
特集は、若者が活躍する今どきの農業です。新卒の若者を採用し続け、サラリーマンスタイルに徹した異色の農業法人が長野県松本市にあります。いきいきと働く若者たち。その姿からは農業の「可能性」が見えてきます。
加工用のトマトを大型機械で一気に収穫。ここは農業法人「かまくらや」の農地です。働いているのは…
新入社員・堺千花さん(19):
「いっぱい採れてうれしいです(笑)」
若い男女です。
「かまくらや」は9年連続で新卒を採用。県の担当課は、安定的に新卒採用をする農業法人は「県内では他に聞いたことがない」と言います。
かまくらや・田中浩二社長:
「農家の高齢化の中で減っていく後釜として『会社勤め』でできる“サラリーマン”の農家を生み出していこうと」
原則、週休2日。有給休暇は100%取得。給与は製造業の平均水準並み。こうした条件が農家に生まれなかった若者の「就農」を後押ししてます。
入社5年目の永井春輝さん(24)もそうした一人です。
入社5年目・永井春輝さん:
「一から就農するって言っても何も知識もなくて、ちょっと現実的にお金もないし難しい。こういう形じゃないとできなかったと思うので楽しいです」
「かまくらや」の1日を取材しました。
「おはようございます」
この日の出勤は朝6時前。朝礼をして、その日の作業内容を確認します。
朝礼:
「よろしくお願いします」
軽トラに乗り込んで、それぞれの農場へ。夏の間は早朝から働き午後3時までの8時間勤務が基本です。
入社5年目・永井春輝さん:
「連携取りながら、うまく慣らしながらやっていきましょう」
永井さんはトマト生産のリーダー。収穫した大量のトマトは翌日、加工会社に運ばれその日のうちにジュースになります。
入社5年目・永井春輝さん:
「一応、順調に進んでいます。自分一人でやってもうまくいかないので、気持ちを一つにできるようにやっていきたいなと」
永井さんが農業を志すようになったのは高校時代です。
―2015年取材―
そば打ちを披露する高校3年当時の永井さん。長野吉田高校戸隠分校でそば部の部長を務め、全国大会にも出場。寝ても覚めても「そば」という3年間でした。
入社5年目・永井春輝さん:
「そばを打っていく中で、よりおいしいものを作るにはどうしたらいいか、どんどん考えていった時に、栽培のことに初めて興味が出てきて」
卒業後は県の農業大学校へ。ただ実家が農家ではない永井さんにとって、就農は高いハードルでした。
県内の農業従事者はこの20年でおよそ4割減少。65歳以上が7割以上を占め、高齢化が進んでいます。
一方、農家の法人化も進み若者の受け入れ先となっていますが、多くが「独立」を想定していて、農地を持たない若者は二の足を踏んでいると言います。
そこに目を付けたのが田中浩二社長(59)です。長く自動車販売店を営んでいましたがリーマンショック後、「畑違い」の農業に参入。2009年、ソバの生産を始めました。人材の確保に苦戦しましたが、就農のハードルの高さから農業を諦める若者が多いことに気づき、積極採用に乗り出します。
かまくらや・田中浩二社長:
「地元の農業高校や農業大学校で勉強した若者が、農業につかないという現実を知った。それは地元の損失だなと思ったんです」
サラリーマンスタイルの雇用条件を整え、2014年から毎年「新卒」を採用し、これまでに24人が入社しました。
2018年入社の永井さんは念願だったソバの生産に携わり、その後、新規の加工用トマトを任され、栽培方法の研究、加工会社との調整をゼロから進めてきました。
トマト生産のリーダー/入社5年目・永井春輝さん:
「地元企業さんの手に渡って品物になるとうれしいですし、常に誰かの役に立っているというのがわかりやすいので、自分の中の誇りじゃないですけど力になっています」
農繁期の2カ月は週休1日ですが、冬の2カ月は3日。去年の有給休暇20日はすべて取得しました。
今年2月には、同僚の夏芽さんと結婚。休みが安定していることから…
トマト生産のリーダー/入社5年目・永井春輝さん:
「農閑期になれば3泊4日で旅行にいったり、プライベートは充実できる」
