【特集】フレンチの頂点を! 軽井沢のシェフが挑戦 信州の食材で… フランス最高峰のコンクールへ

【特集】フレンチの頂点を! 軽井沢のシェフが挑戦 信州の食材で… フランス最高峰のコンクールへ
特集は、世界の頂点に挑んだシェフです。フランス料理の世界一を決めるコンクールがフランスで開かれ、長野県軽井沢町に店を構える戸枝忠孝さんが出場。信州の食材も使って健闘しました。

ボキューズドール国際料理コンクール。

2年に1度、フランス料理界の頂点を決める、最も権威あるコンクールです。

2日間に渡って、21カ国のシェフが腕を競いました。

日本代表は戸枝忠孝さん(45)。軽井沢町に店を構えるシェフです。

戸枝忠孝さん:
「まさか日の丸背負って料理ができるという機会がくるとは思わなかったので、僕としてはやりがいがありますし、このコロナ禍、本当に飲食店がすごく苦労している。少しでもそういう方に希望の光が見えるような大会にできればなと」

希望を届けたいと作った渾身の料理。

果たして、結果は―。

戸枝忠孝さん:
「当店のガレージなんですけど、大会本番用のキッチンの設備と同じレイアウトを作って」

軽井沢町「レストランTOEDA」。

去年2020年10月、戸枝さんは本番を想定した特訓に励んでいました。

国内予選を勝ち抜いた後はほとんど店を閉めて、メニューの考案や練習に充ててきたのです。

滋賀県出身の戸枝さんが料理人を志したのは高校時代。人気番組「料理の鉄人」に感銘を受けたのがきっかけです。21歳でフランスに渡り名店で修業。帰国後も腕を磨き、2011年、自身の店を開きました。

ボキューズドールの舞台に立つことは長年の夢でしたが、もう一つ、大きな意義を見出していました。

戸枝忠孝さん:
「コンクールに出る方はホテルや大きな組織の方が出ることが多いので、個人店が出るのは難しいと思う方がすごく多いと思う。いい結果が出せるなら、個人でやられている方の希望になると思います」

夏、本番で披露するメニューが固まり、試食会が開かれることになりました。当初、1月の予定だった大会はコロナの影響で2度、延期され、9月末まで延びました。戸枝さんは貯金を切り崩しながら特訓を重ねてきました。

戸枝忠孝さん:
「仕上げてきたとは思うんですけど…たぶん駄目出しされると思います(笑)」

この日、集まったのは、ボキューズドールで日本人最高の3位に入り本番では審査員も務める浜田統之シェフなど一流シェフの面々。組織に属さない戸枝さんを資金集めへの協力やアドバイスで支えてきました。

まず試食したのは、今大会の課題の一つ「テイクアウト料理」。コロナ禍ならではのテーマです。

チェリートマトを使った前菜、エビのメイン料理、そしてデザートを、本番では一つの箱に入れ提供します。

見た目や味を吟味…。

高田裕介シェフ:
「普通に食べておいしいけど、トマトの酸味、どこをピークに持ってくるか…」

浜田統之シェフ(大会審査員):
「(審査員が)みんなトマトを食べ続けたときに(印象が)ボケるじゃないですか」

続いては肉料理。「ほうばの葉」をかたどった焼き菓子の飾りは軽井沢の森をイメージ。中はミスジ肉のプレゼ(蒸し煮)です。

浜田統之シェフ(大会審査員):
「塩胡椒が弱い。全体として結構ぼやけている。審査員は全体を食べないので、一口二口のインパクト、その中でどう差をつけていくか」

浜田シェフから審査員目線の厳しい指摘がありました。

戸枝忠孝さん:
「勉強になりますね。きょうの夜からでも少しずつ、修正できる所はやっていこうと思います」

9月6日、大会まで20日余り―

おいしさだけでなく、インパクトや演出も重要。戸枝さんは戦略を練り直しました。丸く仕上げていたプレゼをよりテクニックが必要な四角に変更。味も修正を重ねました。

肉の表面を包む信州産のシイタケ。うま味を肉に染み込ませます。香りのインパクトとして、「桜の葉の塩漬け」も巻くことにしました。ソースには安曇野産のワサビを使う予定です。

戸枝忠孝さん:
「日本特有のうま味っていうのをいろんな手法をプラスしていくというのを心がけて、ブラッシュアップしてきた」

この日の試作は…

戸枝忠孝さん:
「いいんじゃないかな。今までの中で一番いいんじゃないかな」

信州の食材を引っ提げて、いよいよ本番です。

戸枝忠孝さん:
「僕らの目標としてはまずは表彰台に上ること。信州・軽井沢でお店をやらせていただいているので、信州の食材も持っていきますし、僕はこの土地でやってるんだというのをアピールしたいと思っていますね。日本って素晴らしいところだと伝われば」

9月27日、フランス・リヨン 

勝負の時がやってきました。アシスタントとともに、5時間半の制限時間内に「テイクアウト」の3品と肉料理を仕上げます。

独特の緊張感が漂う会場。

コンクールでは所作の美しさや厨房の使い方も評価されます。

戸枝忠孝さん:
「やっぱり何が起こるかわからないのがコンクール。今まで練習してた中で一番いいものができればいいな。どこが勝ってもおかしくないというところはあると思うので頑張りたい」

信州から持ってきた食材が並びます。安曇野産ワサビは、特注の「鮫肌おろし」とともに飾られました。

会場の司会者も注目!

マクロン大統領も視察に…

5時間半後―。

途中、機材のトラブルはあったものの、無事、料理が完成しました。テイクアウトの3品は、日本の職人が制作した「桐の箱」に収められ審査員のもとに―。

肉料理の審査では、「ほうばの葉」の演出に関心を持ってもらえたようです。

そして、いよいよ表彰式。

特別賞、3位、2位の発表が終わり、残すは1位…。

発表:
「…フランス!」

頂点に輝いたのは、最多優勝回数を誇るフランス代表でした。

戸枝さんは表彰台を逃し、21カ国中9位という結果に。

戸枝忠孝さん:
「悔しいですね。練習通りではないですけど、頑張っていいものができたとは思っていた。それでこの評価なので、(入賞)できなくても悔いはないというか…悔しいですけど」

戸枝忠孝さん:
「ありがとうございます」

戸枝さんの挑戦が終わりました。しかし、料理人としての道はこれからも続きます。

軽井沢でさらに自分の味を追求しながら、今回の経験を日本のフレンチのレベル向上に役立てたいと考えています。

戸枝忠孝さん:
「長野の生産者の方にもいいものをそろえていただいたので感謝していますし、少しでもアピールできたかなと思うんですけど。これも経験なので、次の代表の方に伝えて、日本が上位に食い込めるよう次のサポートをしていきたい」