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全国有数…長野市は“野外彫刻王国” 街中に約150点の作品 そのワケは?

長野市内にはおよそ150点の野外彫刻が点在しています。これだけの数をそろえる自治体は全国的にも珍しく、実は誇れる市の財産。担当課は市の魅力につながればと考えています。

7月31日、長野市で行われた市主催の野外彫刻めぐり。

野外彫刻めぐりガイド・黒岩雅堯さん:
「この作品はライオンですが、やや漫画的な。作者が変形させている。非常に迫力のあるライオン像になっています」

参加者は彫刻の説明を聞きながら、熱心に鑑賞していました。

参加者:
「美術品は美術館でしか見られないと思っていたものが、街の中で実は気が付くといろいろなところにあると再発見できて、文化の高さを感じました」
「長野に引っ越してあまり長野のこと知らないので、勉強したいと。(作品の多さに)驚いた。見て説明受けると、すごく興味湧きます」

このイベントは市内各地に設置された野外彫刻に愛着を持ってもらおうと昭和54年(1979)に始まりました。

彫刻の設置はそれより前の昭和48年(1973)にスタートし、設置した作品はこれまでに149点。実は全国有数の多さなんです。

野外彫刻のある街づくりを進めようとしていた愛知県知立市は、平成24年(2012)にデータを収集。それをもとに今回、問い合わせたところ、市が設置した彫刻数が100点以上だったのは山口県宇部市、東京都立川市、そして長野市の3つの市。屋外彫刻調査保存研究会によりますと、100点以上を設置している市は珍しいということです。長野大通りを歩くとその多さを実感できます。

(アナウンサー)
「早速、こちらに彫刻を発見しました。さらに道路の向かい側には、大きな彫刻が見えますよね。もうちょっと歩いて進んでいきますと、ここにも彫刻を見つけました」

長野大通り沿いだけでも10作品。ではなぜ、多くの野外彫刻が長野市に設置されているのでしょうか。担当課に聞くと「きっかけ」は意外なものでした。

長野市文化芸術課主事・村松莉緒さん:
「長野市浅川にある長野市霊園を建設し始めたとき、沿道に供養のため、仏像や地蔵を置いたらどうかと(市民から)意見があり、ちょうどそのころに当時の夏目忠雄長野市長がヨーロッパを訪問していて、街中にある野外彫刻と都市空間の調和に大きな感銘を受けたと聞いている。彫刻が持つ芸術性を生かした街づくりをしたいと始まった事業」

端緒は「仏像」でしたが、当時の夏目忠雄市長の下、全国規模の作品展に長野市の賞を設け、その作品を購入するという形で設置を進めてきました。その後、作品を作家に直接依頼し、展示する方法に変わったということです。

野外彫刻を置くきっかけとなった長野市霊園を訪ねると…。

(アナウンサー)
「ここには石の塔が建てられています。作品のタイトルは『丸三角四角』。その名の通り、〇、△、□と形が掘られています。その中には仏像が彫られていて、その穏やかな優し気な表情に癒されます」

霊園内には、母と子をモチーフにした作品など3作品があります。

市内には他にどのような作品があるのか、野外彫刻めぐりでガイドを担当する黒岩雅堯さんに城山公園内の作品を紹介してもらいました。

野外彫刻めぐりガイド・黒岩雅堯さん:
「こちらは『作品1972』という題名の土谷武さんの抽象彫刻です。長野市野外彫刻では、記念の第1回の作品で、昭和48年(1973)に設置された」

アナウンサー:
「結構、月日は経っていますね」

野外彫刻めぐりガイド・黒岩雅堯さん:
「(設置から)もう半世紀です。御影石を機械を使って板状にしたものが4枚、直方体上の鉄材を温めて、溶接機を使って接着したり、曲げたり。曲げることにより動きが出る。この重いものが動いている、そこに面白さがある」

アナウンサー:
「後ろにくると、盛り上がっているんですかね、鉄の部分が」

野外彫刻めぐりガイド・黒岩雅堯さん:
「熱を加えて鉄を曲げている。それによりウェーブ、波のような動きが出ています」

続いては…

アナウンサー:
「こちらの彫刻、すごく大きくて、石なのにすごくやわらかな曲線を描いていますよね」

『オウシ・ゾウケイ2007』 牛尾啓三 作 平成19年(2007)設置

野外彫刻めぐりガイド・黒岩雅堯さん:
「ぐーっと立体的にうねったような曲線の美しさですね。美術館にあると、触れてはいけませんと表示があるが、野外彫刻は手で触る、腰を下ろす、体で感じる。その良さが野外彫刻にはあります」

アナウンサー:
「触っていいんですね!」

野外彫刻めぐりガイド・黒岩雅堯さん:
「いいんです、大いに触って」

触ったり、回り込んで見たり…。野外彫刻ならではの鑑賞です。

城山動物園には有名作家の作品があります。戦後の彫刻界をリードした舟越保武さんの作品です。舟越さんは秋田県の田沢湖にある「たつこ像」の制作者でもあります。金色に輝く少女の像は湖のシンボルです。

野外彫刻めぐりガイド・黒岩雅堯さん:
「日本で有名な作家の作品が長野市にいくつかあります。都会にある美術館に行かなくても触れられてありがたい、素晴らしい。街角を歩いていて、ふと見るとそこに彫刻が備えられている、それは素晴らしい。美術作品がそこで直接、見られる。すっと通り過ぎるのではなく、作品が立っていたら目を向けてほしい」

現在はメンテナンスに力をいれるため、新たな作品の展示は休止中です。すっかり街に溶け込んでいるものあり、注目度は決して高くありませんが、いずれも市の財産。担当課は市の魅力につなげたいとパンフレットなどでPRしています。

文化芸術課主事・村松莉緒さん:
「好きな方は(彫刻を)熱心に見てくれて、先日は外国人がパンフレットをもらいに来てくれて『巡ってみます』と話していました。もっといろいろな方に知ってもらえれば。市内各地に点在しているので、その地域を訪れるきっかけになる。野外彫刻を見るついでに、その地区を訪れてもいい。その地区を訪れるついでに野外彫刻を見てもらって、長野市全体に足を運ぶきっかけになればいい」
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