こうした働き方を維持するには「収益」が必要です。「かまくらや」は機械化・効率化を進め、メインのソバは二期作を実現。
かまくらや・田中浩二社長:
「3チームが編隊を組んで、それぞれが大型機械に乗って、刈り取った翌日には種をまいているというのが実現している。2回作ってしまえば、これはビジネスになるんです」
今では県内一の「ソバ生産者」です。
おととしには松本城近くに自社のそば店をオープンさせました。
夏に収穫した「新そば」(もりそば並盛り900円)が味わえる―。
そば処かまくらや・山崎嵐さん:
「自分たちで栽培したソバを自分たちでそば粉に加工して、ひきたて、打ち立てのそばを提供できるのが一番の強み」
愛知県から:
「今まで食べた中で一番うまいんじゃないか」
さて、午前の仕事を終えた社員たちが拠点に戻ってきました。
昼食は「社食」でとります。メニューは自社生産のニンジンやタマネギの入ったポークシチュー。これで200円です。
社員:
「安いです、ありがたいです」
社食は疲れを癒やし、チームワークを育む場に―。
午後、再び農場へ。かまくらやの農地は、今やおよそ200ヘクタールに及びますが、全てが「耕作放棄地」。高齢の農家などから借り受けています。実はこの実情が、社員のやりがい・使命感につながっています。
入社1年目・細萱愛麟珠さん(21):
「風景を変えていく、景観を変えていく仕事だと思っている」
入社9年目。長岩佑弥さん(28):
「地域の荒れている畑を“ゼロ”に、地域の景観を保つというのは、自分の中でも目標としてやっていきたい」
かまくらや・田中浩二社長:
「彼らが高齢農家の血縁ではないけど、後継ぎ、後釜だと思ってもらえればいいのではないか」
定時を少し過ぎた午後3時半、この日の作業が終了しました。
トマト生産のリーダー/入社5年目・永井春輝さん:
「きょうも1日、お疲れさまでした」
若者が活躍できる農業。田中社長はこれからも採用を続け、「かまくらや」を地域の農業を守る存在へと高めていきたい考えです。
かまくらや・田中浩二社長:
「耕作放棄地の再生+人材の育成、これがないと農業っていうのはよくならない。若い人を採用して定着していく農業というのをこれからもやっていきたい」
加工用のトマトを大型機械で一気に収穫。ここは農業法人「かまくらや」の農地です。働いているのは…
新入社員・堺千花さん(19):
「いっぱい採れてうれしいです(笑)」
若い男女です。
「かまくらや」は9年連続で新卒を採用。県の担当課は、安定的に新卒採用をする農業法人は「県内では他に聞いたことがない」と言います。
かまくらや・田中浩二社長:
「農家の高齢化の中で減っていく後釜として『会社勤め』でできる“サラリーマン”の農家を生み出していこうと」
原則、週休2日。有給休暇は100%取得。給与は製造業の平均水準並み。こうした条件が農家に生まれなかった若者の「就農」を後押ししてます。
入社5年目の永井春輝さん(24)もそうした一人です。
入社5年目・永井春輝さん:
「一から就農するって言っても何も知識もなくて、ちょっと現実的にお金もないし難しい。こういう形じゃないとできなかったと思うので楽しいです」
「かまくらや」の1日を取材しました。
「おはようございます」
この日の出勤は朝6時前。朝礼をして、その日の作業内容を確認します。
朝礼:
「よろしくお願いします」
軽トラに乗り込んで、それぞれの農場へ。夏の間は早朝から働き午後3時までの8時間勤務が基本です。
入社5年目・永井春輝さん:
「連携取りながら、うまく慣らしながらやっていきましょう」
永井さんはトマト生産のリーダー。収穫した大量のトマトは翌日、加工会社に運ばれその日のうちにジュースになります。
入社5年目・永井春輝さん:
「一応、順調に進んでいます。自分一人でやってもうまくいかないので、気持ちを一つにできるようにやっていきたいなと」
永井さんが農業を志すようになったのは高校時代です。
―2015年取材―
そば打ちを披露する高校3年当時の永井さん。長野吉田高校戸隠分校でそば部の部長を務め、全国大会にも出場。寝ても覚めても「そば」という3年間でした。
入社5年目・永井春輝さん:
