
特集は、シェフの再出発です。脳出血に倒れて自分の店を手放した長野県飯田市の男性シェフ。左半身にまひが残りましたが、懸命なリハビリと妻の支えで、先日、キッチンカーで再起を果たしました。
カモ肉を調理する多田幸則さん(56)。この道30年のフレンチのシェフです。
多田幸則さん:
「カモのモモ肉です。柔らかく油で煮て、パリッと香ばしく焼いた」
右手だけで調理する多田さん。7年前、脳出血で倒れ左半身にまひが残っています。料理を運ぶのは妻の陽子さん(56)です。病気で店を手放しましたが、この日、キッチンカーで再出発を果たしました。
こちらは知人が営む飯田市内のカフェ。多田さんは2021年の年末から月に1回、厨房を借りてランチ営業をしています。「もう一度、自分の店を」と、2020年から準備を始めていました。
多田さんは飯田市の出身。料理人だった父親の影響で料理の専門学校に進み、その後、フランスに渡って修業。帰国後は東京や大阪でシェフとして働いてきました。
多田幸則さん:
「フランスが元々すごく好きだった。映画も好きだし、フランスの物が好き、お菓子、ワイン、チーズも。フランスと言えばフランス料理だから、それを極めたいなと」
2010年、飯田に自分の店「フレンチテーブル リエルグ」をオープン。店名は修業を積んだフランスの街から取りました。
常連客もできて順調に営業していましたが、7年前、脳出血で倒れました。
多田幸則さん:
「(体が)全然動かないのがちょっとショックだった。大好きな料理がもうできないのかと思った。お客さんに支持されてたから申し訳ないなと」
店を閉じ、半年間の入院。左半身にまひが残り、長いリハビリ生活が続きました。
妻・陽子さん:
「私の方が毎日泣いているような状態だったが、本人は明るく接してくれて。つらいこともいっぱいあったと思いますけど」
多田幸則さん:
「お店を閉めるって大変だったと思う、引っ越しも含めて。そういうの全部、妻が一人でやってたので、入院しながらも申し訳ないなと」
リハビリは今も続いていますが、つえをついて歩けるようになりました。
多田幸則さん:
「手際いいでしょ、体半分しか使ってないのにね」
妻・陽子さんの支えがあってこその回復です。
多田幸則さん:
「妻は割と厳しいんですよ。『もっと速く歩いた方がいいよ』とか。感謝しかないです。大変ですよ、こういう体をサポートするのは」
リハビリを重ねる中、思いついたのがキッチンカーでの再出発。
多田幸則さん:
「動ける体でもないし、キッチンカーは狭いスペースで料理作れるから僕でもできるかなと」
クラウドファンディングで資金を調達し、2022年3月、キッチンカーを手に入れました。
迎えた8月5日の営業初日。最初の客は、前の店の常連で、クラウドファンディングでも支援してくれた高森町の家族です。
多田幸則さん:
「すごく楽しみにしてるんですよ。だからすてきな時間をプレゼントしてあげたい」
車は多田さん自ら運転―。
支援者・高森町の三石さんの家に到着。
多田幸則さん:
「ありがとうございます。お世話になります。初めての営業でバタバタしてしまうと思いますが、ディナーを楽しんでください」
庭先にキッチンカーを止め、調理開始。仕込んできた分と合わせ、フルコースを提供します。
妻・陽子さん:
「前菜です」
三石さん家族:
「わ~すごい!」
前菜は重箱に入ったテリーヌやマリネ。南信州産の野菜を使っていて、彩り豊かです。
二品目の魚は…
多田幸則さん:
「ポワレと言って、皮目パリパリに焼いて一回ひっくり返すだけで」
鮮魚(チダイ)のポワレとクスクスのサラダ添えです。
客・三石伸幸さん:
「優しい味付けや野菜をたくさん使ってるところが、もうあの時の感じで」
メインディッシュはカモのもも肉のコンフィ。肉をじっくり油で煮てハニーマスタードのソースをかけます。
妻・陽子さん:
「お待たせしました、希さんの大好物」
客・三石希さん:
「当時のレストランのような料理じゃなく、簡素化されたような感じになるのかと思ったら、手が込んでるし、見た目もきれいだし、すごくおいしい」
この日は夫・三石伸幸さんの誕生日。デザートとして、バースデータルトをプレゼントしました。
多田幸則さん:
「あとで家族だんらんで食べてください」
多田幸則さん:
「きょうはありがとうございました。おいしかったですか、コンフィ?」
客・三石希さん:
「コンフィだけでなく、全部おいしかったです」
感極まる、多田さん―。病に倒れてから7年。念願の「営業初日」を終えた二人は…。
多田幸則さん:
「病気で倒れて入院していた頃を考えると夢のような出来事。ほんとに感無量。しかもあんなに喜んでいただいて、うれしい」
妻・陽子さん:
「(夫は)丁寧に仕事してたと思うし、とても生き生きとうれしそうだったと思う」
