【特集】急成長!安曇野の『夏秋イチゴ』 作付は20倍以上に 移住農家も増加 目標は「日本一の産地」

【特集】急成長!安曇野の『夏秋イチゴ』 作付は20倍以上に 移住農家も増加 目標は「日本一の産地」
特集は夏から秋にかけて収穫される「夏秋イチゴ」です。ワサビの産地として知られる長野県安曇野市で生産が急激に伸びていて、今や全国レベル。急成長の背景を探りました。

イチゴをたっぷり使ったケーキに、デザートピザ。今、安曇野市ではイチゴの生産が増え、地元産を使ったメニュー開発が盛んです。

市内の農産物の直売所でも...。

(記者リポート)
「旬の農産物がずらり並んでいますが、今、なかでも人気があるのが、こちら。夏から秋にかけて採れるという『夏秋イチゴ』なんです」

「夏秋イチゴ」は5月から11月が収穫期。新鮮なイチゴが並ぶ直売所では、午前中に売り切れるほどの人気です。

客:
「家族みんな大好きなので」

安曇野スイス村ハイジの里・下平光雄さん:
「開店と同時に早い段階で商品がなくなっていきます」

安曇野と言えばワサビの産地として知られてますが、20年ほどの間にイチゴの生産が急激に伸びています。

JAあづみイチゴ部会の西村方孝さん(69)は生産者の先駆けです。

もともとセロリ農家だった西村さん。年を重ねるにつれ、早朝の作業などがきつく、雇用の確保も難しくなっていきました。そうした中、18年前に市が実験的に栽培した夏秋イチゴの畑を見学しました。

それまでイチゴの最盛期は冬から春にかけてで、それ以外の時期は輸入イチゴが主流でした。

ところが夏から秋に収穫できる品種が開発され、西村さんは大きな将来性を感じたと言います。

西村方孝さん:
「そのころは夏場のイチゴなんてなかったから、これからの農業は珍しい作物がいいのではと仲間2人で栽培を始めた。当時はここでイチゴを作ったら、みんなから冷ややかな目で見られたよ。苗作りの失敗もしたし、途中でくじけそうになったこともある」

2004年から始まった安曇野でのイチゴ生産。最初は農家2軒で作付面積35aでしたが、今年には農家50軒で720aと急成長。

当初、苦労を重ねた西村さんも徐々に作付を増やし、今や30人を雇用。年収は10倍になりました。

急成長の理由は主に二つあります。一つは、安曇野ならではのアルプスから流れる豊富な地下水です。西村さんのハウスでも井戸からくみ上げた水を使っています。

もう一つは涼しい気候です。

西村方孝さん:
「標高の高いところでなければ夏秋イチゴの作付けは無理だという話だったけれど、ここでは十分作付けできる。夕方、日の入りが早いのが大きな要因」

生産拡大を受けてJAは、2018年に大型保冷施設を整備。首都圏などの大消費地にイチゴを出荷しています。冬より卸値が高いこともあり、昨年度の販売額は全体で3億3000万円に達し、管内ではコメ、リンゴに次ぐ主力品目になりました。

JAあづみ・清沢理さん:
「ほとんど埋まるくらいイチゴが並びます。昼までに検査して出荷します。もう右肩上がりとしか言いようがない。ここまで広がるとは思っていなかった」

夏秋イチゴの盛り上がりは別の成果ももたらしています。

こちらは三郷地区にある山田太一さんの農園です。

なないろ農園・山田太一さん:
「これから1カ月くらいがピークになります」

山田さんはイチゴ栽培を始めてまだ5年。もともとは都内のIT企業に勤めていた営業マンでした。「農業をしたい」と全国を探し回り、5年前に市の担当者に勧められた夏秋イチゴにひかれ、安曇野に移住しました。

なないろ農園・山田太一さん:
「山が好きだったので北アルプスに魅了されたということ。ビジネスとして関西、首都圏のビッグなマーケットに出荷しやすく、観光客も呼びやすい」

実は夏秋イチゴの農家は30代から40代の「若手」が7割近くを占め、さらに県外からの移住者が2割を占めています。つまり農家の低年齢化と新規就農をもたらしているのです。

苗を植えて3カ月ほどで実がつくこと、軽量で女性でも作業しやすいことも新規就農者に合っていて、山田さんの農園も夫婦で力を合わせています。

多くの人にイチゴを味わってもらいたいと、農園では3種類のイチゴを使ったジェラートも販売中です。

コロナ禍で、外食産業向けの出荷は落ち込みましたが、地元の菓子店で取り扱ってもらうなど販路も開拓しています。

なないろ農園・山田太一さん:
「今年になってようやく常連客もでき、少しずつ手ごたえはつかんできてます。子どもたちや若い世代が『農業って楽しそうだな』『僕もやってみよう』と思ってもらえたら」

安曇野の先駆け・西村さん。収量を増やす栽培技術に磨きをかけ、後進の指導にも熱心です。

西村方孝さん:
「これは『全刈り』といって、もう一度、木を若返らせて作り変えるもの」

西村さんは種苗会社から許可を得て、「2年株」の栽培に取り組んでいます。2年株ではこうして「全刈り」すると夏の「株疲れ」を回避でき、50日後に再び収穫が見込めるということです。

生産が飛躍的に伸び、仲間も増えた今、西村さんは大きな目標を抱いています。

西村方孝さん:
「ここに住んでやっている以上、日本一の産地にしたい。楽しいです。こんなに楽しい仕事はないぞ」

安曇野と言えばワサビに、イチゴ。そう呼ばれる日も近いのかもしれません。