なぜ?「海なし県」にある「海」のつく地名 "日本一海から遠い駅"にも 地域の歴史や地形と関わり

なぜ?「海なし県」にある「海」のつく地名 "日本一海から遠い駅"にも 地域の歴史や地形と関わり
海なし県の長野県ですが、南佐久地域には「海」のつく地名が多くあります。JR小海線には、日本で一番海から遠いのに海がつく駅も。由来を探ってみました。

佐久穂町にあるJR小海線の「海瀬駅(かいぜえき)」。1日100人程度が利用する小さな無人駅です。

この夏、ある「日本一の駅」であることがわかり、じわじわと話題となっています。

JR東日本小海線全駅管理駅長・池田誠さん:
「海瀬駅が『海から一番遠い駅』だということがわかりました」

JR小海線は、南牧村野辺山高原に標高1375メートルのJR鉄道最高地点があり、「天空に一番近い」と銘打った列車「ハイレール1375」も走っています。

この春、JRの社員が「小海線をさらにPRしよう」と新たな日本一を探しました。目星をつけたのは海からの距離です。

佐久市には、海岸線からの距離が約115キロの「日本一海から遠い地点」があります。海瀬駅はそこから6キロしか離れていません。

そこで、県公共嘱託登記土地家屋調査士協会に調査を依頼したところ、海瀬駅は新潟県糸魚川市の海岸から直線で112.77キロ離れていました。

これは、同じ内陸部にある群馬県の上信電鉄南蛇井駅より700メートルほど遠く、日本一海から遠いことがわかったのです。

乗客:
「知らなかったですね。めっちゃ田舎じゃん(笑)」
「最近知りました。ちょっとした自慢にはなるかな」
「意外でしたよね。もっと町としてアピールして、観光とかにつなげればいいのになって」

JRや町は今後、「日本一海から遠い駅」を新たな名所として、誘客に活用できないか検討することにしています。

JR東日本小海線全駅管理駅長・池田誠さん:
「日本一が2つ目ということなので、日本一の高原を走る列車、そして日本一海から遠い駅をキャッチフレーズとした、誘客の列車が今後できれば」

いわば「海から一番遠い場所」を走る小海線ですが、沿線には「海瀬」を含め「海」がつく駅・地名が4つもあります。

南佐久郡の中心に位置する町の名前は「小海」。お隣の南牧村には「海ノ口」に「海尻」。海なし県・信州でこれだけ「海」がつく地名が集中している地域は、他にはなさそうです。偶然なのでしょうか。

南牧村海尻地区の住民:
「どうして『海尻』とか『海ノ口』って言うんですかって話はしていた。子どもの頃」

小海町民:
「こんな山の中、標高も高いでしょ。なのになんで海なのかなって」
「由来っていうのは、聞いたことないですね。昔、海があったのかな」

歴史に詳しい佐久穂町役場の宮川朋樹さんを訪ねると、海のつく地名は地域の歴史・地形と深く関わっていることがわかりました。

佐久穂町文化財芸術係・宮川朋樹さん:
「887年から888年にかけて、八ヶ岳で大きな山体崩壊が起きて千曲川をせき止めて、海ノ口・海尻あたりに大きな湖ができた。今の小海小学校から相木の入り口あたりまで、そこにも川がせき止められて、小さな湖ができた。平安時代ごろの日本の言葉では、『海』というのは水をたくさんたたえた広い場所という意味合いがあって、湖や池も当時は『海』と呼んでいた」

八ヶ岳の噴火でできた2つの「湖」。かつて日本人は湖も「うみ」と呼んでいたことから、湖の上流側・つまり入り口を「海ノ口」、下流側を「海尻」と呼び、2つの湖のうち小さい方を「小海」と呼ぶようになったというのです。

確かに長野県の県歌「信濃の国」でも「諏訪の湖(うみ)」という歌詞があります。

また、大町市にある木崎湖畔の「海ノ口」という地名も「湖への入り口」という意味からつけられたと言われています。

では、日本一海から遠い海瀬駅の「海」の字も同じ意味合いなのでしょうか。

地元住民:
「一番海より遠くて、駅の名前が『海瀬』ってなってるから不思議だよね」
「水を田んぼ作るのとかに欲しくて、小さな川でもそういう名前を付けたのではないかなと」

佐久穂町文化財芸術係・宮川朋樹さん:
「海瀬という地名は、湖とは関係がないと言われているんですが、町内には抜井川と余地川という2つの川が流れている。そこの合流地点が海瀬地点。合流地点の川の音が荒れ狂う海のような激しい瀬音をしていたことから、海瀬と呼ばれたのでは」

川の流れの早い場所を「瀬」と呼びますが、2つの川がぶつかってできた、「波が立つほど流れが速い場所」という意味で「海瀬」の名がついたと言われています。

「海」から遠い南佐久地域に多い「海」のつく地名。掘り起こすと、大昔の地域の様子が伺えます。

かつてあった湖や川の流れを思い浮かべながら、小海線に揺られてみてはいかがでしょうか。