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女子ラグビー元代表「第二の人生」 故郷で教師と指導者目指す 世界での経験生かし高校生を鼓舞 

特集は、アスリートの「第二の人生」。長野県王滝村出身の元女子ラグビー日本代表の藤本麻依子さん。現役を引退し、故郷・信州で教師を目指しながら、ラグビーの普及や選手育成に意欲を見せています。

楕円球を追って体をぶつけ合う高校生たち。5月21日に行われた春の高校ラグビー長野県大会の伊那北高校対長野高校の試合です。

藤本麻依子さん:
「バックス早めに外に(パスを)回してもいいかも」

伊那北の選手たちに声をかける女性。この春からコーチを務める藤本麻依子さん(30)です。

藤本さんは、女子ラグビーの元選手。2017年には日本代表「サクラフィフティーン」にも選出されました。

2021年に現役を引退。故郷・信州で第二の人生をスタートさせています。

藤本麻依子さん:
「世界を経験した身としては、自分が持っている経験とか教えながらどんどん普及に携わっていきたい」

藤本麻依子さん(授業):
「子どもを何人、何歳の時にほしいかとか、考えるのが『家族設計』です」

教壇に立つ藤本さん。この春、伊那北高校の非常勤講師となり、保健体育を受け持っています。

藤本麻依子さん:
「(最初は)ギクシャクしながら…今はなんとなく慣れてきました」

藤本さんは御嶽山の麓・王滝村出身。体を動かすのが好きで、高校・大学ではソフトボールに打ち込みました。

ラグビーと出合ったのは大学4年の時。授業で体験してすぐにのめりこみ、卒業後は横浜のクラブチーム「YOKOHAMA TKM」へ。

藤本麻依子さん:
「自分でタックルをして倒すというところが面白くて、ラグビーに出合って、すごく自分に合っているスポーツだなと」

ソフトボールで養われたパワーや運動能力を買われ、競技を始めておよそ2年という早さで、日本代表に選ばれました。

藤本麻依子さん:
「国歌斉唱をするんですけど、日本を背負って戦いに来ているんだという思いとか、本当にラグビーやっててよかったなと」

選手同士が激しくぶつかり合うラグビー。度々、足首やひざに大けがをしました。周囲の支えもあって乗り越えてきましたが、肉体的にも精神的にも限界を迎え、2021年7月、現役を引退しました。

次の目標は教師になること。高校生の頃からの夢で、今後、採用試験に挑む予定です。

藤本麻依子さん:
「高校の時の部活の先生がとても熱心な方で、(その姿を見て)何かを誰かに教えて成長していく姿を見るのが、教員の面白さなのかなと。自分もそういう立場に立ってみたくなった」

非常勤講師になったのと同時にラグビー部のコーチに就任。

藤本麻依子さん(指導):
「押してても相手をはがせないじゃん?自分が下に入ってこうやってはがすの」

男子高校生を相手に体を張って指導できるのは藤本さんの強みです。ひときわ、熱が入るのが…

藤本麻依子さん(指導):
「上上上、肩自体を上に上げるよ。胸張って」

「スクラム」の練習です。藤本さんの現役時代のポジションはスクラムの最前線プロップ・フッカー。世界の強豪と互角に渡り合ってきた「スクラム職人」です。

藤本麻依子さん:
「スクラムがないと15人制のラグビーじゃない。熱は入っちゃいます」

プロップ(3年)・桜井宣太朗さん:
「先生の指導は具体的で、先生の教えで一歩一歩うまくなっている」

伊那北高校ラグビー部・宮下裕毅キャプテン:
「とても明るくしてくれる先生ですし、最初は日本代表が来るというから怖かったんですけど、フラットに接してくれるのですごくありがたい」

指導者の道を歩み始めた藤本さん。いずれはコーチのライセンスも取得し、普及や選手の育成に力を入れたい考えです。

藤本麻依子さん:
「高校からラグビーを始めた子ばかりなので、ラグビーは楽しいというのを一番に教えたい。いずれは長野県のラグビーの育成、男子だけじゃなくて女子の育成にも携わりたい」

5月21日、上田市菅平高原。

試合前、スクラムの練習相手になる藤本さん。

藤本麻依子さん:
「いい。バインドいい」

コーチとして初めて臨む大会。伊那北はこの3年間、公式戦で一度も勝っていません。

藤本麻依子さん:
「一人でラグビーしているわけじゃないし、きつくなったら隣の仲間の顔を見て楽しんでいきましょう」

前半、バックスの走力に勝る長野高校にトライを奪われてリードされますが、伊那北も見せ場をつくります。センターライン付近での相手ボールスクラム。

伊那北が押し込んでボール奪います。トライには至りませんでしたが、後半につながるプレーでした。

後半も藤本さんに鍛えられたスクラムで優位に立つ伊那北。しかし、相手を止めきれず―。

結果は、0対28で完敗でした。でも、藤本さんたちは…

藤本麻依子さん:
「(スクラムの)姿勢がすごく良かった。いつもの姿勢の練習のおかげだね」

伊那北高校ラグビー部の生徒:
「いつもの姿勢の練習のおかげだと思います」

伊那北高校ラグビー部の生徒:
「やらかした部分もあったけど、楽しかった」

藤本麻依子さん:
「ラグビーの怖さと、それよりも楽しさをわかってもらえたかなと。もっともっと私が持っているものを教えてあげたいという気持ちが高まりました」

第二の人生のキックオフ。教師とラグビー指導者を目指す藤本さんの挑戦は始まったばかりです。

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