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“逃げ遅れゼロ”へ「命を優先した行動計画を」 『垂直避難』で高齢者を守った施設 台風19号災害3年

台風19号災害から3年、「命を守る取り組み」です。相次ぐ水害を受け2017年に法改正で浸水想定区域内の高齢者施設などは「避難計画」を作ることが義務付けらました。しかし、県の調査では作成済みは75パーセント、水害を想定した訓練の実施は56パーセントにとどまっています。「逃げ遅れゼロ」のために…。当時「垂直避難」で高齢者らの命を守った長野市穂保の高齢者施設。教訓を生かし「安全確保最優先」の計画を改めて作りました。

長野市穂保の特別養護老人ホーム「りんごの郷」です。

りんごの郷・込山敬さん:
「誰一人けがもなく、命を落とすこともなく無事に避難できたというのは、もしかしたら奇跡かもしれないですよね…」

2019年の台風19号で千曲川の堤防が決壊。一帯は濁流に飲み込まれました。

(リポート:当時)
「福祉施設です。自衛隊のヘリがこちらでも救助活動を行っています」

堤防の決壊場所から800メートルほどの場所にある「りんごの郷」。1階部分が浸水し、入所者87人と15人ほどのスタッフは自衛隊や消防によって救助されました。

入所者やスタッフなど70人はボートで救助―。

避難を始めたのは越水が始まった午前1時ごろ。あたりは暗く、外に逃げる余裕もなかったことから2階に垂直避難しました。

りんごの郷・千野真 施設長(当時):
「(外へ避難して)風の中、雨の中で体調を崩す・転んでしまうというリスクを考えると、垂直避難の方が利用者にとって安全だろうと」

当時の「避難確保計画」では須坂市内の別の施設への避難を盛り込んでいました。

しかし、この時の経験をもとに2階への「垂直避難」を基本とすることに改訂しました。逃げ遅れゼロのために最適と考えたからです。

りんごの郷・宮島千絵 副施設長:
「垂直避難であれば、外に出るより利用者の負荷が減らせるというのが一番。慣れている施設内での移動になるので、迅速に動ける。垂直だからこそ臨機応変に、余裕ができるので、できることがあると思う」

県の調査では「避難確保計画」が作成されていない県内の施設は25パーセントにのぼります。最も多い理由が「専門的な知識がないから」。

「りんごの郷」の担当者は「避難」のハードルを下げて考えることが重要と話します。

りんごの郷・宮島千絵 副施設長:
「外に逃げることだけが避難じゃない。安全を確保すること、命を優先した行動自体が避難。家屋の中で安全な場所に避難することも『避難』。自分の居住区の災害リスクをきちんと把握したうえで、どの時間だったらどこ、という感じに敷居を下げて具体的に考えていくことが大事」

県は今後、計画作成の支援策を検討するということです。

一方、長沼地区では地域全体で「逃げ遅れゼロ」を目指すため、避難を始めるタイミングや災害本部の対応を時系列にまとめるコミュニティタイムラインを作成しています。

各家庭に配布したほか、「タイムライン」に基づいた防災訓練も行っています。

長沼地区住民自治協議会・住田昌生事務局長:
「いわゆる『見える化』、誰でもわかる様態になっていれば、わかりやすく避難ができるのでは。(各家庭で)最悪を想定して、検討しておいてもらうことが一番良いかな」

災害から3年。命を守る取り組みに終わりはありません。
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