フレンチキッチンカー「リエルグ」。多田さん夫婦は、おいしい料理と幸せな時間を届けたいと意気込んでいます。
カモ肉を調理する多田幸則さん(56)。この道30年のフレンチのシェフです。
多田幸則さん:
「カモのモモ肉です。柔らかく油で煮て、パリッと香ばしく焼いた」
右手だけで調理する多田さん。7年前、脳出血で倒れ左半身にまひが残っています。料理を運ぶのは妻の陽子さん(56)です。病気で店を手放しましたが、この日、キッチンカーで再出発を果たしました。
こちらは知人が営む飯田市内のカフェ。多田さんは2021年の年末から月に1回、厨房を借りてランチ営業をしています。「もう一度、自分の店を」と、2020年から準備を始めていました。
多田さんは飯田市の出身。料理人だった父親の影響で料理の専門学校に進み、その後、フランスに渡って修業。帰国後は東京や大阪でシェフとして働いてきました。
多田幸則さん:
「フランスが元々すごく好きだった。映画も好きだし、フランスの物が好き、お菓子、ワイン、チーズも。フランスと言えばフランス料理だから、それを極めたいなと」
2010年、飯田に自分の店「フレンチテーブル リエルグ」をオープン。店名は修業を積んだフランスの街から取りました。
常連客もできて順調に営業していましたが、7年前、脳出血で倒れました。
多田幸則さん:
「(体が)全然動かないのがちょっとショックだった。大好きな料理がもうできないのかと思った。お客さんに支持されてたから申し訳ないなと」
店を閉じ、半年間の入院。左半身にまひが残り、長いリハビリ生活が続きました。
妻・陽子さん:
「私の方が毎日泣いているような状態だったが、本人は明るく接してくれて。つらいこともいっぱいあったと思いますけど」
多田幸則さん:
「お店を閉めるって大変だったと思う、引っ越しも含めて。そういうの全部、妻が一人でやってたので、入院しながらも申し訳ないなと」
リハビリは今も続いていますが、つえをついて歩けるようになりました。
多田幸則さん:
「手際いいでしょ、体半分しか使ってないのにね」
妻・陽子さんの支えがあってこその回復です。
多田幸則さん:
「妻は割と厳しいんですよ。『もっと速く歩いた方がいいよ』とか。感謝しかないです。大変ですよ、こういう体をサポートするのは」
リハビリを重ねる中、思いついたのがキッチンカーでの再出発。
多田幸則さん:
「動ける体でもないし、キッチンカーは狭いスペースで料理作れるから僕でもできるかなと」
クラウドファンディングで資金を調達し、2022年3月、キッチンカーを手に入れました。
迎えた8月5日の営業初日。最初の客は、前の店の常連で、クラウドファンディングでも支援してくれた高森町の家族です。
多田幸則さん:
「すごく楽しみにしてるんですよ。だからすてきな時間をプレゼントしてあげたい」
車は多田さん自ら運転―。
支援者・高森町の三石さんの家に到着。
多田幸則さん:
「ありがとうございます。お世話になります。初めての営業でバタバタしてしまうと思いますが、ディナーを楽しんでください」
庭先にキッチンカーを止め、調理開始。仕込んできた分と合わせ、フルコースを提供します。
妻・陽子さん:
「前菜です」
三石さん家族:
「わ~すごい!」
前菜は重箱に入ったテリーヌやマリネ。南信州産の野菜を使っていて、彩り豊かです。
二品目の魚は…
多田幸則さん:
「ポワレと言って、皮目パリパリに焼いて一回ひっくり返すだけで」
鮮魚(チダイ)のポワレとクスクスのサラダ添えです。
客・三石伸幸さん:
「優しい味付けや野菜をたくさん使ってるところが、もうあの時の感じで」
メインディッシュはカモのもも肉のコンフィ。肉をじっくり油で煮てハニーマスタードのソースをかけます。
妻・陽子さん:
「お待たせしました、希さんの大好物」
客・三石希さん:
「当時のレストランのような料理じゃなく、簡素化されたような感じになるのかと思ったら、手が込んでるし、見た目もきれいだし、すごくおいしい」
この日は夫・三石伸幸さんの誕生日。デザートとして、バースデータルトをプレゼントしました。
多田幸則さん:
「あとで家族だんらんで食べてください」
多田幸則さん:
「きょうはありがとうございました。おいしかったですか、コンフィ?」
客・三石希さん:
「コンフィだけでなく、全部おいしかったです」
感極まる、多田さん―。病に倒れてから7年。念願の「営業初日」を終えた二人は…。
多田幸則さん:
「病気で倒れて入院していた頃を考えると夢のような出来事。ほんとに感無量。しかもあんなに喜んでいただいて、うれしい」
妻・陽子さん:
「(夫は)丁寧に仕事してたと思うし、とても生き生きとうれしそうだったと思う」
フレンチキッチンカー「リエルグ」。多田さん夫婦は、おいしい料理と幸せな時間を届けたいと意気込んでいます。