館は今 繁華街で工事や営業の連泊客迎え46年

特集は長野市の繁華街にある旅館です。営んでいるのは父と息子。仕事で長期滞在する客を得意とする宿です。コロナ禍もあり、客は減っていますが、「親戚の家」のような雰囲気を大切にしながら親子で宿を守っています。

繁華街・権堂に近い西鶴賀通り。その一角に「ファミリー旅館 梅岡」はあります。

「お帰りなさい。どうも、きょうはすごい雨でしたね」

経営者の中牧津南光さん(79)。

夕方、「いらっしゃいませ」ではなく、「お帰りなさい」と声をかけるのは、多くが「連泊」の客だからです。「梅岡」は工事や営業などで数週間・数カ月と長期滞在する客に重宝されてきました。「お帰りなさい」は宿を象徴する言葉です。

中牧津南光さん(79):
「家族的でうちに帰ってきたような感じの旅館でありたいとは思う」

厨房を任させれている息子・浩一郎さん(55)も…。

中牧浩一郎さん(55):
「(雰囲気は)『親戚の家』ですかね。普段着で来られるという感じ」

旅館のスタートは昭和52年。元々は中牧さんの父親が戦後に始めたすき焼き店でしたが、屋号は残して旅館に改装しました。

中牧津南光さん(79):
「古い家を壊す時は、大丈夫かなという感じはありましたけど結構、お客さん、みえていただいて」

「右肩上がり」の時代。 もくろみは当たり、長野オリンピックの建設ラッシュ時、宿は全盛期を迎えました。飲食店などで働いていた浩一郎さんが戻ったのもその頃です。

中牧浩一郎さん(55):
「景気が良かった。お客さんいっぱい来てたし、そこら中、忙しかった」

その後、市内に宿泊施設が増えたことや景気の落ち込みもあって利用客は減少。そして今はコロナの影響も受けています。特に中高生のスポーツ合宿などが大きく減りました。

中牧津南光さん(79):
「出張の人は仕事しなきゃいけないので来るけど、大会、合宿が(コロナで)全然だめになった。あと観光も」

連泊客:
「ただいま」

中牧津南光さん(79):
「お帰りなさい」

客はかつてより減りましたが、宿のもてなしは変わっていません。

夕食を作る浩一郎さん。

中牧浩一郎さん(55):
「いっぱい食べてもらいたい。夕飯が楽しみになってもらいたい」

メニューはポークソテー、天ぷら、焼き鮭など家庭的です。

こちらはダムの設備点検で5カ月連泊予定のグループ。

連泊客:
「おいしいですよ、ほんとに。仕事やって帰ってきて、何が楽しみと言えば飯しかないから。見ての通りの旦那(浩一郎さん)、優しくて温かみのある。後輩は以前に泊まって、俺は今回が初めてだけど、違和感がない」

中牧浩一郎さん(55):
「お昼ご飯はどうしてるんですか、山の中で」

連泊客:
「コンビ二寄って買ってる」

テレビを見ながら客と会話。浩一郎さんが大切にしているのは「親戚の家」のような雰囲気です。

中牧浩一郎さん(55):
「旅から旅へ行ってるからね。現場から現場へ行ってるから、やっぱり帰ってくる場所が必要、仕事が終わって…」

風呂やトイレは共同。決して設備は新しくありません。それでも客は、居心地の良さを感じています。

東京から来た5連泊の男性も…

仕事で5連泊:
「お父さんも息子さんも気さくな感じで、気を使わないでいられるからいいな」

客足が減ったコロナ禍、「梅岡」は新しいことにもチャレンジしています。それは「カレー」です。

中牧浩一郎さん(55):
「すごい売り上げになるかというと、売り上げにならないのだけど」

1年ほど前から、毎週金曜、カレーのランチ営業をしています。スパイスは浩一郎さんの独自調合です。

中牧浩一郎さん(55):
「チョウジ(クローブ)、こういうのもガリッと食べて、スパイスそのものの味を楽しむのもいいのかな」

この日のメニューは鹿肉のキーマカレーとスープカレーのセット。

大阪府から:
「(鹿肉を)初めて食べたのですが、そんなにくせもなく食べやすい」

長野市内から:
「結構スパイス効いてますね。ピリッと刺激がきておいしい」

この「金曜カレー」の他に浩一郎さんは「UMEOKA inn シアター」というイベントをおととしから不定期で開催しています。内容は芝居、落語、映画鑑賞などさまざま。地域の住民にも「梅岡」を知ってもらおうと始めたもので、浩一郎さんは旅館の可能性はまだあると感じています。

中牧浩一郎さん(55):
「会社行きたくないな、学校行きたくないなとか、きょうはボーッとしてたいんですわ、みたいな(時に)、違うおうちみたいな、(地域の)みんなが集まれるおうちみたいな形態でもいいのかな」

今年で46年目の「ファミリー旅館 梅岡」。親子はこれからも家に帰ってきたような雰囲気を大切にしながら客を迎えたいとしています。

中牧津南光さん(79):
「初めて来るお客さんにも『お帰りなさい』という感じで、うちに帰ってきたような感じで接したい」

中牧浩一郎さん(55):
「うちみたいな旅館は、お客さんは家族ではないんですけど、朝ごはんを作って、送り出して、お風呂に入れるようにして、夕飯を用意してという言ってみれば、お母さんみたいな役目」
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