「そばを打っていく中で、よりおいしいものを作るにはどうしたらいいか、どんどん考えていった時に、栽培のことに初めて興味が出てきて」
卒業後は県の農業大学校へ。ただ実家が農家ではない永井さんにとって、就農は高いハードルでした。
県内の農業従事者はこの20年でおよそ4割減少。65歳以上が7割以上を占め、高齢化が進んでいます。
一方、農家の法人化も進み若者の受け入れ先となっていますが、多くが「独立」を想定していて、農地を持たない若者は二の足を踏んでいると言います。
そこに目を付けたのが田中浩二社長(59)です。長く自動車販売店を営んでいましたがリーマンショック後、「畑違い」の農業に参入。2009年、ソバの生産を始めました。人材の確保に苦戦しましたが、就農のハードルの高さから農業を諦める若者が多いことに気づき、積極採用に乗り出します。
かまくらや・田中浩二社長:
「地元の農業高校や農業大学校で勉強した若者が、農業につかないという現実を知った。それは地元の損失だなと思ったんです」
サラリーマンスタイルの雇用条件を整え、2014年から毎年「新卒」を採用し、これまでに24人が入社しました。
2018年入社の永井さんは念願だったソバの生産に携わり、その後、新規の加工用トマトを任され、栽培方法の研究、加工会社との調整をゼロから進めてきました。
トマト生産のリーダー/入社5年目・永井春輝さん:
「地元企業さんの手に渡って品物になるとうれしいですし、常に誰かの役に立っているというのがわかりやすいので、自分の中の誇りじゃないですけど力になっています」
農繁期の2カ月は週休1日ですが、冬の2カ月は3日。去年の有給休暇20日はすべて取得しました。
今年2月には、同僚の夏芽さんと結婚。休みが安定していることから…
トマト生産のリーダー/入社5年目・永井春輝さん:
「農閑期になれば3泊4日で旅行にいったり、プライベートは充実できる」
こうした働き方を維持するには「収益」が必要です。「かまくらや」は機械化・効率化を進め、メインのソバは二期作を実現。
かまくらや・田中浩二社長:
「3チームが編隊を組んで、それぞれが大型機械に乗って、刈り取った翌日には種をまいているというのが実現している。2回作ってしまえば、これはビジネスになるんです」
今では県内一の「ソバ生産者」です。
おととしには松本城近くに自社のそば店をオープンさせました。
夏に収穫した「新そば」(もりそば並盛り900円)が味わえる―。
そば処かまくらや・山崎嵐さん:
「自分たちで栽培したソバを自分たちでそば粉に加工して、ひきたて、打ち立てのそばを提供できるのが一番の強み」
愛知県から:
「今まで食べた中で一番うまいんじゃないか」
さて、午前の仕事を終えた社員たちが拠点に戻ってきました。
昼食は「社食」でとります。メニューは自社生産のニンジンやタマネギの入ったポークシチュー。これで200円です。
社員:
「安いです、ありがたいです」
社食は疲れを癒やし、チームワークを育む場に―。
午後、再び農場へ。かまくらやの農地は、今やおよそ200ヘクタールに及びますが、全てが「耕作放棄地」。高齢の農家などから借り受けています。実はこの実情が、社員のやりがい・使命感につながっています。
入社1年目・細萱愛麟珠さん(21):
「風景を変えていく、景観を変えていく仕事だと思っている」
入社9年目。長岩佑弥さん(28):
「地域の荒れている畑を“ゼロ”に、地域の景観を保つというのは、自分の中でも目標としてやっていきたい」
かまくらや・田中浩二社長:
「彼らが高齢農家の血縁ではないけど、後継ぎ、後釜だと思ってもらえればいいのではないか」
定時を少し過ぎた午後3時半、この日の作業が終了しました。
トマト生産のリーダー/入社5年目・永井春輝さん:
「きょうも1日、お疲れさまでした」
若者が活躍できる農業。田中社長はこれからも採用を続け、「かまくらや」を地域の農業を守る存在へと高めていきたい考えです。
かまくらや・田中浩二社長:
「耕作放棄地の再生+人材の育成、これがないと農業っていうのはよくならない。若い人を採用して定着していく農業というのをこれからもやっていきたい」